第181話「蒼き炎のフランベルジェ」


 荒れ狂う様に長い身体にうねりを起こすホルキオス、その気になれば地下帝国の配管に逃げ込み、この場から逃れる事も可能では有る。

 

 「射撃部隊前へ!! 集中砲火!! 」

 

 だが対するオーヴァードエッジ騎士団達は砲撃で牽制しながら、配管に潜り込む際にアダマスを突き立てる為に無防備になる瞬間を狙っている。

 そして攻撃目標地が判明している事も有り、この機を逃すと次は無い。

 そう勘ぐっているので決死の攻勢を見せている。

 そんな中、ザジ達の陣営に新たに救援の亡霊が駆けつける。

 

 「ワオオン!!ワンワン!! (ザジ!! 助けに来ました!! )」

 

 オオカミ型ロボプラモデルの亡霊犬"よしこ"の登場だ。

 飼い主のフォッカーのオリジナルボディは病院に置かれている為。

 共有のオリジナルボディを持つよしこは、ボディが破壊される事があろうとも地下帝国に張り巡らされている霊力パイプに逃げ込んでオリジナルボディに戻るだけで霊体の存続が容易に出来る、比較的フットワークが軽くサポートに向いているのである。

 

 「よしこ!! 助かった、今すぐベクレムの援護を頼めるか?! 」

 

 「ワオン!! (わかった) ワンワンワンワン! (ドクの新武装を貰って来たからザジも使って!! )」

 

 よしこがドクの新武器をザジに託す、よしこ自身も背部に装着したライフルが新たに新造されていた。

 

 「ワオオオオン(突然普通に喋りだして)……新武装のニードルライフルとニードルショットシェルよ」

 「ザジは肩のミサイルマウントに、ショットシェルを付けて打ち出して」

 

 ザジはミサイルパーツをパージ、新たにニードルショットシェルを取り付ける。

 そしてザジはよしこに武器の詳細を聞く。

 

 「この武器は何?」

 

 「特殊な霊糸回路ニードルよ、霊糸を巻き付けて打ち出し、着弾したら霊力を流してフォートレスの装甲を一時的にオーバーフローさせるの」

 「オーバーフローすればフォートレスはその部分だけ穴が空いた様になる、そこを狙って攻撃するとダメージが出る寸法よ」

 

 よしこの説明でザジが考える、この武器は無駄撃ち出来ない。

 そしてこれは目の前のホルキオスではなく、装甲が薄いディオスに使うべきだと思った。

 だが、ザジは考えた。

 

 「よしこはライフルでベクレムの相手の羽根っぽいヤツに援護で使って、俺はこちらで大きいヤツに使う」

 

 よしこは了解したのか、頷いて走り、ベクレムの援護に駆けつける。

 ザジはホルキオスに対峙するため、四天王を連れて向かって行った。

 

 ホルキオスは威嚇のようにアダマスを振るう、アダマスの霊糸が先端部だけでなく側面からも放出され、全身ドリルの状態である。

 

「今から装甲を疲弊させる、合図をしたら四天王は全力で攻撃を……」

 

 ザジの合図を待つために四天王が集合する。

 

 「集合!! 四天王、アキュラ! モトウ!! グリタ!! グリッチ!! コロケー!! 」

 

 自ら叫び集合する四天王……だがザジは決定的な事実に遭遇する。

 

 (……あれ?! 五人居る? )

 

 

 確かに五人居る……いや四天王が時々五人居ても、おおよそ四天王だと思う。

 ……多分。

 

 何も考えない様に決めたザジはホルキオスの側面に駆け込み、肩に装備されたニードルショットシェルを撃つ為にニードルに霊力を流す。

 

 「いくぞ!! ニードルショット、発射!! 」

 

 撃ち込まれるニードル……

 ホルキオスの装甲に突き立てる様に命中すると、フォートレスのスキル効果を打ち消す様に霊力が働き、オーバーフローを起こした装甲が無防備になった。

 

 「今だ!! 攻撃を!! 」

 

 ザジの合図と共にオーバードエッジ騎士団が次々に抜刀、一丸となって順序良く斬撃を入れる為に均等に並び走り抜ける!!

 

 「陣形!! オーバードエッジチェーンソー!! 」

 

 騎士団がオーバードエッジを薩摩示現流の如く上段に掲げて並び走り、斬り抜ける様は正しくチェーンソー。

 

 ホルキオスの装甲が傷付き内部が露出する程のダメージを与えたのである!!

 

 「………損傷確認!! 全力防衛を行う!! 」

 

 ホルキオスが反撃を行おうと激しく巨体を振り回し、騎士団を引き剥がすと……

 "お返し"と言わんばかりにアダマスを振り回して襲いかかる!!

 

 「来たな……霊糸のブレード……」

 

 ザジが正面に打って出る、騎士団を下がらせると……

 剣を構えてアダマスと斬り合う姿勢を見せる。

 アダマスはザジのプラモデルボディの身の丈を超える、霊糸のプラズマブレード。

 対するザジは自身のプラモデルの付属の剣のパーツを掲げると……

 霊力を全開で走らせて、オーバードエッジを形成する!!

 そして……

 

 「ハイ・ファントム……オーバードエッジ!! 」

 

 「「 フランベルジェ!! 」」

 

 ザジが形成したオーバードエッジは、揺らぐ様に刀身から放出される霊力の波を造り……

 

 蒼き炎の様なエフェクトを見せ、"フランベルジェ"……つまり蛇行する刀身の剣に変化したのである!!

 

 「でやああああ!! 」

 

 フランベルジェとなったオーバードエッジは、そのままザジによってアダマスの霊糸ブレードに向けて斬り結ぶ様に振り込まれ。

 

 接触した刀身が蒼き炎の蛍火を発し、アダマスの霊糸を焼き払って散らせていく!!

 

 これは、亡霊が嫌う成仏の光と炎をザジ自身が過去に成仏に失敗した際に、霊体の奥で燻っていたので武器として採用したものである。

 

 「成仏の火を武器に使うなんて……凄いバチ当たりだ……」

 

 これには騎士団全員が唖然としていた。

 だが、その状況とは裏腹に蒼き炎の"フランベルジェ"は……

 霊糸に侵食するかの如く……

 アダマスの霊糸を焼き尽くすかの如く……

 

 糸屑が燃え散って、火の粉が舞い上がる様に飛び交うと……

 

 ホルキオスの霊糸ブレードの基部ごと、アダマスは両断されていた……

 

 成仏の炎は今、ファントムドローン達にもその場の亡霊達にも恐怖を覚えさせる位、強いインパクトをもたらしていた。

 

 (これは……霊的に、"危険過ぎる")

 

 ザジは心に誓う。

 

 (これは、普通の亡霊相手使わない様にしよう……"封印"安定だ)

 

 恐ろしい危険な技が産み出されてしまったのを、ザジは後悔していた。

 

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