第161話「ディルムン開幕」
******
時間は流れ、ディルムン当日。
ザジ達の拠点会社、霊力売買企業有限会社レストルームでは全員が集合していた。
「じゃあ......みんな所定の仕事場へ向かってくれ、我々は見事な迄に引きこもりになろう」
カンチョウがそう言うと、引きこもり組が新たに結成される、運営プログラムを監視するラマー、パーツ制作(主にザジ)のドクに加え。
新たにカンチョウとフォッカーが引きこもり組に加入した。
「よしこは参加出来るのに何で俺は駄目なの? 本当に俺のスキルってすごいんだなあ......クスン」
フォッカーは霊体投影ボディのまま、レストルームの隅っこで震えて縮こまっている。
「ユナが言ってた未来霊を倒せたら解放されるから、フォッカーはしばらくそうしてくれよ......不貞腐れてるのはわかるけどさ」
ザジが慰めの言葉をかける、だが胸中は別にあった。
(前に会ったアンキャナーって奴の事、まだ皆に話せて無い......女装の事もあるけど......)
(ここ最近は未来霊の騒ぎで皆目一杯で、とても話せなかった......終わったら話さなきゃ)
......そうザジは考えてしばらく忘れる事にする。
「さて行かなきゃな、現地での準備と打ち合わせがあって先に行くよ」
ステージに行く準備もあるので、ザジは先だって会場に急いだ。
「せやな、はよいってき」
「我々の事は気にせず楽しみたまえ」
「......クスン」
「新ボディの事は任せておけ」
「僕も溢れる投資欲を押さえてプログラムに精進するよ」
「いってらっしゃい、私も紀伊ちゃんとの用事があるから」
ねぱた、カンチョウ、フォッカー、ドク、ラマー、ユナ、メンバー各々の送り迎えを受け、ザジはレストルームを後にした。
******
会場ではリハーサルの準備で慌ただしい、ザジはそそくさと二依子が作ったアイドルボディに憑き変え、会場入りを果す。
「全く、どうしてこうなったんだか......」
......事は三日前になる。
ザジ達のイベントディルムンで、巷で流行のポゼッションアイドルチューバーが参加するライブが決定したのだが。
憑依アプリでのライブである以上、容易に荒らし行為が可能ではないかという意見があり。
アイドル事務所はディルムンの運営と協議し、比較的侵入の少ない、ザジのいる隠しエリアをステージとして起用したのである。
ザジはその際の護衛としてエリア防衛とアイドル護衛を兼ねて、バックダンサーをしつつ監視をするはずだったが......
「あなたいい動きしているわ、パッションを感じる! 」
変なオカマ声の亡霊プロデューサーにスカウトされ、気が付けばセンターで歌って踊り......
専用曲(#♪ お願い! オーヴァード・エッジ! )まで用意される始末。
完全に後には引けない状態となり......
そしてディルムン当日、つまり現在に至る。
「ザジさん! この完璧なアイドルボディ、素晴らしいわー」
亡霊のオカマプロデューサーはボディの精度の良さに感心しているようだ。
ザジはプロデューサーに聞く。
「男の俺がこんな事してていいのかなあ......」
「大丈夫よーヴァーチャルヴァーチャル言っとけばなんとかなるわ! 霊体も衣装に近付けとけば問題ないわ、バレないバレない! 」
まさかの霊体チラ見え対策、仕方なく付き合うザジ。
そんな時に面会をしに来たプレイヤーが現れる。
「ザジくーん! 」
手を振りながら内股乙女走りのゴツい装備のロボットプラモの憑依プレイヤー。
二依子の面会である。
中身が二依子なのに、二依子のガチプレイに合わせた強化型量産機の最終形態仕様。
なんちゃらMSVとかに居そうな外伝辺りで活躍してましたみたいな実験機をベースにしたボディだ。
思わずザジも感想を口にする。
「二依子のボディ......ゴツすぎない? 」
「えへへ、久しぶりに自分のボディ作ったら......試してみたい事が一杯思い付いちゃって......」
ザジはボディをジロジロ見て呆れて言う。
「それで......"全部"乗っけちゃったと......」
「(イグザクトリー! )その通りでございます! 」
そう言う二依子は悪びれる事もなく紳士の挨拶。
そしてザジのボディを舐める様に見回して言う。
「どう? そのボディ? 完璧に踊れる様にデザインを考え付くしたの! 特にお尻のラインとかお尻のラインとか! 」
暴走する二依子に後ろから引っ張る美少女フィギュアが姿を表せる。
ポゼ部の菊名である。
「ストーップストーップ! あーいけませんお客様、アイドルにはノータッチでお願いします」
「ぴえーん」
菊名は暴走二依子を回収に来たのである。
二依子のボディの首根っこを掴んで引っ張る。
「またねーザジ君」
「またポゼ部で会いましょ」
慌ただしい二依子を連れて菊名はプレイヤーの初期位置に帰っていった。
「......俺も準備しなきゃ......」
中身の霊体も同じアイドルの格好をしているとわかったら、二依子はどんな反応するのか想像したくないザジであった。
******
それから数時間後、ディルムンの開会式が始まった直後に、事件が起こる。
「畜生......なんて事だ! 」
爆発するレストルーム......
項垂れるカンチョウとフォッカーのボディ。
ボロボロのフォッカーが言う。
「やられた、スキルを解析されちまった......」
......そう、クハンダーによる、レストルーム襲撃が行われたのである!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます