第173話「異常」
本当に平成生まれか問いただしたくなるような、ユナの妄想はさておき。
紀伊はエピファネエースに問いかける、やはり何かを聞き出したいようでもある。
「天国のみならず死者の国ならココ以外に存在するです……ココが天国に近いとすればあちらは地獄に近いですが……」
「ほう……それは所謂、地霊と言うものかね? 大規模集合霊体、巨大霊体……この国の巨大霊体は国を名乗る傾向にあると聞いたぞ……」
紀伊が語る死者の国、つまりはザジ達が廃村で遭遇した「根の国」の事である。
それに対して反応してエピファネエースから語られる巨大霊体。
それはある事実が定義として語られ、今現在はその定義に当てはまらないと言う事を前提としての推論である。
「理解が良くて感謝しますのですよ、それらの事で我々は貴方が未来から来ているが故に聞きたいことがあるのです……」
「良いだろう……述べてみよ、紀伊とやら、きっと"期待通り"の返答が言えるぞ! 」
紀伊の問の前にエピファネエースは、その内容も予想が出来るようで、"いつでも来い"と言わんばかりに待ち構える。
一泊置いて紀伊が言う。
「ここに居る彼等、亡霊の存在は……」
「貴方達から見て、"異常"か否か……」
「エピファネエース、貴方の意見を聞きたい……」
その紀伊の問いに、辺りが静まり変える、ここに居る十傑集も、ねぱたも、ユナも。
エピファネエースに注目が集まる。
「答えよう……」
「「 異 常 で あ る と ! ! 」」
「………………!! 」
紀伊が狼狽える、いやその場にいた亡霊全員が狼狽えて居る。
だかしかし、亡霊達は思っていただろう、わかっていただろう、この答えを。
エピファネエースは続けて言う。
「亡霊の存在自体は記録で把握していた、いくつかの霊力スキルデーターベースを作成した者の脳内マッピングがあり、これ等霊力スキルが我々の求める部品であると確信したが……」
「亡霊の存在そのものをこうして確認して、余が思う意見は単純に異常であると言う事だ、"本来の亡霊の範疇"を超えている!! 」
エピファネエースは亡霊の事実を異常と語り、狼狽える周囲の状況に対して、負けずに紀伊は気構えてこう言った。
「つまりその異常の原因を知り、貴方は私にその情報を賭けて我々と戦争をすると言ったのです、つまりそれは……」
「"勝てば全ての情報を開示する"と言うことなのですか? 」
エピファネエースはここで大きく笑い、改めて語る。
「そうだ! 話が早くて良い! やる気が出てきた様だな! 紀伊よ、この国の帝よ! 戦争するのなら……」
「「 契 約 だ ! ! 」」
エピファネエースが"契約"と言う強い発言を紀伊に投げ掛ける!
周囲が沈黙する中、一歩前に踏み込んでいく存在が居た。
……ユナだ。
「待って……亡霊の範疇ってナニ!? 紀伊ちゃん、さっきから胸騒ぎが止まらない……私の知らない事が……多すぎるよ……」
ユナを見るエピファネエース、紀伊も何かを理解して居る面持ちでユナを見る。
エピファネエースがユナに語りかける。
「そうだな……生き霊の君は、亡霊の本来の姿を知らないと見た……本来亡霊は……」
そう言うエピファネエースに紀伊が手を向け、差し止める様に遮ると……
「私が言うのです……」
紀伊がユナに真剣な眼差しで重要な事を告げようと、振り返って改まる。
「良く聞くのです……」
「亡霊は今でこそ強く長く生き長らえています……ですが、本来亡霊というのは、例え奇跡であっても、玩具の体で形を補っても、霊力で満たしたとしても……」
「死後四十九日から意識の剥離が始まり、自然界の摂理に則り徐々に霊体が朽ちていき……」
「彼等で言う空気霊と同じ稀薄な存在になる運命を持つ霊体なのです」
紀伊から聞かされた真実、それは周囲に居る亡霊達も、なんとなく理解していた。
「ですが……今の亡霊を知っての通り、朽ちる所かますます強くなり、成仏と言う霊体の崩壊現象すら武器にする始末」
「私でも未来から来た彼でも異常だと認識出来るのです」
すると今度はエピファネエースが語りかけてきた。
「その異常で余がこの時代に降りてきた原因と見るなら、これは正にそなたら亡霊の運命と言えよう」
「そして余だけでなく、原因そのものと対峙したければ……余と戦争するが良い、見事勝利すればその原因との会合も叶うであろう」
「但し、負ければ……」
「「貴様も、この国も、民一人一人に至るまで全てを捧げ、余に従属するのだ!! 」」
ユナが困惑する、この戦争の契約は危険だと感覚で解る。
「紀伊ちゃん、契約は待って! 私の為にそこまで……!」
しかし紀伊はそれを遮る。
「いいえ……これはこの亡霊の国の帝としても私個人としても、絶対に譲れないモノなのです!」
「異常が亡霊だけと言いきれますか! これはもっと大きな……そう」
「 「 天国(霊力世界)そのものが、"異常を起こしている"事に相違無いのです!! 」 」
その言葉を聞き、エピファネエースはニヤリと笑っていた。
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