第6話 月の友達。
その日は月の赤い夜だった。
あまりに月が不気味だった為に私とお隣さんはお互いに庭に出ながら空を見上げていた。
「このまま、月が落ちてきたらどうします?」
お隣さんはボーとしたままそう言った。
「お隣さんは?」
私がそう返すとお隣さんは変わらぬ口調で
「私が質問したんです」
と言った。
「そうですね……私は月のウサギと友達になる方法を考えておきます」
私がそう言うとお隣さんは上を見上げたまま「くくく」と笑った。
「お嬢さんはやっぱり面白いな~」
お隣さんは腕を組みしみじみそう言った。
「ほっといて下さい」
私がふいっとそう言うとお隣さんは家の中へ入って行った。
それを横目で見ながら私はそのまま月を見上げた。
手を伸ばせば届きそうなくらい近くて、でもとても不気味で……
あまりに恐くて目が離せない。
人の気配が戻って来たので横目で見るとお隣さんは懐中電灯を手に持っていた。
お隣さんはその懐中電灯を月に向けて高く掲げるとライトを不規則に点滅させ始めた。
何となくモールス信号だと言うのは分かったけれど私には意味はわからなかった。
5分ほどそんな事をしているとお隣さんは唐突に
「腕が疲れました」
と言って家に帰っていた。
私もいつまでも見ていても仕方がないのでその日はそれで家に入った。
数日後私宛に送り主の書かれていない荷物が届いた。
可愛らしい女の子の字で「お友達になって下さい」と書いてあった。
箱の中身は突きたての金色のお餅だった。
手紙にはついでに返事はお隣さんに渡して欲しいと言う事と、気が向いたらお隣さんにもお餅を別けてあげて欲しいとの事も書かれていた。
私は早速、隣の家に行った。お隣さんは「あぁ」と言うと「仲良くしてあげて下さいね」と言って餅を嬉しそうに受け取った。
そのまま茫然と玄関にいると思い出した様に
「できれば返事は短めにして下さい。腕が疲れるんで」
と言って台所と思われる場所へ消えて行った。
返事を書くとその晩、お隣さんは月に向かってモールス信号を送っていた。
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