第183話「龍のイカヅチ」
ベクレムが語りを入れる。
「見たか! この黄金の輝き、キングの光! 」
「その電撃攻撃は荷電霊糸を投射している様に見えるが、実際は煙や熱の様に着弾と共にバリアの上を伝播し、バリアとボディの合間に入り込む霊糸が飛散するモノと見た」
「つまり、バリアとボディの合間が無いコーティングするような防御手段を用いれば防御が可能だ!! 」
その様子はディオスにも確認出来、完全に無効化されたケラウノスは防御方法が伝播される事で自身の戦力としての価値を失ったと確信した。
「こちらZPD01ディオス、装備の換装を要請する」
「ゼウスオロマズデスに帰還を要請、ケラウノス収束型装備換装の後に再度交戦を行う」
母艦への通信を行ったディオスが、踵を返す様に背を向けて離脱を開始する。
ディルムンの地下空間から抜け出す為に、ホルキオスが開けた大穴を通る為に飛び上がった。
「むっ、奴め……攻撃が効かぬと見たら急に撤退の姿勢を見せ始めたか!! 」
ベクレムは黄金のカッコいいポーズで固まったまま、ディオスの様子を冷静に分析していた。
「ワオオン!! (逃がさない!! )」
逃走に反応するよしこ、即座に追撃が撃ち出される。
このロングライフルによるニードルは一発で防御スキルであるフォーレスの貫通が行えるスグレモノだ。
「敵性勢力の装備に対抗する防衛手段無し、回避を遂行」
つまり装甲の薄いディオスには致命傷になりやすい、撤退を決めるディオスがボディを左右に降りながら飛び、回避行動を始めた。
「甘い!! エッジビット!! 囲め!! 」
ベクレムのエッジビットによる追撃がディオスを捕えようと左右に挟み込む、だがディオスはプロペラを使ったドローンでもあり、上下にも複雑にフリップ回避が可能。
ベクレムの追撃を躱すと距離を取り、ホルキオスの開けた大穴に向かう。
「ワオオンワン!! (クソ!! 逃げられる! ) 」
ここでよしこが砲撃、ディオスの左翼部分を破壊し、プロペラのローターが落下する。
「着弾……ダメージ確認、プロペラ装備をパージする……」
だがディオスは同時に右のローターの基部もパージし、自身のファントムブースターで飛行状態を継続。
これはディオスの仕様そのものであり、環境に適応するために装備を換装するヒト型というよりは、架空ロボット型のファントムドローンである証拠である。
「似ている……あのファントムドローン、もしかしたら俺達の様なプラモボディに近い仕様なのかも……」
逃げていくディオスを見たザジが、ふと思い浮かべた事を語る。
そう言う間にディオスは攻撃圏外へと逃れていく。
「こちらホルキオス、ディオスの離脱を援護する……」
ホルキオスがボロボロの状態で追撃するベクレム達の前に立ち塞がる、ディオスの戦力の建て直しを自らの敗北による損害で賄うのである。
「なるほど撤退か、戦術的に動く意思があるのか……仲間を庇うとはな」
ベクレムはホルキオスの行動に共感している様だ。
(………)
「地上への帰還通路に到着……殿(しんがり)を勤めるホルキオスに敬意と感謝を」
ディオスはホルキオスが作った大穴に到着、ホルキオスの捨て身の行動により見事に追撃を振り切り逃走を開始する。
眼下ではホルキオスと騎士団との交戦が再開されている。
だが破壊されるのも時間の問題だろう。
「再度換装して舞い戻る、回収に至れば彼のデータは無駄にしない」
そのホルキオスの作った通路は地上への帰還通路で、地下帝国の配管から地上まで古い水道管を拡張して出来ている様で、プロペラ装備の外したディオスには丁度良い大きさとなっていた。
「……! 」
地下帝国の配管を通るディオスだが、その先に何やら影が有ることに気が付く。
「敵性霊体……確認!! 」
突然現れたディオスが確認する存在……
それは、巫女の様な出立ちで鹿の様な角の……
所謂、"龍の巫女的な"人形ボディ。
そう……
アンキャナーと共にこの地下帝国にやって来たイレギュラー。
"龍の巨大霊体"の分体……
ヤトである。
慌ててディオスが攻撃に移る。
「ケラウノス……発射!! 」
ディオスは彼女に向けて雷霆装備ケラウノスを発射、その奔流は狭い大穴の中では回避もおぼつかない。
だが……
雷霆攻撃の霊糸が飛散する前に巻き上げられ、受け流されるようにヤトの周囲を停滞すると。
ボールの様に纏められてから、電力と霊糸が分離され消えていった。
「ひええええ!? 綺麗に纏められてる……」
ヤトの背後から現れる半壊したプラモデルボディ、ディルムンのプレイヤーであった二依子である。
彼女のボディのプラモデルはディオスのファーストコンタクトによるケラウノスの直撃を受け、半壊。
装備と装甲が大きく破損し、肩ごと腕1本吹き飛ぶ。
……が、亡霊と違い生き霊のプレイヤーである為に本体のダメージを気にせず、かつ重装甲ボディの霊力漏れが気にならなければ活動に制限は無い。
ここまでヤトを運んで、虎視眈々と復讐の機会を伺ってた彼女は語る。
「ディルムンを妨害しに来たって言う、侵入者!!」
「ヤトさん!! 一発やっちゃって下さい!! 」
アンキャナー同様、彼女はヤトの正体も"未来から来た凄い人"程度の認識しかないが、なんとなくやっつけてくれそうな期待感が有った。
そんな二依子を見て、ヤトはクスリと笑みを浮かべて言う。
「本来、コイツを倒せる霊力なんて持ち合わせて無いんだけれども……」
「何か自分と似たような装備を持っててイラッとしちゃった……」
ヤトは二依子から借りたキャノン砲の様なプラモデルの武器パーツを構える。
「あのミミズモドキが壊して行った配管に、この都市の霊力供給管が有ったから、霊力を拝借したわ」
「よって十分、さっきのお返しをしてあげる!! 」
ヤトはキャノン砲に即興で霊糸回路を組み付けると、先ほど分離させて霧散した電撃を持ち込んだ霊力と合わせた。
すると、果てしなく圧縮したかの様に砲身が虹色の輝きを見せる。
「そっちが神の雷なら、こっちは"龍のイカヅチ"言った所ね……」
「一つ食らいなさいな……」
そして遂に解き放たれる一発の砲撃!
「……!! 」
それにはディオスのボディ形状も防御装甲も全く意味を持たず、至近距離である以上回避も出来ない。
ディオスは霊力のジェネレーター部分を撃ち抜かれた上で、激しく吹き飛んで大穴から弾き出され……悶え苦しむ様に蠢く。
「ジェネレーター破損、オーバーロード……回避不可……不可……!! 」
内部霊力が激しく爆発を起こし、木っ端微塵に爆散したのである!!
「綺麗な花火ね(スッキリ)……」
そこにはアンキャナー(クソ上司)に振り回された鬱憤を晴らした、清々しい助手の姿が有った。
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