家庭の中の両親13

 私はこの教師のおかげで歴史が大好きな教科となった。もちろん私も、彼から望まれたわけではないが、このころにはすでに若き革命家となっていた。


 こういう教師のもとでドイツ史を学ぶことが出来たということは、私にとって、国民を不利益に支配してきた王国に敵対することになった。過去と現在を通じて、自己の利益のために、何度もドイツ民族を裏切った王家に対して、誰が忠誠を尽くすだろうか。


 このオーストリア国家が我々ドイツ人を愛していなかったばかりか、まったく気にもかけていなかった、ということを私たちは小さなころからよく知っていたのだ。


 ハプスブルク家がやったことについての歴史認識は、日々の見聞によっていっそう深まった。ヴィーンすら、ますます非ドイツ的な都市に見えてきたほどだ。


 オーストリア大公の家はチェコ化した。そして、オーストリア・ドイツ主義のもっとも憎むべき敵、皇太子フランツ・フェルディナント大公が弾丸で倒れたのは、永遠の正義と仮借なき報復をくだす神の鉄拳だった。


 人々がドイツ民族に強要した重荷はたいへん大きなもので、重税と血の犠牲は未曾有のものだった。しかし、人々はこれらすべての犠牲が無益だったということを認識しなければならないのだ。


 その際、我々を苦しめたのは、全体が道徳的にドイツとの同盟によって覆われているという事実だった。それによって、古い王国内のドイツ主義が次第に絶えていくことが認可されたのだ。


 ハプスブルク家は外部に対して、オーストリアがあたかもドイツであるかのように見せていた。しかし、それはハプスブルク家に対する憎悪を火のような怒りと軽蔑にまで高めた。


 若いドイツという国が、オーストリアというえせ国家と結合していることに、後の世界大戦の、しかも崩壊の萌芽があったのである。


 私はこの本の中でこの問題についても言及しようと思う。


ドイツ主義の確保はオーストリアの滅亡を前提とすること、そして国民感情は王党的愛国主義と決して同一ではないこと、なかでもハプスブルク家はドイツ国民を不幸にする運命を持っていたということである。


 そのころ、私は早くも結論を出していた。それは、我がドイツ・オーストリアに対する熱烈な愛と、オーストリア国家に対する深い憎悪ということである。

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