N
N
それはわたしを識別する記号だ。
小説――novelと同じ頭文字なのは偶然ではないが、理由はそれだけではない。
わたしは以下のテキストで「わたし」と名乗る権利を放棄する。わたしはただそっけないアルファベットのNとして記述されるだろう。その理由も以下のテキストで説明してある。
これはわたしがNとなった理由を述べるテキストであり、一篇の小説だ。もっとも、こう断言するのは少し傲慢かもしれない。わたしには小説の何たるかなど知るよしもないが、それでも以下のテキストが小説を名乗るにはいささか風変わりなものであることは認めざるを得ない。読者諸君はどう思うだろうか。
なんであれ、小説は読者がいなければはじまらない。だから、御託はもうこのくらいにしよう。作者はただ黙ってテキストを差し出しさえすればいいのだ。羞恥の表情くらいは見せてもいいが、こうして長々と御託を並べるのはあまり感心のできた態度ではない。
前座は終わりだ。わたしはそろそろ舞台の袖に引っ込むとしよう。以下のテキストで主演を務めるのはあくまでNであって、「わたし」ではないのだから。
願わくば、諸君がわたしの拙いテキストに最後まで愛想を尽かさないことを。
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