第172話「天国がギルガメッシュナイト」


 ******

 

 場所は代わり、ここは霊体病院の一室。

 霊体に大きなダメージをフォッカーとカンチョウがベットで寝かされていた。

 

 「しかし……参ったね、これじゃあ生きている時と代わり無いよ」

 

 「本当ッスね、霊体病院って聞いてたけどここまで病院していると、ナースの姉ちゃんに期待してしまう……」

 

 カンチョウの感想にフォッカーが答える。

 二人共、霊体が直接取り出され、酸素室のような景観をしている霊力で満たされた個室に隔離されていた。

 

 そして点滴を思わせる装置があり、霊糸から伝う濃縮された霊力を補給しながら二人は困り果てる。

 

 「何と言うか、穴があったら入りたい気分だ、あれ程……強襲に警戒されたしと言われといてこのザマは情けない。」

 

 カンチョウはフォッカーと一緒に、スキルをあっさりコピーされたと言う事に嘆いていた。

 そんな二人に面会者が現れる。

 

 「二人共! 大丈夫か! 俺が用事で離れてる内に偉いことになっててビックリしたぜ! 」

 

 他の用事で会社から離れてたパルドが霊体で姿を表した。

 何やら大きなボディを受領したらしく、病院の外が騒がしい。

 

 「パルド君、何か外が騒がしい様だが……」

 

 パルドは喜びを露にしている、何かを取り戻した様な様子。

 

 「見つかったンスよ! 俺と同型の電子基盤と本体が! ……まあ中身(霊体)はもう無かったんですけど」

 

 「それで外があんなに騒がしいのかね! まさかやたらとデカイあのボディの完全体が外に有ると……」

 

 カンチョウが霊体で外に身を乗り出し拝見する。

 外にあったパルドの完全体、それはキャタピラに細長いボディにロボットアーム、双眼鏡の様な顔パーツ……

 1980年代のアメリカ映画に出ても可笑しくないロボットの姿であった。

 

 「いや……とんでもない骨董品だ、これが本体かね」

 「何年前のモノなんだ? 」

 

 その言葉はパルドにやや困惑させた顔を見せるが、以外にも返答が帰ってきた。

 

 「ボディ自体が四十年位前の製造品で、内部の回路で眠ってた俺の霊体が目覚めたにが二十年前……」

 「倉庫で誇り被ってた所で目が覚めたのを覚えてます、それ以前の記憶は無いですね」

 

 すると急にフォッカーが話を切り出してきた。

 

 「最近になって電子基盤の霊体の定着が楽になったって事だろ?

 パルド自体は元々ボディに取り憑いていたのにさ」

 

 カンチョウは何か考えている様だ、気になっている事が有るらしい。

 

 「先代のカンチョウの時代では仲間同士でも霊力を奪い合う位が当たり前だった……」

 「だが今は全く違う、人里近くに住み着くだけでも何年も亡霊している者もいるし、便利に生き残れるようになった」

 

 カンチョウが語る中、フォッカーも何か思う節が有るようだ。

 

 「俺たち……生き残り過ぎじゃないですかね、人間の頃何てどうでも良くなっている位に亡霊の記憶が生き甲斐になってる」

 

 パルドも語る。

 

 「俺なんかさ、湾岸戦争の記録があって、それで何か亡霊になったっぽい記録が出てきたんだぜ! 」

 「でも起動に失敗したらしいのに、急に今頃起動したんだぜ、意味わかんねえ」

 

 一同が二十年前と言う節目……

 

 カンチョウは言う。

 

 「我々はこれからずっとそうなっていくのか……」

 「それとも……」

 

 「飛蝗の蝗害の様な一過性の突然変異なのか……」

 

 ******

 

 場面は代わり、再びエピファネエースと紀伊の対話の場に戻る。

 

 「さっきから二十年がどうとか……紀伊ちゃんはあの亡霊と何を話しているの? 」

 

 ユナはどうやら良くわかってない様子、対話すると聞いていたが何かはぐらかされているとも聞いて取れる。

 

 「シッ!!……」

 

 ここでユナに静かにするように言っているのは……ねぱただ、彼女は何かこの紀伊の対話の意味に気が付いたようだ。

 ねぱたは言う。

 

 「よう聞き……あのエピファネエースさんな、もしかしたら重要な情報持ってるかも知れんねん」

 

 「未来の……ですか?」

 

 ねぱたとの会話でユナはクマのボディから顔を出していたが、エピファネエースはチラリとその顔を見て何か思う仕草を見せている。

 続けてねぱたは言う。

 

 「ちゃうねん、今や」

 「今ウチ等、亡霊の状況で一番知りたい事実を知ってるかもしれんねん」

 

 そのねぱたの主張、それこそが亡霊増加傾向に有る。

 所謂……"何故に自分達が活き長らえていると言う事実"に対する追求だ。

 

 「……! 」

 

 ユナはハッと気が付く、未来のビジョンでは亡霊は居ないと言う事実がよぎる。

 ただ単に災害であっさり居なくなった、と言うにしては可笑しいのである。

 

 (この未来霊、"亡霊達の何か"を知ってる……? )

 

 状況は変わらず、エピファネエースはこの地下帝国の事を天国に以下に近いかと言う事を紀伊に語っていた。

 

 「天国の構造的に、死者の活きていた情景が強く出る」

 「死者の全盛的な記憶が今だと……日本では1980年から1990年の情景となる、今この地下帝国の都市も動揺に活気があり、人間の都市よりバブルそのものに近い」

 

 「……エピファネエースは随分と近代の歴史に詳しいのですね、紀元前の亡霊と思えないのです」

 

 紀伊がエピファネエースの意外な知識の豊富さに驚く、古代霊に似つかわしくない博識である。

 

 エピファネエースの話にユナは思う。

 

 (今、天国行くとボディコン着て、変な団扇振ってギルガメッシュナイト!? )

 

 

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