act5 動き出す運命
気持ちの良い朝だった。お日様の香りがする気持ちの良いベッドを起き、あくびをする。
一杯の水を飲んで、ああ、そういえば私は旅に出ているんだ。と改めて実感する。
けれど、悲観に暮れることは無い。これは、私自身のしがらみを無くすための旅なのだから。
「シンドの様子を見て来なきゃ」
外に出ると、綺麗な朝焼けが私を照らした。
澄んだ空気は、城の中では経験できない事だろう。今、初めて生きる喜びを感じた気がする。
「おはよう。シンド、昨日は良く眠れた?」
シンドの口元に手を当ててやると、シンドも嬉しそうに私にすり寄ってくる。
シンドは、母が死んでから、私の唯一の理解者だ。私の髪を綺麗だと、この国の誇りだと言ってくれた母が死んだ時、側にいてくれたのはシンドだった。そんなシンドがいれば、これからの旅も大丈夫だと思う事が出来る。
「…さて、あまり時間は無いわね。すぐに出発の準備をしなくちゃ」
私はシンドの様子を見ると、すぐに宿に戻り、荷物が全てある事を確認すると、マルクに向けての置き手紙を書いてから、マントを羽織り外に出た。
けれど、外に出た瞬間にある事に驚いた。
「あなた、マルクどうして…」
自分の相棒であろう馬と、旅の準備をしたマルクが外で待っていたのだ。
待っていたというような顔に言葉が出ない。
「俺の母ちゃんが体を悪くしてて、家に帰らなくちゃいけないんだ。俺の住む村は、丁度リリィと一緒の方向。一緒に行かないか?」
ニカッと効果音の付くような笑みに圧倒されながらも、マルクの説明になるほど、と納得する。しかし、宿の主人はいいのだろうか?私の気がかりはそこだった。
「…宿の主人は?良いの?」
「ああ、昨日話をつけてきた。今は母ちゃんを優先させないと」
「…そっか、じゃあ…一緒に行こう」
私はマルクに向けて手を伸ばす。マルクも笑顔で私に手を重ねてくれた。ずっと一人で旅をするものだと思っていたから、仲間ができたのはすごく嬉しい。そう思うと、私は自然と笑顔が零れた。
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