第10話 ネットに住む男

これはあくまで都市伝説。でも、実際に起きた事。

アナタはチェーンメールをした事がありますか?


私の友人は遊び半分でチェーンメールを作って遊んでいた。そしてそのメールが自分の所に帰ってくるとそれを笑いながら私に見せてくれた。

帰ってくるチェーンメールは話が変わっていたり、付けたした文があったり、画像がついていたり…

反応は様々だった。


そんなある日、帰ってきたメールの最後にこんな言葉が書いてあった。

『いい加減にしなさい』


友人はそれを面白がって新たにチェーンメールを作って送った。

次の日、私は友人にそのメールを送った人にメールを見せてもらった。でも。そこにはあんな言葉はなかった。

そしてその日晩、その友人から電話が掛かって来た。その電話は携帯からではなく家の電話からだった。

「携帯から…携帯から手が出てきて、私の首を!!」

友人は電話の向こうでそう叫んでいた。

私が焦って友人の家に行くと玄関の所で彼女は震えていた。

彼女の親は共働きでまだ帰っていなかった。

一度友人を落ち着かせると、私は彼女の携帯をとりに行った。彼女の携帯は暗い部屋の中で燦々と光っていた。

そして、私は一度手に取った瞬間驚いて携帯を落とした。


「あんた、誰?あの子の友達?」

携帯からは電話を通していない様な声でそんな言葉が聞こえた。

画面にはこちらの様子を窺うように一つの目玉がきょろきょろとしていた。

「まあ、いいや。鬱陶しいから、あの子にもうチェーンメなんてやめろって言っといてよ。宜しく」

携帯はそれだけ言うと、画面は真っ暗になった。

友人の首には薄らと手の痕が残っていた。


その後私はその事を兄に話した。すると、兄は心辺りがある様に返事をするとパソコンで似た様な話を出してくれた。


チェーンメールやなりすまし、迷惑メールを送っていた人の所にそいつは現れるらしい。携帯では手だけだが、パソコンでは髪の長い男が出て来る事があるそうだ…

そして一言『いい加減にしろ』というらしい。

その際に首を絞めたり、頭突きをくらわせたり、物を壊したりと随分とバラバラに相手を脅して帰るそうだ。


だから、私は絶対にそんな事はしないで置こうと心に誓った。


「っと言う話を聞いたんですよ。お隣さん」

私が縁側に寝転んで、お隣さんの居る部屋の畳を叩くとお隣さんは困った様に微笑んでいた。

「それは、恐い話だね~」

返事をしたのはお隣さんの前に座っている髪の長いオタク風の男だった。

「でしょ~でしょ~」

私がそう言うとオタク風の男はうん、うんと頷いて私の持ってきたモロッコヨーグルトBigをパクリと食べた。

「君がそれを怖いといいますか?」

オタク風の男を呆れた様に見ながらお隣さんはそう言った。

そして、笑顔のまま溜息を吐くと

「お嬢さんも上がってきたらどうですか?」

と言った。私は頷いてお隣さんのうちに上がり込んだ。

「しかし、コンビニでよく合う人がお隣さんのお友達だとは知りませんでしたよ」

オタク風の男を見ながらそう言うとお隣さんは苦笑して

「まぶだちという奴でしょうかね?」

と言った。

「まあ、俺、基本的にパソコンから出ないから」

オタク風の男はあっけらかんとそう言った。

私はその日その言葉真意を聞く事はしなかったがもしやと思ってしまったのは秘密にしておこう。

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