第170話「多様性なんて無かった」
大きく崩れるゼウスのボディ、霊糸結晶とクハンダーの水銀質のナノマシンで造られた装甲は……
十傑集による「謎のフィニッシュビーム」により砕ける。
「なんですかアレエエエエ! 」
ユナが驚愕したその謎のビーム攻撃はかなり効果抜群の様子で、固いクハンダーの結晶の様な装甲も溶かす様に破壊して、くり貫く様大穴を開けた。
その信じがたい光景にユナは勿論、ねぱたまでもが驚愕していた。
「なんか色々とツッコミしたくても、きっちりアイツにダメージ出してるやん……」
ここで紀伊が二人の反応を観て語り始める。
「これが今回の相手に通用すると踏まえて、エピファネエースと言う存在に彼等をぶつけた由縁(ゆえん)なのです。」
ユナは紀伊の語る由縁に反応する。
「この促販玩霊さん達が強いからぶつけたんじゃないの? 」
「半分は十傑集が強いからなのですが、もう一つ別の意味でも有るのです……」
紀伊の返答は少し重みを帯びている。
「まだだ……まだ戦える!! 」
その時、エピファネエースのゼウスのボディが装甲を復元しようと、再びクハンダーが水銀質の霊糸結晶を造り出して大きく空いた胸部の穴を埋め始めた……が
「……何?! 」
戸惑うエピファネエースの声。
ゼウスのボディの中心である、エピファネエースの取り憑いた核になっている小さいプラモデルのボディが……青い光を放ち始める!
「え! ……あれって!! 」
ユナはその光を見たことがある。
そう、いつかに見たあの"成仏光"である。
そうあの憑依バトルで見た光景。
頭目が操ったヴァリアント・ドーマンが激戦の末に倒した、あの
……呪いの人形の亡霊の姿を思い浮かべる。
(……)
「″奴等″が現れるぞ! 近い内に人の世界は魔境に襲われる! だが奴等も亡霊だ! 」
「きっと成仏の光は嫌かろう……」
(……)
あの成仏光に包まれた光景は今でも、ユナは心に染み付いているのである。
「まさかあの謎のビームって……亡霊を成仏させる攻撃だったの!? 」
エピファネエースの方に注目が集まる。
「なんだ!……これは、まさか我が未練が……燃えているのか!? 」
やはり、エピファネエースはかなり動揺している。
古代の大霊の大きい未練が、まるで可燃物であるかのような燃焼反応を起こしている。
「馬鹿な! エデン(天国)の炉の底で燃え残り、燻っていた我が魂が、未練が……浄化の光を帯びて燃えているだと!! 」
「「 信じられん! 」」
ここでねぱたがエピファネエースの様子に大きく反応した。
「ちょっと待って! こんなビームなんて撃ったら……ユウコはん達はどうなん!? 」
ねぱたは十傑集達の状況に注目する、それぞれが同じように成仏の光を出してはいるが……
成仏には至ってない。
「大丈夫、大丈夫よ……ねぱたちゃん、まだまだ成仏するにはちょっと遠いから……そんなことより……」
ユウコ達の十傑集はボロボロのエピファネエースの前に立つ、そこにあったゼウスのボディは形を失い。
エピファネエース自体は、取り憑いた小さなウルトと言うディルムン配布のプラモデルボディの姿で立っていた。
十傑集が止めと言わんばかりに集合し、何やら決めの言葉を言おうとしていたその時!
「バカめ! スキを見せたな! 」
突如現れた巨大な手が、ゼウスのボディの一部を遠隔操作したかの如く、ベーゴマ玩具の亡霊の霊体に指先から霊糸を飛ばして縛った!
「貰った! この強力なスキル! 我が手にしたぞ! 」
エピファネエースが遂に十傑集の一人のスキルを奪い取ったのである!
「ああ!! ヤバいですよ! 」
その様子を見たユナだったが、紀伊は余り同様していないのを見て、首を傾げている。
「 あれ? 」
ユナはエピファネエースに再び視点を置くと……
「クハハハハ! 促販玩霊十傑集! ここに敗れたり! 」
エピファネエースは高らかに霊力を高め、奪ったスキルを使おうとするが……
「何だこれ?……」
スキル:ベイファントム・スピン・サイクロン
※要”ベイ魂”レベル70以上
……
「「 ベ イ 魂 っ て な ん だ よ !!!? (一人ツッコミ)」」
困惑するエピファネエース、ここでハッと気が付く、よくよく考えれば……やけにマニアックというか、癖の強い亡霊達ばかりが集まっているのである。
「っくクソおお! (カードゲーマーの亡霊に霊糸を飛ばす)」
「(スキルを見て)使えねえええええ!! (ドロースキルばっかり) 」
慌ててエピファネエースは、他の十傑集にもスキル吸収を慣行するも……
「コレも駄目! コレも! こんなん何処に使えってんだよ! ポーズ限定の技とか、他にもロボの合体の様子を思い浮かべて……とか、名シーンを忠実に再現しながら……とか」
「ハアああああ(クソデカ溜息)……君等もしかして、多様性ちゅうもん無いの? (呆れ声)」
十傑集達は以下にも白々しい顔をしながら、そっぽを向いていた。
ユナはこの様子を見て言う。
「多様性ってやたらと海外の人が求めたりしますよねえ!! 」
これにはこの小説の筆者もぐうの音も出ない。
「紀伊ちゃんはもしかしてコレを読んで、彼等をぶつけたの? 」
ユナの質問に紀伊は複雑な顔で語る。
「ここまで通用するとは思ってなかったのです、ですが本当はもう少しあのエピファネエースについて”対話”したかったのですよ」
「へ? 」
ユナは意外な返事に困惑しているようだ。
「成仏に近付いたというのが、これで確信に迫ったのです」
紀伊はエピファネエースの元に向かっていった。
「ちょちょちょ! 紀伊ちゃん! 危ないって!!」
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