第171話「今は見えぬ暁の海」
(……)
視点はエピファネエースに移る。
ボロボロだが彼は困惑している。
「しかし驚いたな」
エピファネエースは燃える自身の霊体を見て思う。
一体何が満足させているのか。
充実感などと言う感情が、何故こう言う場所で沸き上がったのか。
「こんにちわ、古代の皇帝エピファネエース、私はこの地下帝国の帝、その一部で紀伊と言うのであります」
ここで燃えるエピファネエースの前に現れる少女の霊体、紀伊。
彼女は対話を行う為に、危険を承知で歩み寄ったのである。
エピファネエースは帝の存在に反応し、頭を垂れる。
「お初にお目目にかかる、余はエピファネエース、生前はアンティオコス四世にて王であった」
「この地にはあくまでも霊力スキル資源の確保で至ったに過ぎん、だが……」
エピファネエースは紀伊に燃える霊体の手をかざす。
「我が呪われた霊体は以下な時代であっても、このような成仏などと言う過程には一度も至ったことなど無い」
「そなたに問いたい、我はユダヤの恩敵であり死しても尚、生まれ変わることすらも叶わぬ筈」
「我の行いを悪とする言い伝えが残り、それらが天国で我を燃え残らせていた」
「だが余に再びこのような戦の情熱の火をもたらすとは、恐れ入った」
エピファネエースは再びボディのプラモデルに戻ると、紀伊の前に歩みより、跪(ひざまず)く。
「余はこの地を、霊力スキルの"部品"の倉庫程度の場と勘違いしていたかもしれない、紀伊よ! 、帝よ!! 、我を今一度無礼を詫びよう!! 」
紀伊は突然のエピファネエースの行動に戸惑う。
(宣戦布告するつもりで啖呵でも切ろうと思ってたのに、こんなに紳士的に振る舞われて、逆に困ったのです! )
だが、何故か紀伊はエピファネエースの反応に理解の節を感じていた。
「部品……そうなのですね、無理もないです……」
急に紀伊に何かを語るような面持ちを見せる。
「紀伊ちゃん? 」
ユナは紀伊の様子を見るに首を傾げる。
紀伊はエピファネエースにその理解の意味を語った。
「もし、二十年位過去にこの地を訪れてたら、貴方の言う部品倉庫だったかもしれないのです」
「……!? 」
紀伊の語る言葉の意味に、驚きを見せるエピファネエース。
そして猛然と言葉を紡ぐ。
「それでは何か?! まるで異変でも起きて、この国の概要が変わったとでも言うのか!? 」
エピファネエースは紀伊に問う、これに紀伊は動じず返答する。
「ここは元々"クニ"などではなかったのですよ、俗世から忘れ去られた過去の戦争廃墟……」
周囲を指差す紀伊、ここはその廃墟の最深部。
造船所の底であろうような場所は錆と埃が沈殿する、廃墟である。
「ここで作られていた船、それがこのクニであり"部品"と見られても仕方ないのです。」
「ほう……」
エピファネエースは紀伊が語る"このクニの真実"に耳を傾ける。
彼の見る地下帝国と、彼が知る"部品"の地下帝国。
何故違うのか、真相に迫りたいのである。
「超大和型戦艦、"紀伊"……」
「それがこのクニの正体なのです……その廃墟となった船の上に成り立っているのです」
その話を聞きユナは驚愕していた。
「ええええええ!! ここそんな船の上だったんですか?! 」
ねぱたはその話を聞き思い出す。
「工廠霊がここに昔からようさん居るんやって聞くけど、もしかして戦艦とか……そう言う事なん? 」
紀伊が改めて語る。
「大戦末期にこの船は建造されました、何度も作り直され形を変える事となったのですが、中に奉る舟神社は健在で……」
「完成を夢見て"あるモノ"を御神体として、奉納したのです」
紀伊が語る戦艦紀伊の詳細、以外にも、エピファネエースは聞き入っていた。
「安倍晴明の師に当たる賀茂忠行(かものただゆき)、その息子、賀茂保憲(かものやすのり)が残したと由縁されるモノで……」
「工廠霊の元である下位式神(意志が無い式神)を産み出す呪物であったとされる式神符……それが私、紀伊なのです」
エピファネエースは驚愕と共に喜びの声を上げ、紀伊に迫ろうとプラモデルの体で一歩踏み出す。
「つまり君は自身が余が求めるべき最高の部品であると言うことだな! 自ら現れるとはなんたる好機! 」
だが……踏み出したプラモデルボディは、前に進んだ霊体は……
青白い炎を吹き出して燃焼し始める。
「紀伊ちゃん!! 危ない!! 」
エピファネエースは紀伊に迫ろうと歩み出す……が。
「今は、よそう……」
迫ろうとしていたエピファネエースは、手を引き始めた。
そしてゆっくりと語り始める。
「時に紀伊とやら……余と戦をせぬか?」
「それはつまり宣戦布告と言う意味ですか?」
紀伊は毅然な態度で虚勢を張りつつ、エピファネエースの言葉に返答する。
「そなたが言いたい事はよくわかるぞ、この"クニ"は、二十年そこらで"部品倉庫"から……」
「「 "天国に最も近いクニ"になったと!! 」」
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