第184話「迫り来る恐怖」


 ディオスが爆発し、霊力の炎である鬼火を吹きながら地に落ちる。

 

 「ZPD01ディオス、消滅……」

 

  ディオスの撃破にホルキオスが狼狽する、破損状態の一部を切り離すとディオス同様に敗走すべくザジ達との距離を取ろうとアダマスを吹かせて牽制し始める。

 

 「ザジ君、ベクレム、この機械の大ミミズは絶対に逃がさないでくれ、私の今後の作戦計画の天敵なんだ!! 」

 

 ここで出てくるのは、以下にも量産機なロボットプラモデルのボディを持つ地下帝国プラモ屋店主。

 どうやら只のプラモデル屋では無いらしい。

 

 

 「解ったぞ店主よ、貴方が作戦と言うのだから、尚更撃退せねばなるまい」

 

 ベクレムが再びホルキオスの前に立つ。

 ザジはホルキオスの内部を見て言う。

 

 「あのミミズ型ドローンのエンジンみたいに霊力を放出している亡霊は、直接ミミズを動かしている様に見えない」

 「なんだろう? 別の何かが指令でも出しているのか? 」

 

 そうザジには敵意を感じない亡霊の存在が気になっている。

 そして嫌な予感と憶測がよぎる。

 それはまさしく彼等ZPDシリーズ全てにおける仕様でもある。

 

 「二依子達の霊力を感じる、つまりまだネット環境は維持されてるって事だ、コイツ等はネットで情報を取り合ってると思う」

 

 ベクレムはその推測を聞き、剣を構えてザジに答える。

 

 「二人羽織りだとすれば、司令塔が機体の何処かにあるはずだな」

 「やむを得ん、あの亡霊は倒すしかあるまい……」

 

 打ち倒そうとベクレムがオーヴァードエッジを構えるが、そこにザジは割って入る。

 

 「俺が、フランベルジェを使ってエンジン役の亡霊を成仏させる……」

 

 そう言うとザジは再び剣に蒼い炎を纏わせて構えた。

 同様にホルキオスのエンジン役の亡霊を見てベクレムは答える。

 

 「そうかレジェンド……それは辛い役だな、だが任せたぞ」

 「……彼を解き放ってやってくれ……」

 

 こうしてホルキオスのエンジン亡霊の成仏を行い、内部構造の謎を探るザジ達は、後にZPD達の真実と解号することになるだろう。

 だがそれと同時に、また別の情勢は動いていた。

 

 ******

 

 場面は再び未来のユナと頭目が居る病院に戻る、病院の場所は小高い丘に建っており。

 屋上に上がれば眼下に街の灯りが見下ろせる、絶景が見えるスポットでもあるが……

 

 その絶景を背に、何かが……

 不穏な何かが……

 

 闇に隠れて動き出していた。

 

 真夜中の病院の外には、頭目の部下達が乗る黒い車が止まっている。

 車内で頭目の通信を管理する黒服達の伝令が聞こえていた。

 

 「彼女(未来ユナ)との会話データは録音を取れよ、当主様に送っているライブ配信があってもアーカイブの保存はしとけ」

 

 重要人物である未来ユナとの会話、当初全く存在を想定していなかったが、ユナ本人の情報により実現した聴取の機会。

 

 これには陰陽庁、そのトップ組織である陰陽寮までもが注目している。

 この事もあってか、頭目によりライブ配信機材が車内に持ち込まれており、頭目の憑依しているプラモデルボディの背部のマウントしたバーニアパーツには集音機が仕込まれている。

 これは陰陽庁トップの党首代行、安倍みちかへのライブ配信も兼ねているのである。

 

 ……

 

 だが、その機会を良しとしない存在が蠢いていたのを彼等は気付かなかった。

 

 病院の周囲の駐車場に止まっている黒い車、中では眠っている頭目とライブ配信で黒服達は警戒が手薄だったのである。

 

 「……?! 」

 

 黒服の一人、小笠原が車の外に小さな光を見る。

 あわてて小笠原が車の外に出て、近くの建物の壁を背に周囲を警戒する。

 

 だがその時点で危険が既に近くまで迫っていると言う事に気付き、手に持ったスカイマーシャルリボルバーの残弾を確認。

 

 彼の手は冷や汗をかいており、状況的に危険の高い事が起こる予兆を感じ取っている。

 

 「………!! 」

 

 車内の黒服達に自らの手に懐中電灯の光を当ててハンドサイン。

 サインが示す事は、自分が攻撃に晒されたらすぐに逃げろ……と言うものであった。

 

 「なんじゃ? お前ら、どうした? 」

 

 黒服達の様子に気が付く頭目、だがそれは逆に相手に警戒を見せてしまう行為でもあった。

 

 ……ザザ!!ザザザ!!

 

 ライブ配信に突如通信障害が発生、頭目と黒服達の交信が途絶える。

 

 「おい!! 何じゃ! お前達何が起きとる!! 」

 

 プラモデルのバックパックに仕込んでいる通信機器が、電波障害でライブ配信が行えなくなり……

 頭目は突然の状況に慌てていた。

 そして通信会話モードをライブ配信機器から、頭目の使用している憑依アプリの通信機能に切り替えた時……それは聞こえてくる。

 

 パン!!……パンパン!!

 

 

 聞こえてくる音は、黒服の小笠原が所持していたリボルバーによる発砲音である。

 

 「何で撃っとるんじゃ!? おい!! 応答せんか!! 」

 

 ……タタタ!!……タタタタタ!!

 

 「………ゥッ!! 」

 

 続けて聞こえてくる音はまるで軍用自動小銃の銃声、サイレンサー越しでもハッキリと発砲音と解る。

 そして何か人の呻く様な声。

 

 「おい!! どうした!! お前等!! 応答しろ!! 」

 

 頭目の霊声が響く、プラモデルの上でもはっきりと、その悲鳴じみた声から焦りを感じ取れる。

 

 「これは……一体……」

 

 そして未来のユナも険しい表情でその様子を見る。

 未来のユナの脳裏にある仮説が立てられる。

 

 それは……

 

 メサイヤーに関するモノ達による、時間逆行を使った未来改変行為である。

 


 

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