第164話「クハンダーも引き裂かれた! 」


 「うむ! ヤトちゃん! 信号弾だ! 誰かが我々を呼んでいる! 」

 

 離れた場所で信号弾を確認したのはアンキャナーとヤトだ、しかし……アンキャナーがここで何かを察知したのか足を止める。

 

 「いや待った。」

 

 「急にどうしました? アンキャナー」

 

 急に踏みとどまってるアンキャナーに、ヤトが困り果てた顔で聞く。

 するとアンキャナーは何やらボディの設定を変えているかのように、宙に設定画面を出してボディをイジり始めた。

 

 「この先に居る女性の声、何処かで聞いた声だ」

 「以前にシラが起こした計画の時に通信に混じってた女性の霊声の波長と一致している、きっとその彼女だろう」

 「シラは"天国の扉"に接触出来る位の高位霊力を持った人間の霊体を鍵にすると言う計画を立てていたが……失敗している」

 「使われた霊体の生け贄の彼女は、あれから生還出来ていたのだな……なら尚更このシラの姿で会わせるのは不味い」

 

 アンキャナーはそう言うと色々シラの姿をイジり初めた。

 ヤトは興味無さげな表情でアンキャナーに聞く。

 

 「信号弾に応答するんですか? どうするんです? 」

 

 そう言う内に状況が変化する。

 ……二依子達の声が聞こえ始めた。

 

 ……

 

 「二依子センパイ! コイツなんですか! 球体が人の形になって! 」

 「下がって菊名!! コイツ……プレイヤーじゃない!? 例の侵入者? 」

 「ユナちゃんが言ってたアレ?! 何だっけクハンダー……で合ってるよね」

 「ゲッ! コイツ強いよ! 菊名ちゃん! 合体しよう! ……うわっダメージが! 」

 

 ……

 

 突然のポゼ部のクハンダー遭遇(エンカウント)!

 二依子達東軍ではなく、敵対する西軍に紛れて行動していたのである。

 クハンダー発見にアンキャナーも動く。

 

 「応答しよう! 対策もバッチリさ! 」

 

 アンキャナーが入るシラ投影ボディは、急に容姿が金髪碧眼になった。

 (ヴィデャルシャスウウウン)

 いやあのコマーシャルは別に金髪ではなかったが。

 次いでに服も変更、マスクの付けてない特撮ヒーローの様なマッシブ全身タイツになり、元のシラとは似ても似つかなくなった。

 

 「ぎゃあああ! アンキャナーがグレた! 」

 

 金髪のシラを見たヤトちゃんの反応は、バブル時代のオカンである。

 

 ******

 

 二依子達ポゼ部の前には、ボディの球体に浮かぶ水銀を纏(まと)わせたクハンダーが現れる。

 ゆっくりと水銀がボディに纏わり付く様に形を整えると流線型の効いたロボットの様な姿を形成。

 二依子はその姿を見て言う。

 

 「ロボットアニメ何かでホラ、あるじゃない? 液体っぽい未知の敵が現れて、急に主人公達のロボットに擬態してさ……」

 「ちょうどあんな感じでツルツルの表面と、微妙に擬態しきれてなくて若干尖ってる姿……」

 「ちょっと自己主張が隠せない感じ……たまらなく好きなんだけど、ホントに相手にするとは思わなかったわ」

 

 二依子の周囲には破壊された美少女フィギュアのボディが転がる、菊名と愛華の使っていたボディだ。

 

 彼女達は合体で全力を出すも、クハンダーの持つ「バリア貫通」の攻撃を受けてあっさり戦闘不能となってしまった。

 いきなり二人が倒され一人になった二依子は、一気に追い詰められる形となり、クハンダーから射撃武器の銃口を正面に突きつけられている状態となったのである。

 

 「万事休すね……折角クハンダーに遭遇したのにリスポンするのは、ちょっと悔しいわ……」

 

 さしもの二依子も覚悟を決める、

 そしてクハンダーが攻撃しようと霊力を込め始めた……その時!

 

 「とおおおおお! アンキャナー! ジャアアアンプ! 」

 「ウウェエエエエイ! アンキャナー! キイイイイイイック! 」

 

 側面からキックで飛び込む変な姿のボディ、アンキャナーの憑依する「グレたシラ」ボディだ。

 

 「 !? 」

 

 突然の乱入者に驚く二依子。

 だが、クハンダーも予知していたかのように対応行動に出る。

 水銀の様な表面を変形させて盾を作りガードする!

 そしてすかさず盾をドリルの様な形状に変えて、再びアンキャナーを穿とうと伸ばして来たが……

 

 「…… !? 」

 

 水銀のドリルは形状が安定せずに、地面に落ちてしまった。

 

 「くくく……また会ったな未来霊! 残念だが同じ手は喰わんよ」

 「そのボディは液体金属とナノッテク霊糸回路の複合で形状を生成していると見た」

 

 慌てるクハンダー、何が起こったのか理解が追いついていない様子。

 

 アンキャナーは状況を続けて語る。

 

 「……よって霊糸回路をハッキングし、無力化させて回路そのものを自壊させる様にウイルスコードを送り込んだ」

 「その破壊された部分は機能しない」

 

 アンキャナーの前でクハンダーがよろめく、体の一部が溶ける様に崩れるのを確認する。

 

 「これはマズイぞ! 」

 

 そしてハッキングされた自壊が進むボディの一部を、切り離す事で被害を最小限に止めた。

 

 「アンキャナー! 貴様!……」

 

 冷静に見えたクハンダーだったが、アンキャナーの攻撃が予想以上に効果があり、逃走を考慮するまでに至った。

 アンキャナーはドヤ顔である。

 

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