第178話「大強襲、ZPD軍団!!」


 ******

 

 場面は変わって、ここは地下帝国のサーバールーム。

 

 「ハッキングによる一部のシステム掌握を確認! こちらのドメイン権限を全て奪い取る為の攻撃と認定……」

 

 ここでは地下帝国のイベント「ディルムン」のデータ管理だけでなく、警備システムや街の管理システムの全てが担われていた。

 

 「サーバー内に流入した謎のウイルスプログラムを確認……アドレス名"バアル・シャマイン"!! 」

 「ネットワークからの侵入ではありません、地下帝国の内部からの物理的なアクセスだと思われます」

 

 ディルムンの最中のトラブルに騒然とするサーバールームでは、地下帝国の帝と言える「母札」である紀伊ママが対応していた。

 

 相手は古代シリアでの信仰されていたゼウスの別名を名乗るハッカー、バアル・シャマイン。

 すでに一部システムを掌握しており、その勢いは防衛にあたるサーバールームの亡霊達では追い付かないレベルである。

 地下帝国のプログラマー達に戦慄が走る。

 

 「全力で阻止だ、全員での直接干渉で行くぞ! ファントムフルダイブ開始! 」

 

 地下帝国の防衛システムが起動する、霊力による電脳空間が展開され、ハッキングによるシステムの制圧が可視化される。

 

 ここで可視化された空間を、ザジ達の方舟のメンバーである亡霊ラマーが凝視する。

 

 「何処だ! 出てきやがれ! ……バアルシャマイン! 」

 

 地下帝国のシステム防衛部隊とラマーによる電脳空間での戦いが始まった。

 

 「皆さんよろしくお願いします、相手は未知の霊力技術を持ってる事もあり、参加プレイヤー達に危険が及ぶかもしれません」

 

 紀伊ママはバアルシャマインが侵入した経路を探る為に警備部隊を召集する……だがしかし!

 

 「これは……一体?! 」

 

 そう、会場は先行で攻撃しているZPDディオスによりプレイヤー達は阿鼻叫喚の騒動になっていたのである。

 そして新たなる警報と共に、地下帝国の水路警備隊より更なる攻撃の報告がやってくる。

 

 「こちら地下帝国水軍、謎の正体不明の勢力の入電による宣戦布告を確認! 」

 「正体不明の勢力はクテーシオスを名乗り、護衛艦三隻を攻撃! 」

 「三隻の中、二隻の大破と一隻の轟沈を確認! 」

 

 古代ギリシャのゼウスの信仰(財産を守る神)、クテーシオスを名乗る水中型のZPDは、地下帝国の水路の制圧の為に活動を開始していた。

 

 場所は変わり、地下帝国の検問所、入国管理局が存在する所謂入り口である。

 ここで更なる事態が起こっていた。

 

 「こちら地下帝国検問、入国管理ゲート! 」

 「ヒト型の大型ロボットがゲート前を襲撃!! プラズマカッターで防御扉を切断中!! 応援を要請する!! 」

 

 地下帝国の入り口であるトンネル、そのカモフラージュを通り抜けて、アメリカの新興企業が開発しているヒト型ロボット"アトラス"を彷彿させる巨体のロボット兵器が侵入を開始。

 

 「ZPD4、ヘルケイオス……進行を開始する……」

 

 同じく古代ギリシャのゼウスの別名ヘルケイオス(一族の守護神)はサブアームを変形させると砲身が露出。

 古代ギリシャの伝説の兵器が撃ち込まれる。

 

 「グリークファイヤー(ギリシャの火)!! 」

 

 プラズマカッターで開けた扉の穴に強烈な火炎放射を注ぎ込む様に発射!!

 地下帝国に火災を発生させて甚大な被害をもたらした!!

 

 「地下帝国検問、陥落します! 」

 

 炎に包まれながら、焼け落ちる入り口の門を踏みつけ……

 ヘルケイオスは地下帝国内部へと侵入を果たした。

 

 「タライオス、起動……」

 

 ヘルケイオスの背部からキャタピラの付いた戦車型ドローンが切り離される。

 同じく古代ギリシャのゼウスの別名タライオスを名乗っている。

 戦車の様な容姿そのまま、銃火器やミサイル等を発射しながら、こちらも進行を開始。

 ヘルケイオスの護衛と言った所である。

 交戦情報を端末で確認した紀伊、近くに居るユナも眉間にシワを寄せて強張っている。

 ここで紀伊は言う。

 

 「このままだと本当に負けてしまうのです! でも相手は少数、各敵勢力の連携が整うまでに数でごり押すのです!! 」

 

 亡霊達の反撃が始まる。

 先行してきたZPDディオスに対空砲火が発射される。

 

 「なんだあの装甲、霊力を分解している……」

 

 対空攻撃を行っている警備隊達が驚愕している中、前線をになっている部隊に騎士型のロボットプラモデルがやって来た。

 

 「前線の加勢に来たぞ、あの装甲は俺の身内のスキルが解析されたモノなんだって、ついさっき紀伊から説明を受けた。」

 

 前線に到着したのはザジだ、ライブが強制中断したのでこっそり会場を抜け出して、騎士ロボボディに取り憑いて駆けつけたのである。

 道中で紀伊の分体にゼウスの話を聞き、カンチョウのスキルとフォッカーのスキルが使われている事を知ったらしい。

 

 「襲撃はここだけじゃない、各地で侵入してきた謎の敵が地下帝国を攻撃している、前線は一部入国管理ゲートに移って防御を固めて欲しいって……」

 

 「わかった、君も無茶するなよ……」

 

 前線の防衛部隊はザジと一部の亡霊達にその場を任せ、入国管理ゲートの防衛に向かう。

 それらを確認したZPDディオスは防御の形態を解くと、シールドに守られたボディから細身の手足の有る姿をさらけ出す。

 

 「陽動作戦の中断、これより……殲滅作戦に移行する……」

 

 ZPDシリーズの横に広い翼の様な胴体に細身の腕と長い足、以下にも飾り気の無い機械的なその姿は、かえって異様に見えた。

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