第35話 三つ目族の村
「しかし、お前なんだ? めちゃくちゃだな。 何で奴隷してんの? 」
「おべー、づよいだ。 おでだち、ドボダチ」
ケガをさせたが、完治させたことで和解をした。
まぁ、どっちかというなら被害者は俺なわけで、許すか許さないかは俺次第なわけなんだけど……。
俺はネチネチ系じゃないから、まあいい。
仲良くなった(?)俺達は、ここで話をするのもなんだからということで、ここから一番近くにある三ツ目族の村へと移動することになった。
ラモンが先頭を歩き、少し離れたその後ろを俺を挟んでジャイとレビタと横並びに歩いている。
さらにその後ろをネグロが雪白馬を手で引きながら付いてきている。
「いやー、俺は奴隷じゃないよ?」
「だーよーなー。 絶対、ネグロより強いもんな。 見栄を張りやがって」
そう言って俺の肩をパンパンッと叩くレビタ。
「ネグロは俺を庇ってくれたんだよ。 いい奴だよな」
「デグロはいいやつ。 ぐふふ」
歩くこと数十分。
鬼族の村とは反対方向に位置していた三ツ目族の村。
その入り口が見えてきた。
簡素な造りの門である。
そこにはラモンと同じ肌の色をした三ツ目の二人組が立っている。
厚手の服装をしているが、よく鍛え上げられた体が服装の上からも伝わってくる。
二人とも、両目を閉じて額の目だけを開いている。
そして手には手作り感のある槍を携えていた。
「見えてきたね。 村はどこも似たような造りなんだね。 ……あのさ、何で彼らは両目を閉じて額の目だけで見てんの?」
「ああ、あれな。 三ツ目族は両目を閉じることで額の目の力を使えるんだ」
「目の力……?」
俺達は、村から一定の距離で立ち止まった。
ラモンが門番二人へ説明をしてくれている。
「三ツ目族は瞳術という不思議な力が使えるのさ」
追い付いたネグロが口を開いた。
雪白馬も止まり、ブルルッと白い息を吐いている。
そして地面にうっすらと生える草をゆっくりと食べ始めた。
「そうそう。 ラモンも使えるぞ? 十歳になったからな」
「オデダヂといっしょ。十歳。ぐふふ」
「これでカーラも入れてみんな十歳だな」
みんな? ジャイもかよ。
そのナリで十歳とはね……。
カーラもそうだが、ここの魔族の十歳は俺の知ってるそれよりもずっと大人びている。
しかし、どいつもこいつも十歳、十歳とうるさいな。
「十歳になると何なの?」
俺がそう言うと、全員がはっ? みたいな顔して俺を見てきた。
「十歳って言ったら成人だろが」
と、俺の頭をゲンコツするレビタ。
何で叩く?
成人?聖人か、あ、星人か。
十歳星人か。
「ヴェルデは人族だから、俺らと基準が違うんじゃねえか?」
雪白馬の尻を撫でながらそう言うのはネグロ。
あ、蹴られた。
体をくの字に曲げて飛んでいった。
「………。 で、成人になると瞳術が使えるのかな?」
「そうそう。 あの村の入口に立っている二人は千里眼とまではいかないが、遠くを見る力があるんだぞ。だから、魔物や敵がこないか見張りをしているんだ」
「ほお。すごいね! どれくらいまで見えるんだろ 」
「そりゃあもう、すげー遠くだよ。 何たって視力3.0だぞ」
お、おう……。
微妙だな。
瞳術じゃなく、ただただ少し視力がいいだけだな。
「そ、そっか……。 あ、ラモンはどんな力なんだ?」
「はっ! アイツな、可哀想な能力なんだぜ。聞いて驚けよ、なんとな、相手の魔力量が分かるんだぜっ! 可哀想なアイツを哀れんだ目で見るんじゃねーぞ」
俺は哀れんだ目で可哀想なレビタを見る。
聞いて驚いたよ。
視力が良いよりも相手の魔力量分かるほうが断然いいじゃねーかよ。
こいつはあれだな、アホの奴だ。
レビタのくせに。
そんな会話をしていると、ラモンが戻ってきた。
「いこっ」
無事に許可は下りたようだ。
俺達はラモンを先頭に再度歩き出す。
腹を擦りながら、いつの間にか復活していたネグロも雪白馬と付いてくる。
「おい、見て驚けよ。 驚きすぎて死ぬなよ」
「オドデゲヨ。 ぐふふ」
「ここは別世界だもんなー。 俺もカーラが居ないならここに住みてーもん…あ、いや、じゃなくて…、……。なんだオラ!見せもんじゃねーぞっ!見てんじゃねーぞ!」
よくわかんないけど、俺らにメンチを切ってくるネグロ。
とりあえず白い目を送っておく。
そんなことはさておき、俺は見張りをしている、どうみても双子にしか見えない三ツ目族の二人へ軽く会釈をしながら村へと入っていった。
┼┼┼
「いつ見てもすごいな」
ネグロだ。
雪白馬は村の外で柵へ繋いでいる。
━━なっ
俺はあっさりと見て驚いた。
村へと一歩足を踏み入れた瞬間に景色が変わったのだ。
氷などは一切なく、自然溢れる緑豊かな村がそこにはあった。
村の中を小川が流れ、鳥の囀りが聴こえる。
気温は暖かく、見張りの二人を抜かしてここにいる全員が薄着だ。
全員とは三ツ目族だけにあらず、単眼族に巨人族の姿も見える。
どうやらここは、三種族が一つの集落で生活を共にしているようだ。
といっても、単眼族も巨人族も自分たちの村があるらしい。
要するに、この村へ遊びにきちゃった奴が、自分の村よりも居心地が良かったから、そのままここで暮らしちゃってるということだ。
見える範囲だけでも数は相当に多く、村というよりも町に近い。
しかし…何これ。
「どうだ? 驚いたか?」
「あ、…うん。 どういうこと?」
レビタは息を吸い込むと、両手を広げて天を仰いだ。
「これが三ツ目族村長の瞳術、森羅万象さ」
よくわかんないけど、凄いことはわかる。
分かるんだけど、納得できないんだよね。
何で単眼族のアナタが自慢気なんですか?
レビタのくせに。
「フォッフォッフォ。 よく来た客人よ。 ワシが村長のミドラじゃ」
両目を閉じ、片手には杖を持った老婆が、ラモンの肩を借りながらゆっくりと歩いてきた。
…いやいや、閉じてるというか瞼を縫っているじゃん。
こわっ。
悪魔祓いの儀式とかそんなやつやん。
悪魔やん。魔族やん。
あ、魔族やん。
「あ、お世話になります。ヴェルデと申します」
「若人よ、そんなに畏まらんでもエエ。 ゆっくりしていくんじゃ」
「あ、ありがとうございます」
「エエ、エエ。 ここでは自由にしてよいぞ」
俺が腰を九十度に折りお礼を述べると、パンッと俺の尻を叩くレビタ。
━━イタッ
「あいさつも済んだことだし、もう行こうぜっ!」
なんだコイツ。
「イゴ!イゴ! はらへっだ」
「ああ、腹減ったな」
ジャイとネグロだ。
二人はミドラとは顔見知りなのだろう。
あいさつも無しにさっさと歩いていく。
「じゃ、ラモンの家で飯でも食いながら話をするか!」
図々しい奴だな。
しかし、特に文句もなく 首肯するラモン。
それだけ仲がいいということなんだろうな。
一旦、ラモンはミドラを連れて帰らせてから戻るということで、先に俺達はラモンの家へと移動することにした。
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