第169話「そんなベタな……」


 響き渡るオペレーションボイス。

 ゼウスボディを構えさせて、エピファネエースが防御の姿勢を取る。

 

 だがしかし……ここで割り込む別の影が見える。

 

 「ハイ! ファントム! 」

 

 「フィニッシュ! キーック!! 」

 

 ここで飛び込んできたのは"ねぱた"のライダー的な特撮フィギュア。

 

 自身の最大攻撃である、ハイ・ファントム・フィニッシュキックを放って来たのである。

 以外な所からの横槍に、やや呆れたエピファネエースはねぱたに対して言う。

 

 「正面から来るのか、良いだろう! 」

 「その攻撃スキルも回収するとしよう! 」

 

 エピファネエースのゼウスボディが大きくカウンターの構えを見せる。

 受け止めてからの直接的な霊糸による捕縛と干渉で、霊力スキルをコピーするようだ。

 今にも包み込もうとする大きな腕が、ねぱたの特撮フィギュアに向けて構えられる。

 

 ……が

 

 突撃してきたねぱたのフィニッシュキックは、ゼウスのボディに掠りもせず、地面を蹴る様に足を叩きつけたではないか!

 これにはエピファネエースも首を傾げて困惑する。

 

 「 ? 」

 

 しかしそれこそが……

 

 オペレーション"セイヴ・ザ・ワールド"の起動シークエンスだったのである!

 

 周囲が急に揺れ始める!

 

 「ぬう! まさか! この一撃は……わざと地面を攻撃して……! 」

 

 エピファネエースのゼウスボディが、ねぱたの一撃の意味を察する時には……

 大きく崩落した足元に足を取られ、崩れゆく床になす統べなく、大きな空洞を自由落下していったのである!

 

 「うおおおおおお! 」

 

 この地下帝国での巨体と言えど、実寸は人間大程度のサイズしかないゼウスのボディ。

 突如現れた人間が通れる程の真下への地下通路には落下せざる終えない。

 

 「好機! 」

 

 十傑集達が一同に飛ぶ。

 

 それぞれが霊体から糸になる程伸ばした手を、エピファネエースに縛り付け。

 ゼウスボディと共に自由落下。

 

 錆び付いた通気孔のような縦穴、その奈落の先へエピファネエースは落ちていく。

 

 「この地下帝国が昔の軍艦の入渠ドックって噂、ホンマやったんやな……」

 

 落下していくエピファネエースを見送るねぱた。

 そう……始めからこの作戦は練られていて、計画的にエピファネエースを追い詰めるポイントが用意されていたのである。

 

「行くぞ! 十傑集達よ! 霊糸を張れ! 」

 

 ……掛け声と共に十傑集達が霊糸を引き寄せる!

 それはエピファネエースを追い詰めるべきポイント……つまりそれは。

 

 " 空 中 で あ る "


******

 

 ……一方その頃。

 

 「ユナさん! 急ぐのです! 」

 

 地下帝国の隠し通路である排気口。

 この空間を高速で移動する物体があった。

 

 霊力を増設したプロペラタンクで高速機動を実現した、ハイマニューババックパックを背負う"元ヌイグルミ"のクマ……

 つまりユナである。

 彼女は背後に式神少女の紀伊(幼女札)を背負う形で乗せて、地下帝国の連絡通路を移動していた。

 

 「道がいりくんでるのに、紀伊ちゃんのアシストで迷わない! 」

 「カーナビ紀伊ちゃん凄いよおお!  一家に一台欲しいよおお! 」

 

 「誰がカーナビですか! ムキーッ! (ポコポコポコ)」

 

 カーナビ発言するユナのボディであるヌイグルミをボコボコと叩く紀伊。

 全くダメージにならない人畜無害なパンチであった。

 

 「こっちなのです! 」

 

 ユナをナビゲーションする紀伊。

 その位置は遥かに錆び付いた通気孔。

 そして窓の様に大きく側面が崩れ、穴が空いた通気孔の場所に止まる。

 

 「何ココ? 大きい縦穴? ……って、うわああ!! 」

 

 ユナはその巨大な縦穴をマジマジと見ていた……すると巨大な影が落下しているではないか。

 

 「何あれ! 落下しながら爆発してる! 」

 

 驚くユナに紀伊が何かを確認する、落下する物体が攻撃により側面の壁にバウンドするように衝撃を加えられては跳ね戻り、また一撃を加えられ壁にバウンドする。

 エピファネエースのゼウスボディは落下しながら十傑集のファイナルオペレーション攻撃により縦横無尽に壁に叩きつけられ崩壊寸前になっていた。

 

 「なんだとおおお! 」

 

 エピファネエースは驚きを隠せない。

 こんな玩具の軍団に完膚なきままに叩き飲まされて、自慢のボディも見る影も無い。

 

 そして遂に縦穴の底に落ちた頃には、手足も亀裂が入り崩壊が始まり。

 横たわる姿は余りにも敗北者。

 

 「グウウウウウ! 」

 

 しかし、まだ諦めていないのか、腕を突き出して何かを掴む様な仕草をしながら、威嚇するように十傑集を睨んでいた。

 

 「フィニッシュ! 今こそ我等十傑集、最大の技でトドメを刺す! 」

 

 ここで十傑集のリーダーが号令を出すと、カードデッキのバイクトイが輝くカードを掲げる!

 

 すると、十傑集がフワリとゆっくり降りて来ると同時に、空中に巨大な魔方陣が浮かび上がる!

 

 「これが世界を救うオペレーション! 」

 

 霊糸で編み上げられた空中の巨大な魔方陣、その周囲に十傑集が囲む様に構えると……

 

 十人分の熱い霊力が、ほとぼしる光の奔流(ビーム)となってエピファネエースのゼウスボディに解き放たれた!

 

 「十人集まればラスボスにとりあえず力を合わせてビームを発射、そんなベタな必殺技とかないわ~! 」

 

 これには思わずエピファネエースも突っ込む。

 そして意外なビームの破壊力にも驚いていた。

 

 「これは! 本来威力皆無であるはずの無属性霊力のビームが、強烈な圧力で我等のボディを破壊するほどにまで!? 」

 「う! うおおおおお! 」

 

 瞬く間にゼウスのボディに大きな穴が空き、大きく膝から崩れ落ちた。

 ここで十傑集のリーダーである、主役的なロボットプラモデルの亡霊が言う。

 

 「ファイナルオペレーション完了! 悪は滅んだ!! (ドーン) 」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る