第176話「そしてアンキャナーは凛と輝く推しを見た」


 「でものう……それだけ解っとるんじゃったら、その滅亡とやらも止めれんのかのう……」

 

 頭目がユナから未来の自分の運命を聞いたが、ユナ(未来)の語るのは、全てではないが地球規模の災害である"滅亡の未来"の後に起こる出来事が語られている。

 

 「ええ、私の止められる範囲はきっと滅亡が前提になって起こる出来事に集中しているの……」

 

 「ワシのは止められるか、ちと聞いてみるか……」

 

 そう言うと、頭目はプラモデルボディで立ち上がり黒服達にアプリ越しで問いかける、すると直ぐ様黒服達からの応答もあった。

 

 「頭目様……頭目様にお見合いによる求婚されてる輩は、幾人かいらっしゃいますが、安倍宗家関係でとんでもないクズ(褐色金髪ホストもどき)が居るので気になって居たんです」

 

 「その、滅亡とやらで宗家に何かあって……頭目様に急に身を固める様な党首様からの指示があったと考えるなら、その未来もあり得るかと……」

 

 (宗家に、そんなヤバそうなの居たんじゃな……アワワ)

 

 頭目はふと気になっている事が有り、ユナ(未来)に聞き出す。

 

 「世界の滅亡は日本全体でどのくらい打撃になるんじゃ? そこは聞いとこうかのう? 」

 

 「……国が無くなるレベルよ……」

 

 さらっとエグい返しが帰って来た。

 

 「(真っ青)……聞きとう無かったわ……」

 

 頭目はプラモデルの中で愕然とする、止められる未来では無いと解ると何も言えない。

 これからやってくる災害である、文句も言えないだろう。

 ユナ(未来)はその様子を見て一つ何かの可能性を指し示す。

 

 「謎に包まれた存在が有るの……」

 「天国教団の報告書にあると思うけど、アンキャナーという協力者が存在するの……」

 

 頭目はその話に返答をする、何か思い当たる節がある模様。

 

 「この話は、本来は絶対秘密じゃが、以前に小僧達がアレを倒した時に壊れた球体が出てきたじゃろ?」

 「巨大霊体の核とも言える、謎の部品を陰陽庁が調べていたら、中から妙にちっちゃい亡霊と同じくらいの霊体が出てきたんじゃ……」

 

 「 !! 」

 

 ユナ(未来)は驚いた表情を見せる、明らかに知らない情報だ。

 

 「初めて知った……私達の世界では取り逃してしまったから……」

 

 頭目は何か変なモノを見たような感覚でソレを語る。

 

 「その中の小さな霊体は、人の形だけしていた動物霊みたいでのう、オウムみたいにひたすら……」

 

 アンキャナー……カイシュウ。

 アンキャナー……カイシュウ。

 ワレ、キカン……

 ワレ、キカン……

 

 「……等と、同じ言葉を繰り返し叫んでおってな、あんまりに九官鳥みたいで五月蝿くて蔵の奥に封印処置になったんじゃ……」

 

 ユナ(未来)はやはりそのアンキャナーと言う存在にとても注目している様子。

 そして知りうるアンキャナーに対する情報を語る。

 

 「黒騎士衛星(ブラックナイト・サテライト)の主……アンキャナー」

 「記録だけだと、サテライトは滅亡の日の前日に成層圏に侵入、同日夜に消滅……」

 「位置情報記録ではそうなっている訳ですが、それと同時に」

 

 

 

 「世界中から、"全ての亡霊"が消えてしまったのよ……」

 

 

 ******

 

 視点は再び地下帝国に変わる。

 

 

 ……ここはバトルゲーム「ディルムン」の中のライブステージ。

 本来は憑依ボディによるアイドルコンサートが行われている筈だが、今は違った。

 

 「とおおおおおお!!!」

 

 「「 アンキャナー!! キイイイイイック!! 」」

 

 「はああああああ!!! 」

 

 「「 クハンダー!! キイイイイイック!! 」」


 この二人は実はまだこんな変なノリのまま、ステージをバックに対決を続けていたのである。

 そしてバックミュージックとして流れるのは、アイドルボディに取り憑いたザジ(子)。

 軽快なアイドルステップを刻み、持ち歌である……

 

 #お願い、オーヴァードエッジ!!

 

 を、熱唱しながら二人の戦いを彩り、アンキャナーなんかはテンションブチ上がりである。

 しっかりドルヲタファッションに身を包み、とってもハイなアンキャナーが言う。

 

 「ヤトちゃん!! 私は今! テンションが有頂天だ!! 空だって簡単に翔べるよ!! (ガンギマリ)」

 

 「あー、ハイハイソウデスカー」

 

 感想を求められたヤトちゃん、これには呆れて棒読みの返事しか出てこない。

 

 ザジ(子)のアイドルスタイルは、誰に教わったのか実にあざとい。

 可愛らしさを追及した動きを極めており、腰を降って手を回して霊力で変声させたハニーボイスで踊る様は、完全にアイドル(だが男だ)

 本人は言われた通りにダミーアイドルとしてなりきってる、だがあまりにもそれは……想像以上にアイドル過ぎるのだ!!

 下手をすると性癖が歪みかねない!!

 

 「私は……何て罪なモノ(アイドル)を目覚めさせてしまったの……」

 

 二依子は感動の涙を霊体で流し、天を仰ぎ見ると煌めくハローニューワールドに感謝の意を込めて拍手をしていた。

 

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