第165話「超時空警察爆誕」


 あまりの光景に二依子も驚きを欠かせない。

 見た事のない霊体投影ボディ。

 投影された顔以外は通常ボディとは違う別物で、流れる霊力はそんなに多くないものの、緻密な霊糸で編み込まれたスキンには驚くべき容量の霊糸回路が感じ取れる。

 

 「あなたは一体? 何処かでお会いしましたっけ? あれでもこんな金髪の知り合い居ないはず」

 

 ここにおいて"グレたアンキャナー"作戦は成功しているのである。

 

 (おおおヤトちゃん、見たまえ! ちゃんとバレて無いぞ! )

 

 追いついたヤトはちょっと不貞腐れた顔で以下にも「そんなの知るかバカ」みたいな面構えだ。

 

 「未来霊……今貴方そう言いましたよね」

 

 二依子は聞きたいことがあるらしく勇気を出してアンキャナーに話しかけてきたが。

 

 「うむ聞きたいことがあるのは山々だが、目の前のクハンダーくんは黙ってはくれないぞ! 」

 

 アンキャナーはその言葉に「落ち着いて」とジェスチャーして言う、クハンダーの前である以上、戦闘は免れない。

 クハンダーも想定以上の攻撃を受けて逃げ去ろうとしていた。

 

 「逃げるのか! 甘い! ヤトちゃん! やっておしまいなさい! 」

 

 「何でこう言う時にだけ私に頼るんですか! 」

 

 アンキャナーの指示で仕方なく、ヤトはディルムンのフィールドで拾ったライフルによる攻撃を開始。

 霊力で発射されたニードル弾がクハンダーに命中し、何やら砕ける音共にクハンダーの姿が崩れていった。

 

 「さっきまであんなに手強そうだったのに、ウイルスコードを入れただけで一気に弱体化してないですか?! 」

 

 驚くヤト、ちょっと拍子抜けのようだ。

 水銀質の表面が崩れ行くクハンダー、胴体の中央には本体である球状の調査装置が割れて中身がむき出しになっている。

 そして装置自体が機能を停止したのか、その場で砕けて砂になり……散っていった。

 

 「そうさヤトちゃん、コイツはあくまで"分体"の一つさ、時間を超えてやってくる為に身を裂いて時間の壁を抜けてきたのさ……」

 

 アンキャナーとヤトのやり取りに驚きを隠せない二依子。

 そしてクハンダーと言う障害が無くなったので、再びアンキャナーに話しかけた。

 

 「ナノテック霊糸回路……ウイルスコード……今の霊力技術じゃあ有り得ない、やはり貴方も未来から来たのですか? 」

 

 「……」

 

 アンキャナーはその質問に困った顔だ。

 二依子に気付かれない様な霊糸会話で、ヤトとやり取りをする。

 

 (どうしよう! ヤトちゃん! )

 (彼女に我々の事をどう言えば誤魔化せると思う? )

 

 ヤトはニヤリ顔で答える。

 

 (良いんじゃないですかねー!、貴女を霊体だけにして槍の先端に取り付けて、天国の壁にゴッツンコさせようとした教団達の技術的協力者って言ってやれば良いんですよー! )

 

 そう言われたアンキャナーは半泣き状態である。

 

 (いや待ってえええ! ヤトちゃん! こんなトコで無駄にヘイトを向けられたく無いよ! )

 (ぬぬぬ! こうなったらメチャ適切な事を言って誤魔化すしかない! )

 (もし未来から来た奴とバレた時に、現地住民が安心する事の出来る存在は……)

 ( そ う だ ! )

 

 アンキャナーは何か作戦を閃いたようだ。

 その様を見ているヤトは不思議な顔をしている。

 

 再び二依子の前に立つアンキャナー。

 二依子のボディであるゴツいプラモボディの肩に手を置き、何かを語り始める。

 

 「良く聞き給え! 日奈代二依子君! この時代は狙われている! 」

 「私はアンキャナー! この時代にやってきた未来犯罪霊を捕まえに来た……(ゴゴゴゴゴ)」

 「「 時 空 警 察 だ !! (ドーン) 」」

 

 (何か凄いこと言ってるー!)

 

 アンキャナーの暴走はヤトちゃんを大いに驚愕させた。

 やったねヤトちゃん、これすっごいクソ上司だよ。

 

 

 ******

 

 

 場面は代わり、ここは西軍の拠点。

 

 フィールドの一部が脱出不能となり、ボスとの交戦が必衰となったディルムンのバトルフィールド。

 

 「エラい早めの到着やな、プレイヤーにしては早過ぎるわ」

 

 このフィールドを守るボス亡霊を担当しているのは……ねぱたである。

 

 そして対するプレイヤーは明らかに何かが違う。

 姿はこのディルムンの配布プラモデルボディである「ウルトシリーズ」だ。

 ボディをクリエイトせずに参加した場合のみ使える汎用ボディ。

 特徴が無く動きやすい、そして改造プランも多数存在する。

 

 そんなウルトシリーズでは勝ち抜くには、戦闘技術はおろか装備も充実するさせる必要があり、霊力強化のリスポンは必須。

 見ている限りそのプレイヤーには装備が初期装備のライフルとナイフしかない。

 ねぱたの元に辿り着くには時間がかなり必要な筈である。

 

 「こないなバトルバランスで、簡単に到着するとかチート以外に何があるちゅうねん! 」

 「アンタがユナちゃんの言うてた未来霊なんやな! 」

 

 「ウルトシリーズ」に取り憑いた相手プレイヤーが反応して返答する。

 

 「成程、ご存知であるなら仕方ない」

 「「 私の名は"エピファネエース"! 終末の獣と結び付いた未来霊! 」」

 

 エピファネースがそう言うと、クハンダーの球体が現れ、背中に張り付くと……。

 

 「「 ハイ・ファントム! 」」

 

 「「 オーヴァー・ドライブ! 」」

 

 "盗み取ったフォッカーのスキル"を使い融合を果たす!

 

 「 ! 」

 

 ねぱたが驚愕する。

 そして同時に激しい敵意を向けてエピファネエースを睨みつける。

 

 「やっぱりあんた等……絶対に許さへんわ! 」

 

 纏う水銀はクハンダーと違い岩石の様に硬く、石像の様に成形され……

 ギリシャの石膏像がウルトシリーズと合わさった、ロボットと彫像との融合を思わせる形となる。

 そしてとても大きい姿となる正に動く彫像。

 

 「我は宣言する……今ここに、偶像たる(アイドル)ゼウスを建造する! 」

 

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