ショートショート

変態

 波多野勝は警視庁に勤める敏腕刑事であると同時に、一児の父親でもある。一児、といっても息子はもう高校二年生になる。その息子が近所で起きた幼女連続強制猥褻事件の容疑者として逮捕されたのは、父親の波多野にとっても晴天の霹靂であった。


「俺じゃないんだ、父さん」


 やっとかなった面会で息子はそう叫んだ。


「ああ、そうだろうとも。だが、同僚たちはそうは思ってない」

「なんだって俺が」

「無理もないだろう。お前のパソコンからは幼い女の子たちが裸になってる画像がたくさん出てきたんだから」

「あれは2次ロリだ! 後、全員18歳以上だ」

「それにお前はSNSのプロフィールに『ロリコンの変態につき要注意』だと書いていた」

「あれはキャラだ! 後、俺には3次の彼女がいる」

「俺もお前を信じたいよ。だが、本音を言うともしかしたらと思うときもある。なあ、正直に言ってくれ。本当にお前じゃないんだな?」

「父さんまで弱気になってどうするんだよ……」


 息子はがっくりとうなだれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る