第19話 双子の過去 Ⅰ


 ここには簡易な食堂みたいな所が備え付けられている。酷い怪我の人は部屋まで持ってきてくれるが元気な人は大体ここにきて食事をする。人とも話せるし、割と利用者は多い。

 それに料理もおいしいし、専属の料理人、基食堂のおばちゃんがいて栄養バランスもきちんと考えてあるから体に良いらしい。メニューは日替わりで、ちょっとしたものならその場で作ってくれたりする。


「おや、元気になったのかい? 無理してないかい? 今日はランチはカレーだけど消化の良いのにしようか? 軽い物にしようか?」

 髪の毛が落とさないように帽子で覆い、白のエプロンで身を包んでいる。体形はふくよかで、みんなのおばちゃんと言うのがとても似合う。だけど。


「おおお……」

 ぐいぐい来られるのが慣れてなくて戸惑った妙な声が漏れる。世話好きというか、心配性というか、親戚のおばちゃん感が凄い。


「その顔なら大丈夫そうだね、しっかり食べて、早く元気になるんだよ」


 スパイスの香りが食欲をそそる。ざっくり一人前のカレーとサラダあとほうじ茶? お盆に乗せてテーブルへ向かう。お昼には少し早い時間だ。人は少ないが、なるべく邪魔にならない隅へ行く。



 カレーも少し濃い色をしている。スパイスの香りが強いから辛めなのかな? 辛いのは苦手だけど、一口。

 辛みはあるけど、辛くはない、旨みになってると言うのか? 肉も野菜も殆ど見当たらない、溶け込んでいるのかな。辛過ぎず甘すぎずどんどん口に入っていく。 久しぶりにちゃんと食べれて、美味しい味に幸せを感じる。





「ん、食欲出たんだね、良かった」


 声がしたと思ったらテーブルを回り込み、俺の前に座るマイナ。大きめのカツを2枚乗せたカレーを持って頂きますと食べ始める。ボリューム凄いな2人前はあるだろ……。


「顔色も良くなってるし、元気になってきてるし」


 同じく大きめのカツを2枚を乗せたカレーを持って、俺の横にシイナが座る。この二人は良く食べるなぁ、それでもスリムだし、むしろ痩せすぎにも見えるけど……。回復魔法を使うのにかなり消耗するから帳尻が合っているのかな?


「ん? どうしました?」

「いや、良く食べるなーと思ってさ。たくさん食べてるのにスリムで凄いなーって」

「食は命の源ですからね、それに回復魔法は疲れますし……」

「やっぱり、あれは疲れるもんね」


「――あと、それのせいか胸も……」


「……」

 確かに


「ん、今、小さいと思ったでしょ」

「あ、はい」

「えぇ……肯定しちゃうの……」

「あ、ごめんつい、うっかり」

「……なんか言葉で言われると現実味が増して悲しくなってくる……。どうすればいいのかな……」

「ほら、あれだよ、スレンダーな方が俺は好きだし、そういう人も多いはずだよ。だから大丈夫。君は君のままでいいんだって、胸がすべてじゃないんだから」

「良い事言ってる風ですけど、内容が大分酷いですよ」 マイナがジト目をしてくる。


 あばばば、何を口走っているのか……。混乱してとんでもなく失礼なことを言ってしまったぞ……。両手で頭を抱えているとぼそっとマイナが呟く。


「まあ、下手に隠されるよりはマシなんだけどね」

「……」

 分かってることを隠されるのは辛い。それは痛いほど良く分かる。隠し事だってそうだ――。



「まあ、それは置いておいて、師匠の話をしに来たんですよ。ランチの時なら時間も取りやすいし、丁度いいかなと」

「だね、マイナは夜にでもと言ってたんだけど、流石にちょっと、ね……」

 頬を少し赤らめ、目線は他所へ、そしてもみ上げを弄る。



「まあ、確かに」

 変な誤解を生みそうだし、二人も要らないトラブルには巻き込まれたくないだろう。主に俺になのだが、嫉妬みたいなので吊し上げられそうだ……。特に横にいる……いやもういないし大丈夫だったりするのか? いやでも彼女らも女の子だ、夜に野郎の部屋になんて、そういうことはよくない。



「――では……そうですね。私達がこの国に来た時から話しましょうか――」


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