第163話「超獣招集」


 ……

 

 「敗北……か」

 

 場所は衛星軌道上。

 ブラックナイト・サテライト内部。

 そこに佇む顔の無い霊体……アンキャナーはクハンダー強襲により地下帝国からサテライトに送り返され、憂鬱な気分で地上を見ていた。

 

 「彼らは私の存在を知り、かつ仲間と思い込み引き入れようとしたか……」

 「つまり私の存在を詳しくは解析出来てなかったのだな」

 

 そう言うとアンキャナーは何かの画面を空間に映し出す。

 それは発注画面で、新たにボディを作成する要望を書き込んでいるようだ。

 

 「よし……では」

 

 暗闇に機械音がするとまるで鏡の様な円形の装置が立ち上がり、何かを受信したかのように光り動き出す。

 鏡にも見えた装置は水銀の様な薄い液体で満たした浅い水槽であり、ゆっくり競り上がり何かが型どられていく……

 

 「招集……」

 

 水銀は女性を型取り、大きさはアンキャナーと同様の大きさ、つまり手のひらサイズの可動フィギュアになった。

 ゆっくりと回転し、地面らしき部分に降り立つと……

 角の目立つ巫女を思わせる衣装の美少女フィギュアに変わり、何かが取り憑いたように動き出し、跪(ひざまづ)く。

 

 「巨大霊体(アセンションビースト)龍型七号炉、分霊にて招集に応じ馳せ参じました」

 「このような姿を取らせるとは、アンキャナー……貴方は何をお考えですか? 」

 

 動き出した美少女フィギュアはアンキャナーに問いかける。

 アンキャナーとは別の霊体が、そのフィギュアをボディとして取り憑いたらしい。

 アンキャナーは問に答えた。

 

 「君を呼んで、このような形で分霊をボディに入れるのを許して欲しい」

 「数ある巨大霊体(アセンションビースト)達で即座応答が可能なのは、ヤト……君しか居ないんだ」

 

 ヤトと言われた美少女フィギュアに取り憑いた霊体、彼女の正体は"龍の巨大霊体"であり、本体から送信されてきた分霊である。

 彼女は語る。

 

 「そもそも他のアセンションビースト達は製造の時点で、任務以外のタスクは自由にしている訳ですから」

 「初期型でかつ理性改良を済ませた私以外は制御が効かないでしょう……鳥型もそうでしたし……」

 

 この鳥型というのは、ザジ達が倒した"鳥の巨大霊体"のことである。

 

 「で……再度聞きますが、一体何故こんな姿を私に取らせるのですかアンキャナー? 」

 

 「ああ実は……」

 

 ヤトは再び問いかけ、アンキャナーは地下帝国での一件を語る。

 お忍びで亡霊の国に遊びに行ったら、未来霊クハンダーにバチボコにされて皮肉を吐き捨てられた事。

 推しのアイドル(中身がザジ君だとは知らない)が出来た事。

 これらをアンキャナーは熱く語った。

 

 「へえー(興味なさげ)、もしかしてアンキャナー……貴方は暇ですか? 」

 「そもそも未来霊は居た所で、"貴方以前の時代"しか居ない訳ですから、アーカイブで出処が解りそうですけど……」

 

 アンキャナーはどうでも良さそうなヤトに対して、困った顔で答えた。

 

 「彼等の存在は理解している、将来戦争を吹っ掛けて滅ぼされるであろう人類から独立した人工知能(AI)の国家の残存勢力だ……」

 「この時代で再び息を吹き返そうと、時間を天下って来たと見える、ディルムンって言う地下帝国の祭典に参加するらしい! 」

 

 アンキャナーの話に対し、ヤトは顔に手を当て「アチャー」なリアクションを取って言う。

 

 「この時代カオス過ぎません? ってまさか……私を呼んだのは……」

 

 ヤトの嫌な予感は的中する……そうアンキャナーはグッと拳を掲げて叫んだ。

 

 「ヤトちゃーん!? ちょっと上司がこんな形でボコられて悔しくない? 一緒にディルムンで仕返しに行こうよー! 」

 

 「いやいや、アンタはそれじゃあデュエルで負けたらデュエルで返すチンピラじゃ無いですか! いいいい行きませんよおおおお行きませんからねええええ!!? 」

 

 ヤトは全力で拒否しようと激しく抗議。

 しかし……

 

 無常にも場面は再び地下帝国に変わると……

 ヤトとアンキャナー(再製造されたシラボディ)がディルムンの会場の一エリアに佇んでいた……

 

 隣で騒ぐアンキャナーが忙しく行動している。

 

 「ヤトちゃーん! そこのボックスの弾倉(アモ)取って、私の銃はその弾倉(アモ)じゃないと撃てないんだ」

 「あとアーマー付ける? 東軍の勢力縮小だって……! 急ごう移動だ! (ダッシュ)」

 

 アンキャナーの後を銃器を担いで、半泣きで追いかけてくるヤト。

 諦めようヤトちゃん! 君の上司はクソ上司だ!!

 

 「「 どうしてこうなったああああああ!! 」」

 

 

 ******

 

 場所は変わり同様にディルムンのとある一エリア。

 ここではゴツい見た目のロボットプラモデルに入っている二依子が居た。

 二依子が索敵しながら言う。

 

 「こっちはクリア、相手に近寄らないと味方か敵かも判別出来ないのよね……」

 

 追従する美少女フィギュア二体、ポゼ部の二人である。

 菊名は武器を持って言う。

 

 「やっぱニードルガンの弾倉(アモ)ってバレル式が良いですよ、カードリッジタイプだと弾数多くなるにつれ、デカ過ぎて取り回し悪くなる」

 

 プラモサイズで戦う以上、特に銃火器の仕様は勝敗に左右される。

 機構が複雑になればなるほど大型化する、しかしニードルを撃ち出すのは霊力であり火薬ではない。

 弾を銃身に沢山詰めてもこれらが射撃武器として成立し、その気になれば一気に打ち出せる仕様が魅力らしい。

 

 「ボウガンみたいな装填仕方がネックだけど、シンプルで撃ちやすいですよね」

 

 愛華も同様に弾倉を持って言う。

 ここで二依子が周囲を確認すると近くに居たプレイヤーを確認出来る距離まで詰めて行く。

 

 「パターン赤! 西軍よ!! お喋りはおしまい! 突撃するわ! 」

 「味方が解るように信号弾撃って! 」

 

 ちゃっかり遠方の味方にも知らせる行動を見せる。

 こちらでも逞しい二依子は確かに存在していた。

 

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