7.最高レベルとプランターガール

返事は、大きく頷く肯定だった。


「承った! 私の全力を持って作らせてもらおう!」

「それで、えーと、お代は……」

「キミ、名前は?」

「スプルです」

「じゃあスプルちゃん、キミの今の全財産で構わないよ」

「は……?」

「だってキミ、初期装備だし、始めたのはつい最近だよね? 私が全力で作るとなると相場的に何十万Gはかかるらしいんだけど……wiki調べで」

「え? あの、失礼ですが生産称号のレベルは? あとwiki調べってなんですか」

「【敏腕鍛冶師+27】、【熟練裁縫師+9】、【敏腕木工師+3】、【熟練生産者+67】だけど」

「な……このゲームの最高レベル超えてるじゃないですか!」

「え、そうなの? やっぱ表通りに店出した方がいいかなぁ。でも気に入ってるんだよなぁ、ここ。てか最高レベルなんてどこで知ったの?」

「wikiじゃなくて普通に攻略サイト見てください」


称号の「冒険者」や「生産者」などの前に付く言葉は、駆け出し、腕利き、敏腕、熟練の順に上位のものが取得されていく。

そして、熟練まで上がったあとは、延々強化され続けていくのだが……

今の冒険者トップが【熟練冒険者+48】、生産者トップが【熟練生産者+39】だったはずだ。


「流石にそれじゃあ安すぎますよ! てか今素材しか持ってないし」

「じゃあその素材全部引き取らせてもらうねー。初めてのお客さんへのサービスだと思ってちょ」

「ま、まあ生産者本人がそう言うなら……。ほんとにありがとうございますね。ではトレードを……」


メニューからトレード画面を呼び出し、素材を乗せていく。


「はい、確かに受け取ったよ。かなりあるねー。……ん?」

「どうかしましたか?」

「【ドーピングシード】? なにこれ」


うっかりしすぎていた。

間違ってドーピングシードまでトレード画面に乗せてしまっていた。


「【庭師】専用って? そもそも【庭師】って何?」

「いや、それは、その、偶然というか、ユニークな感じのアレというか、いやその私しか使えなくてえーと……」


スプル焦るあまり墓穴を掘りまくっていた。

むしろ墓穴しか掘っていなかった。

仕方なく、事情を話す。


「なるほどねー。『ユニーク称号』持ちがうちの店にくる初めての客だなんて予想もしてなかったよー」

「あの、これは、その……」

「分かってるよ。バラしたりはしない。何なら取得方法さえ聞かない。でも一つだけ」

「なんでしょう?」

「【庭師】について詳しく教えて。そしたらたぶんキミにピッタリのものが作れそうな気がする。それが私の一番さ!」

「もちろんです!」


二人は、がっちりと握手をした。


技術テクニクス・種子調合》を獲得


「あれ……新しい《技術テクニクス》?」

「【庭師】かな? それも含めて話してね」

「了解です」


そして、二人は店の中に入っていく。



翌日。

フレンド登録したメミリーから完成したとのメッセージが届き、その早さに驚きながらも、昨日もらったマップを見ながら店に向かった。


「お邪魔しまーす」

「おー、スプルちゃん。昨日ぶりー。じゃあ早速渡していこうか」

「お願いします」


トレード画面で渡されたのは、防具だけではなく武器もだった。


「短剣まで……」

「ずっと初心者向けのNPC武器じゃダメでしょ。一応その短刀にはギミック入れてあるし」


渡された装備は、《プランターガール》1式と、腰にまく太いベルト、そして少し変わった見た目の短剣、最後に大量の、試験管と小さな細長い容器だった。

《プランターガール》には至る所に種を入れる用と思しきポケットがあり、短剣には、長めの柄の部分に種を粉砕するギミックが入れてあった。


「このギミック……」

「そ。《種子調合》用にね」

「本当に……ありがとうございます!」

「いや、久々に私も楽しませてもらったよ。メンテナンスする時はまたおいで。ここに来るためのマップも渡しとくから」


渡された「プランターガール」は防具としての性能も高く、布装備にも関わらず初期装備の20倍という破格のDEF補正があった。

短剣も中々の攻撃力だ。


これでスプルは、このゲームにおいて中堅レベルの力を手に入れるという成長ぶりだった。


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プレイヤー名 スプル

頭 なし

上着 プランターガール

右手 クラッシュ・スモールソード

左手 初心者の籠手(火)

腰 プランターガール

下半身 プランターガール

靴 プランターガール


称号

【腕利き冒険者+3】

【駆け抜ける者+6】

【腕利き短剣使い+3】

技術テクニクス・ハイドスラッシュ》new

一瞬姿を消したあと、敵の目の前に現れて切りつける

技術テクニクス・ネックカッター》new

うなじへの攻撃にボーナスを与える。

【駆け出し魔法使い(水)+8】

《水砕弾》new

《水壁》new

《中回復》new

【駆け出し魔法使い(火)+3】new

《ファイヤ・ショット》

《フレイムアーム》

【魔力を多く持つ者+1】

【駆け出し暗殺者+6】

【庭師】

技術テクニクス種子調合》new

水と粉砕した種を混ぜることで【庭師】所持者のみが使用可能な薬液を調合できる。種子以外を調合出来なくなる。

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