15.ギルドと戦闘狂
【お知らせ】
《ギルド》機能実装!
アップデート「第四の町」 に合わせ、《ギルド》機能を実装します。
第四の町にあるクエストをこなすことで、「始まりの街」と「第四の町」にてギルドホームを買い、《ギルド》を作る権利を手に入れることができます。
【お知らせ】
昨日開催されたPvPイベントが、TBS様にて放送されます。
顔を隠すことができますので、当ホームページからユーザーIDを入力し、操作を行ってください。
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アップデートまでは残り一週間。
週末の土曜日に実装が来るので、それまでは特にイベントはない。
というか、平日なので普通に学校がある。
「おっはよー、望美」
「おはよー」
今まで、スプルは当分マイペースに進める、という話だったのでゲームの話題は何となくしないでいたのだが、中で戦ってまでいるのだからもうそんなことはない。
「ノーラはギルドって決まってるの?」
「ううん。特には」
「じゃあさ、一緒にギルド作ろ!」
「うーん……あんまり上位のプレイヤーが固まるもんじゃないだろうけどなぁ。ま、狩り場荒らしたりする気もないしいっか!」
「いいってこと?」
「うん、そうだよ」
「やったー!」
通学路の中、無邪気に喜ぶ春香を見て、望美は若干ぎこちない笑みを浮かべていた。
(なんかこの子やっぱり不安だ……あいつも入れよっと)
ここに一人、勝手に選択を奪われたプレイヤーが出来上がった。
「あ、あとさ! MT四天王って何? なんでそんなのになっちゃってるの!?」
「あちゃー、流石にどっかでは聞かれたかー」
「もちろんだよ! なんかやけに有名だし……」
「いや、なんかさ、《
「どれだけやったらそんなことになるのかわからん。それにしても、私から進められたにしてはノリノリだったんだねー。そこは嬉しい」
「私もここまでハマるとは思ってなかったよ。めっちゃ面白いね、VRゲーム。誘ってくれてありがと」
「うん、どういたしまして!」
「あ、そうだ、でも春香こそ変な【称号】持ってるでしょ。初見だらけで混乱したんだから」
「えとね、あれはね……ユニーク称号です!」
「嘘! そんなの手に入れたの!? どこでどこで……ってやっぱ言わなくていい。自分で見つけたい」
「流石、四天王とまで言われる女の子は違うねー」
「結構恥ずかしいからそれやめて……」
望美と話をする春香は、心底楽しそうに笑っていた。
そして土曜日。
スプルとノーラは待ち合わせて、海岸エリアへと向かった。
「うわ、並んでるよ。シュールだなー」
「まあ、公式でここからクエ受けられますよーって言っちゃってるからねー。ただの海沿いの小屋に人が大量に押しかけるのは確かにシュールだけど」
第四の町を解放するためのクエストは、まずこの海小屋の主であるお爺さんからお使いクエストを受け、「海馬」を貸してもらえるようになる必要がある。
「しばらくは待ちかな。その間に紹介しとこう」
「紹介? 誰を?」
「それは来てからのお楽しみ……メッセージ送信っと」
3分後。
すごい勢いでこちらへと走ってくる人物を遠目に見て、スプルは目を凝らした。
「ノーラ……もしかして……」
「早かったなー。さすがだね」
その人物は、勢いを緩めずこちらまで走ってきた後、急ブレーキをかけてスプルたちの目の前で止まった。
「ノーラ、待たせた! 何の用!? 戦ってくれる!?」
「ありがとう、アーサーくん。早かったね」
「強いプレイヤーと戦えるなら急ぎもする! こないだも新人っていうユニーク称号持ちに倒されたし……って、あ」
その人物ーーアーサー少年はスプルを見て動きを止めた。
「え、あ、えその、あ、アーサー……さん? あの? レベル第一位の?」
「PvPイベントでは世話になったね。そしてあのイベントでは一位になれなかったけど。あの時はありがとう、楽しかった」
「えぇぇぇぇぇぇ!?!?」
その様子を見て、うんうんと頷くノーラ。
「この感じこの感じ。いいねー」
イベントでの戦いの時、アーサーだとは知らずに戦ったスプルは、若干1人で気まずくなっていた。
「あの時はまさかアーサーさんだとは知らずに……すみません」
「いや、それはいいんだよ。真剣に戦ってくれるなら、俺はそれで嬉しいしね」
だから、と彼は言う。
「俺とこれからもたまに対戦してくれないかな? 強いプレイヤーと戦うのが趣味でね」
「それくらいならもちろんです! ぜひぜひ」
「ちょっと、私を置いてけぼりにしないでー。2人同い年なんだし敬語なくていいのに」
ぶんぶんと首を振るスプル。
「まさかあのアーサーさんにタメ口なんて……」
「そうかしこまられても困るんだけど」
アーサーはそれを見て苦笑する。
「で、ノーラ。なんでこんな所に呼び出したんだ? また大体わかるけど……」
「キミはどうせ海馬獲得まではいったんでしょ? その後って進めてる?」
「いや、その次はパーティー組まないと駄目らしくてな。お前がログインするの待ってたんだよ」
「呼び出されたらすぐ戦えるかとか聞いてきたくせに」
「いやそれはもう性質的なものだから仕方ないというか……」
呆れ顔のノーラは、まあいいや、と切り替えた。
「それじゃあこの子とも組んで。そして私たちのギルドに入って」
「パーティーはいいんだけど……ギルドまで? 俺のところには他にもたくさんの誘いが……」
「どうせ自分より弱いプレイヤーは育てることしか興味ないからギルマスやりたがってどこにも入れないんでしょ」
「じゃあ俺が新しいギルド作「もう二度と戦わないよ」りません。謹んでノーラ様のギルドに入らせていただきます」
「よろしい」
注目を集める2人の間で行われた謎の交渉に、スプルはどう反応していいか分からなかったのでとりあえず2人はおいて進む列に従っていた。
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