act6 突然の出来事
「へえ、マルクって狩りも出来るのね」
「そうさ!村一番の腕前なんだぜ!!いつかリリィにも見せたいなあ」
「ええ、楽しみにしてるわ」
ウェスタンを出て、乾いた土の上を軽快なテンポで歩く。岩に囲まれたその道は、最近良く盗賊が出るようで、マルクがいてくれて良かったと心から思った。
「それで、それで…」
マルクは、ウェスタンを出てからずっと口が閉まらない。元々話すのが好きな男の子だろうとは思っていたけれど、ここまで来るとむしろすごい。屈託のない笑顔と、このチャーミングな性格があそこの宿にお客さんをたくさん入れていた証拠だろう。
「ってリリィ!!危ない!!」
突然マルクに馬を引っ張られ、シンドが大きな声でヒヒーンと叫んだ。そのまま馬同士はぶつかり、私もマルクに支えられる形になった。
「いたた、マルク…?」
「しっ、声を出さないで」
マルクにそう言われ、口を塞がれた。
マルクは、周りを射抜くかのような鋭い眼差しで、周りを見渡した。その目は凍てつくような氷の瞳で、今までの太陽のようなマルクとはまるで別人だった。
「っち、どく気は無い、か。」
マルクが小さな声でぼやいていたが、何と言っていたのか聞き取れなかった。
私は、一変したマルクの様子に少し身震いしながら体制を立て直そうとした。
「…もう行きましょう…って、キャッ」
どさっという鈍い音がしたと思ったら、私は馬の下に引きずり降ろされていた。
突然の事に何が起こったか分からず、目を白黒させていると、首元に光る物を当てられた。
「ひっ、あ、」
「リリィ!!」
マルクが私に向けて手を伸ばす。しかし、その手が私を掴むことは無かった。
「おい、男ぉ!!こいつを殺されたくなけりゃ持ち物全て差し出せおらあ!!」
「っ、や、あ、」
「……っ、リリィ!」
「おらおらおらおら殺すぞ!?」
男の刃物が私の首に突きつけられる。
もう無理だ、嫌だ、殺されたくない…!
そう目を閉じた瞬間、自分の手が解放された気がした。
「へ…今、なにが…」
目の前のマルクが信じられない物を見たような目で私を見つめる。
「リ、リィ…っとりあえず逃げるよ!!」
「う、うん!!」
自分に何が起きたか分からぬまま、マルクの手を掴み馬に飛び乗る。
シンドのお腹を強く押すと、すごいスピードで駆けていく。
「なんだ、お前ら全員やられたのか…あんな小娘に…」
「ボっボス……」
「…太陽の姫君、か面白くなりそうだな」
その男は、足元に落ちていた物を拾うと、そう呟き、後ろにまとめた赤髪を揺らしながら愉快そうに笑った。
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