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「ななちゃんとのおやくそくはっ!」
そう言った奈々子の顔は、ぷくぅっと腫れ上がっている。どうやら奥さんとお出掛けする予定が入っていたらしい。だから可愛いマフラーを巻いていたのか。
「ごめんね、奈々ちゃん、ちょっと待っててね」
「やだやだ、もういっぱいまったもんっ」
「奈々ちゃん、良い子だから。ママすぐに帰ってくるから」
「やだやだぁ」
地団駄を踏んだ奈々子に奥さんは困った表情だ。うーん、こんなにしっかりしていてもまだ三歳だもんなぁ。
「じゃぁ奈々子、俺の店に来るか?」
「えっ! すかいのおみせっ?」
「おう、ジュースもチョコレートもあるぞ」
「いえそんな、申し訳な」
「いくーっ!」
「奈々ちゃんっ」
「いいっていいって」
「でも」と続けた奥さんに「配達が終わるまでの間、ちょっと奈々子お借りしますね」と声を掛ける。申し訳なさそうに頭を下げる二人に、奈々子と手を振って店に向かった。
「奈々子、何飲みたい?」
三歳児には高すぎるスツールに抱いて乗せてやり、嬉しそうにする奈々子に訊くと知らないキャラクター名の飲み物を言われる。それはなんだ? ミルクでいいのか?
良く分からないけど名前からしてミルクっぽいので、ホットミルクをたっぷり甘くして出すことにする。ナントカちゃんではないが、許してくれ。
「チョコレート、好きな奴選んでいいぞ」
「いいのっ!」
「どれでもいいぞ。あ、クッキーもあるし、飴もあるな。あ、待てよなんか焼き菓子のセットが」
つい、ここぞとばかりに与えてしまうのは奈々子が可愛いから仕方ない。
「わぁおいしいっ、これもおいしいっ」
「そうかそうか、美味しいか。どんどん食べて良いぞ」
「わぁーい! ありがとぉすかいっ」
喜ぶ表情とか、美味しそうに食べる姿とか、楽しそうな声とか、見ているだけで癒されるわ~。と、ふと気付く。孫を愛でる祖父の気持ちってこういうものか、と。まだ子供すらいないって言うのに。
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