第162話「レストルーム襲撃事件」


 事の詳細は数十分前になる。

 

 霊力会社レストルーム前に人影があった。

 間もなくピンポーンとインターホンが鳴りカンチョウが呟く。

 

 「ねぱた君が忘れ物でもしたのかね?」

 

 時間はもうディルムン開始時刻に迫っている、ねぱたやザジ、よしこまでもがレストルームから出勤、引きこもり組とフォッカーしかいない状況である。

 そして亡霊の社会と言えどもプライバシーは守られており、人間社会と同じように外部からの接触は気を使うのが常識である。

 だが余りに紀伊がすんなり入ってきたのでカンチョウが設置を命じただけであるのだ。

 

 「おいおい、一体どちら様だよ」

 

 霊体投影ボディのフォッカーは暇を余していると言う訳で応対担当とされ、モニターに映る相手を確認する。

 

 「キャンパーから持ってきたから相手がよく映るぜ、って何だこのねーちゃん達は?」

 

 レストルームにはキャンパーから外して持ってきた監視カメラがあり、ザジ達亡霊のサイズので無いためちょっと目立つ大きさであった。

 

 「ご指名頂きました、カナでーす」

 「ユキでーす」

 

 フォッカーは困惑する、いくらなんでも呼んでもいないのにやってきたカウガールとか、海外ドラマや映画のフラグあるある。

 

 「君かねフォッカー君、この非常時にキャバ嬢とイチャイチャしたいとか不謹慎極まりない......」

 

 「いいいいいや!待ってくださいよ! いくらなんでもそんな事しませんって、呼んでもネーのに来たんスよ! 」

 

 動揺するフォッカー、慌ててモニターにかじり付き、追い返そうと応答する。

 同時にカンチョウはレストルームの防衛用霊糸回路を動かす。

 

 「念の為レストルームの防御機能を展開するぞ、ウォールバリア展開! 」

 

 ビル全体を包み込むタワー型円柱バリア、オリジナルボディが安置されているレストルームだからこそ出来る代物である。

 

 「ラマー君達はオリジナルボディの防衛の為に地下に降りてくれ、私とフォッカーでここは凌ぐ、ザジ君達にも連絡を! 」

 

 謎のカウガール二人は何やら踊りだす。

 ボディは以下にもカウガールらしい姿をしている。

 

 「???」

 

 カンチョウは困惑した、その動きは所謂セクシーダンス。

 カメラの前でアピールタイムが始まったかのような動きを見せる......

 それを見たカンチョウの感想は辛辣である

 

 (ダンスなんぞされても亡霊のボディに欲情するものだろうか?)

 

 フォッカーも感想を述べる。

 

 (地下帝国にそんなサービスあったか? いやまて......あのボディ異様に人間らしさの質感を出してない? あんなにぷるんぷるんだと......ねぱたに入って貰いたい良いボディだ......)

 

 モニターの前でフォッカーとカンチョウは様子を隈なく監視を続ける(フォッカーは釘付けだが)

 

 それは仇となった。

 

 カウガール達は玄関の壁越しに二人が居るのを確認。

 

 「スキルナンバー32、スキルナンバー6、確認しました」

 

 謎のカウガールは手元に映し出されたパネルを見ていた、スキルの回収率を人間の脳で表したモジュールのようである。

 そして直立の状態になると、二人揃ってカンチョウとフォッカーの居る壁越しに並び......

 

 

 カウガールは激しく爆発した......

 

 ......

 

 その破壊力たるは玄関に大穴を穿つ程の威力で、突如フォッカー達二人が爆発で吹き飛ばされると......

 

 お互いに霊体からボディだけが後方に吹き飛ばされる状態になり、恐怖の衝撃を与える。

 

 「 !! 」

 「なんだとおおお!! 」

 

 振り返るフォッカーとカンチョウ。

 背後には吹き飛んでボロボロになった互いのボディ。

 フォッカーは霊体投影ボディ、カンチョウはブロックトイの人形。

 双方が激しく破損した。

 

 「不味い! 」

 

 フォッカーがボディに戻ろうとした時、爆煙の中から何処からともなく飛び出した、霊糸の様なモノがフォッカーの霊体に直接絡み取り、スキルの情報を解析しコピーしていく......

 カンチョウも同様に霊糸に絡み取られてスキルをコピーされていた。

 

 「カンチョウ!! フォッカー!! 」

 

 レストルーム奥から出てきたラマーは、自身のオリジナルボディ(超合金ロボット)で飛び出し、二人を絡め取る霊糸を切る様に攻撃すると......

 爆発の起きた方向に射撃攻撃を行いながら二人の容態を確認する。

 

 「二人とも大丈夫か!! ......クソ!! こりゃ酷え!! 」

 

 慌ててカンチョウとフォッカーの霊体を捕まえ破損したボディに放り込み、レストルームの霊力漏れ防止シャッターを閉じた。

 

 「クソ......やられた」

 

 何を喋っても聞こえない位の霊体の薄さ。

 フォッカーは想像以上に霊体にダメージを受けている、カンチョウはフォッカーほどではないものの、重体である事には変わらない様子。

 

 「地下帝国に、霊体病院ってのがあったな......もうオリジナルボディに入れてるくらいじゃカンチョウはなんとかなってもフォッカーは厳しいぞ! 」

 

 二人を搬送する救急車両、地下帝国町中は騒然とした。

 

 ******

 

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