第5話 時間時計。

時計は正しい時間を刻まなければならない。でも、もし時計でなく時間が狂ってしまったらその時時間はどうするのだろう?



最近、深夜1時頃になると時計の針がカタカタと音をたてて回転し出す。

針の動きは色々で進むこともあれば戻る事もある。

何回も回る事もあれば、二時間くらいだけ動く時もある。でもそれは決まって深夜にのみ起こる。


「それでですね、その時計を違う部屋に持っていくと動くのは止まって携帯と同じ時間を指すんですよ」


私はお隣さんの家の縁側に座り、日本茶を貰いながら私が持ってきた蒲焼きさんと焼き肉さんを食べていた。


「のしうめさんはないんですか?」


お隣さんの返事はそれだった。


「お隣さん、私の話聞いていました?」


私がそう言うとお隣さんは沈黙をおいてから

「えぇ、聞いていましたよ?ちゃんと」

と返事をした。


この男、ぜってぇ聞いてなかった。

私はそう思いながらお茶を啜った。


「今度、コンビニにリクエスト出しときますよ。あそこ変な店員多いけど品揃えは妙に良いですから」

私がそう言うと「じゃあ、わさびのりさんも」と言われた。


「で、我が家の時計の話ですけど!」

私がそう言うとお隣さんは忘れていたように「あぁ」と言った。


「私は何か時間を狂わす妖怪が住んでいるとか、私の部屋の時空時間軸が狂っているんじゃないかと思ってるんですけど?」

私が真剣にそう言うとお隣さんは飲んでいたお茶を吹き出して爆笑しだした。


「いや~お嬢さん!お嬢さんの考えはやっぱり面白い!」

と笑いながら言った。


「私は真剣ですよ?」

私がそう言うとお隣さんはまた笑って

「なんで、時計が壊れたとは思わないんですか?」

と言われた。


私は少し沈黙してた。そして首を傾げた。


お隣さんは涙を拭うと

「でも、お嬢さんの家の時計は正しい時間を刻んでますよ」

と言ってくれた。


そして自分の懐から懐中時計を取り出して「ほら」と見せてくれた。

その時計は三時の少し前で止まっていた。


「これはこれで正しいんです。だから私は本当はおやつの時間をとれないんです」

と言って寂しそうに笑った。


「お嬢さんの時計もきっとお嬢さんに正しい時間を示してくれてるんですよ」

お隣さんはそう言うと何事もなかった様にお茶を飲んだ。


私は一つだけ言いたかった。「うちの時計、壁掛けなんだけど…」

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