第175話「救世主(メサイヤー)」


 「暗黒史とは、何じゃ!? あの報告書の滅亡の未来とか言う奴か?! 」

 

 頭目は運動しているユナ(未来)に訪ねる、頭目は半信半疑だが、ユナ(未来)の存在を目の当たりにして気が気でない様子。

 

 「そうでは無いの……滅亡そのものが歴史の本史なら、暗黒史は準備期間、原因そのものを差すわ」

 

 「つまりはアレか、日本の歴史の欠史とかその辺りみたいなものかのう……」

 

 ユナは腹筋の運動の為に上体起こしをしながら、頭目の質問に解答する。

 

 「国家の統一と言うには遠い時代ね、平和だったかもしれないのに、統一と言う情勢が戦乱の時代を呼んだ時代……近いモノがあるわね」

 「でももっと作為的と言うべき何かがあるの……」

 

 頭目はちんぷんかんぷんな表情である、ユナ(未来)の答えが理解出来ていない。

 ユナ(未来)が近い将来の世界を語る

 

 「この先……世界は赤道直下に降り注いだ宇宙線により、北と南に分断されるの」

 「30年も余り、ほとんどの国の情報が転々としていて、私達の組する北の連合国が南側の大きい連合国とやっとの事、交信を取り付けた時に……」

 「それは起こったわ……」

 

 ユナは少し、間を開けて語り出す。

 

 「無人兵器ファントムドローンによる強襲、それと同時に起こる謎の国家の宣戦布告、彼等は人間をまるで電池のように扱う霊体国家……」

 「進化した人類を名乗った数人の"救世主(メサイヤー)"によって南の人類国家は統一されていたの……」

 

 そのユナ(未来)の言葉に頭目は目を丸くして語る。

 

 「何じゃそれは?! まるで巨大霊体が国でも立ち上げて攻めて来た見たいなトンデモない話は!! 」

 

 頭目がびっくりして危うく憑依解けそうなくらい驚いている、だがユナ(未来)は更に続けて……

 その国の顛末を語った。

 

 「戦いはそこから始まったわ、ファントムドローンに対向する為に、式神の技術と亡霊達の痕跡を掘り起こして戦う……」

 「北の連合国全てが一丸となって、彼等……

 救世主(メサイヤー)達に勝つために全力を尽くしたのよ……」

 

 「でも……ある日突然……」

 

 「"救世主(メサイヤー)"は全て消滅したわ……」

 「全員が消息も不明で、実在も怪しむ様な不明な存在だったのが、突如完全な消滅を果たしたの……」

 

 ユナ(未来)の口から語られる救世主(メサイヤー)の消滅、頭目はその結末に怒りを露にした。

 

 「はあ?! 何じゃソイツ達わ?! 」

 「散々煽っといて勝手に消えるとか何事じゃ!! 」

 

 ユナ(未来)はその頭目の反応にごもっともと言わんばかりの顔をしてから、更に語る。

 その言葉は忌みを込めていた。

 

 「その通りね、結果的にその国が丸々誰の指導もなく残り、技術が流出して世界中から需要を得た結果……」

 「北の国同士での"第三次世界大戦"にまで発展したわ……」

 

 「なんてこったあああ!! 」

 

 プラモデルのボディから、頭目の霊体がはみ出る位の頭抱えてのけ反るジェスチャー。

 それだけ創造力豊かなのか、騙されやすいのか、ちょっと心配になる様な姿は哀愁漂う。

 その姿にクスリと微笑を浮かべるユナ(未来)は新たな情報を語る。

 

 「戦争は起きる中、メサイヤー達の居た国の跡地に赴き、存在の痕跡を辿ったの」

 「式神を使った霊力痕跡探知により、メサイヤーの中心人物の正体を突き止めたわ」

 

 「おおおお! 本当か! 」

 

 メサイヤーの正体を知ると言うことは、未来への対策に他ならない。

 頭目は喜びをプラモデルボディで表現し、話を聞き入る。

 

 「メサイヤーの正体は……」

 

 「雪車町(そりまち)湯南(ゆな)……」

 

 

 「「つまり、"この病院で"この身体を……私の身体を"乗っ取ったナニモノか"なのよ……」」

 

 

 この内容に頭目は愕然とする。

 

 「それではナニか?! お主、ずっとそのままクマで30年生きとったのか!? 」

 

 ユナ(未来)は首を降る、そしてもの悲しげに言う。

 

 「私の時のクマに封じ込めて居た札の力は、余り強くなかったの……」

 「だから身体の軛も失くなって、亡霊とも生き霊とも言えない放浪霊になってしまって、家族や仲間にとても迷惑をかけたわ……」

 「でもその分、沢山修行を積んだの、今こうして時間を渡ってやって来て居る位にね」

 

 頭目は動揺しながらもユナの行動に感心の念を送る。

 

 「魂だけの存在となり、身体を失って尚、陰陽師の修行をするとは並大抵ではない……相当頑張ったんじゃな」

 

 ユナ(未来)は喜んで賛辞を受ける。

 

 「ええ、貴女の教えですよ、頭目さん……今は師では有りませんが、未来では師事してましたから……」

 

 「おおおお! そうかのう、ワシ凄い弟子作ったんじゃないかのう、未来から来るとか鼻が高いわ」

 

 ユナの師事に、まだ師匠じゃないけど頭目がテレる。

 ちょっとすぐに詐欺に騙されそうな顔が何とも子憎たらしい。

 だがユナの賛辞は詐欺のような素振りはなく、紛れもない礼儀であった。

 ただ……肝心の"未来の頭目自身"は違った。

 

 「でも頭目さんは、これから先の未来にちょっと……悪い男に騙されて借金持ちになったり、部下の黒服さんが今までユニコーンの様な見守る立場だったのに……」

 「騙された男がきっかけで反転アンチになって……ユニコーンの様な出で立ちからデストロイモードに……」

 「恋愛関係でもつれてボロボロになるわ……」

 

 頭目はそれを聞いてブルブル震えて言う。

 

 「ワシもう家に引きこもるのじゃあああ!! そんな未来引きとうないのじゃあああ! 」

 

 ある意味ユナより未来を変えたい存在がソコに居た。

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