創作者は「物語」を見られる

 皆さんは、余暇時間をどのようにお過ごしだろうか?


 私はTwitterを見たり、YouTubeでバンドを発掘したり、Twitterを見たり、えっちなことを考えたり、Twitterを見たりしている。要するにBGMを垂れ流しながらTwitterを見て、えっちな妄想に耽っている、アホである。


 まあ、そんなことはどうでもいいのだが、先日、例によってTwitterを見ていたら、こんな情報が流れてきた。


『作者がどんな人間かなんて関係ないじゃん。面白い作品は、作者の人格に関係なく面白いはずでしょ。作者が気に入らないからって、この作品はつまらんって、それはおかしいんじゃないの?』


 概ねこのような内容だった。

 それを見て私は、すぐにこう感じた。


「せやせや。面白いもんは面白いよな。作者に人格的な問題があっても、作品が面白いことには違いないやんな」


 これをご覧になった方々の中にも、私と同じような感想を抱いた方は少なくないのではないだろうか。面白い作品が「作者が気に入らんからつまらん」と難癖をつけるのは、さすがに道理に適っているとは思えない。


 ところが、それからしばらくして、私はこうも考え始めた。


「たしかに作者の人格が優れんくても、面白さには違いないな。でも、それって読者に満足を提供し得るものなんやろか」


 先程も申し上げたように、作者の人格が気に入らないからと言って、作品を貶めるのはおかしな話だと思う。


 ただ私としても、文句を言う人たちの心理がまったく理解できないわけではない。


 例えば、ピュアな恋愛を歌う歌手がいるとして、その人の不倫報道が流れるとしよう。


 曲は、もちろん好い曲であり、そこに罪など微塵もない。

 けれど歌手に対しては「不倫」によって、ネガティブなイメージが付きまとうものだろう。


 その人が、ピュアな恋愛を歌い続けて説得力があるだろうか。


 私ならきっと「ない」と感じてしまう。

 曲がどれだけ好みにあっていたとしても、その人の影がちらついて、なんとなく萎えてしまうような気がする。


 中には「俺はそんなこと思わへんけど?」という方もいるだろうが、私のように思ってしまう人間がいることはたしかである。


 つまり、曲――作品に関しての価値に変化がないのだとしても、そこに関連するところでネガティブなイメージが付加されてしまうと、作品の価値が下がったように「見えて」しまうのだ。


 私はたしかにTwitterで流れてきた情報に首肯を示した。


 だが実際的な問題として、作者の人格をマイナスに見られるということは、作品の価値までマイナスに「見られる」リスクを負うことになる。

 

 現代は誰もが気軽に情報を送受信できる時代。

 かつてはインタビュー記事などからしか推測できなかった創作者の人格を、今ではSNSなどから、誰もが認識できる世の中になっている。


 それは「この人ってこんな面白い人なんだ!」とか「ほーん、こんな作品があんのね」という宣伝効果をもっている一方で、前述したようなリスクを孕んでいる。


 言わば現代の創作者は、その身で生み出した作品だけでなく、自分自身の「物語」まで見られているのだ。


 けれど我々は、そもそも一人の人間として、良識のある行動を心がけねばならない。インターネットの世界は曖昧で、様々な誤解を生みやすいが、そこは言ってしまえば「玄関の外」なのだ。


 一人、テレビの前で「こいつ嫌いやわぁ……」とぶつくさ文句を言っても、突っかかってくる人はいない。しかし、インターネットの世界は外なのだから、それを不快に思い、反駁の意思を示す人がいるのを忘れてはならない。


 世の中には様々な人がいるものだ。

 あなたの悪態を聞いて「なるほど、なるほど……」とメモをとる私が潜んでいることもあるかもしれない。


 それはインターネットの中に棲んでいるのかもしれないし、ボスニアヘルツェゴビナにいるのかもしれないし、ファミレスで隣のテーブルに通されたなんか陰気な男かもしれない……。

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