06 ノイズ

 ザァーザァーとノイズが混じる。

 これまで見ていた世界とは違う世界。


 天も地も全てが白い空間。

 自分の輪郭以外に輪郭と呼べる物はない。

 此処は広いのか、それとも狭いのか。

 

 上下左右の方向感覚が酷く曖昧になる。

 重力はおろか時間さえ曖昧な、脆弱で希薄な空間。


 そのからの空間で。


 爪を切られる。

 切り落とされた爪は、瞬時に「私の一部」から「私の一部だった物」に変わる。

 ほうって置けば、やがて朽ちるだろう。


 髪を切られる。

 切り落とされた頭髪は「自分の一部」から「自分の一部だった物」に変わる。

 抛って置けば、やがて朽ちるだろう。


 腕を切り落とされる。

 白い空間に赤が映える。

 切り落とされた腕は、「自分の一部」から「自分の一部だった物」に変わる。

 暫くもがいていた腕も抛って置けば、やがて朽ちるだろう。


 首を切り落とされる。

 いや、切り落とされたのは身体の方か。

 一体どちらが「自分」で、どちらが「自分だった物」だろう。

 抛って置けば、やがて何(いず)れも朽ちるだろう。

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