第160話「クハンダーは引き裂いた」


 その言葉はクハンダーの"何か"に触れたのか......

 

 アンキャナーの周囲に集合体のように球体の探査装置が集まる。

 クハンダーは球体人形でアンキャナーに対話するように対峙する。

 

 「人間を取り戻す? 驚きました、私達の同類である貴方からそんな言葉が出てくるのは意外です」

 

 アンキャナーはクハンダーの言葉に反応する。

 それは"同類(未来霊)"と言う言葉だ。

 

 「確かに同類だろうな、"目的以外"は同類だろう、だが私はそう......目的が違う......」

 

 アンキャナーは記録映像を、どういう原理か映画の様に背後に転写して語る。

 地球の映像をバックにアンキャナーは語る。

 

 「この先10年未満で≪大崩壊≫が起こる......それはこれから先に起こる人類の試練......」

 「成層圏から宇宙に大気が放出され、地球環境が激変する、生き残りをかけた人類は細々と地下シェルターに移住する」

 

 映像は変わりファントムドローンが、人類の居住区に襲いかかる様子が映し出される。

 

 「君達の国は数十年後に、≪大崩壊≫の後で地上に自らの行き場を失いシェルターに隠れ、打ちのめされる人類に更なる追撃を行うのだ! 」

 「これは人類に更に奥の地下に引きこもるまでに追い込む結果となる......だがしかし」

 

 アンキャナーは映像を切り替え、ザジ達亡霊の姿を写し出す。

 

 「人類は、逃げ込んだ地下で"亡霊達の遺産"を手に入れるんだ......"霊体が安寧の暮らし"をしていた亡霊の国の跡地を見つけ、調べ上げるのさ......」

 

 アンキャナーは姿をまた"のっぺらぼう"に変える。

 

 「結果的に肉体を冷凍保存して、このような姿を模して映すネズミ程度の小さな"有機人形アバターボディ"を作り出して......」

 

 アンキャナーはこの国の中枢を指すと、高らかに語る。

 

 「霊体のまま飛び出し憑依し、肉体(オリジナルボディ)は眠りに付き、数千年の長きに渡る"小さな繁栄"を始めるのだ......」

 

 「......っ !! 」

 

 クハンダーは舌打ちの様な音を出す、すると突然大きな衝撃音が鳴り響く!

 

 「ふむ......」

 

 アンキャナーはその音の発生源をクハンダーが出した音と判別。

 クハンダーは球体の探査装置を繋ぎ合わせ、拳を作り地面を殴り付けたのである。

 

 ......まるで" そんなことは知っている! "と言うように......

 

 「もういい! 私達が確認したいのは貴方が"人類に仇なす者"かどうかだ、同類というのはそういう意図が有るかも含める......」

 「質問だ、答えろ! アンキャナー!! 」

 

 「ほう......」

 

 アンキャナーは再びシラの姿を写し出す、そしてゆっくり笑いながら言う。

 

 「ああ! 仇なしているさ! 少なくともこの"今の人類に対して"は! 」

 

 「私の居た時代には最終的に......"人間"も"霊力世界(霊界)"も朽ち果てたのだ! 」

 

 「人類はクローニングで取り戻せるとして......」

 

 「「私の世界に霊力世界(霊界)を取り戻す為に千年早くこの地球(異世界地球)に飛び入り、それらを回収する準備していたのだ!! 」」

 

 「「 例え結果的に、それがこの世界の≪大崩壊≫に繋がろうともな!! 」」

 

 アンキャナーは自信の目的を遂に語る。

 これは彼が人類に仇なす確たる決意であり、そして自信の世界の救済への第一歩なのである。

 

 「......」

 

 それを聞いたクハンダーは停止している。

 

 「むっ......? 」

 

 アンキャナーはその様子を見ると首を傾げて反応する。

 こちらの意図は語ったはずである。

 クハンダーの球体人形はグラリと揺れると、目らしき部分が睨み付ける様に怪しく光った。

 

 「交渉決裂だ! アンキャナー! 私達は貴方とは手を取り合えない! 」

 

 怒りを見せるクハンダー。

 とてもそうは見えない姿なのに禍々しい。

 アンキャナーは困った顔を写し出す。

 

 「仲間に引き入れる交渉だったのか......参ったね、私はその気は無いんだが、ちょっとフラれるのはシラに続いて二度目になるから、嬉しくないな......」

 

 アンキャナーがコミカルに両手を使って「やれやれ」を表現すると......

 

 そのシラの姿の胸部には......

 金属のドリルの先端が捩じ込まれた!

 クハンダーから飛び出した一部がドリルを形取り、アンキャナーの霊体投影ボディを突き刺したのである。

 

 「興ざめだ! ガッカリだよアンキャナー!! 目の前から居なくなれ! 」

 

 「酷い言われようだな、むむ? おかしいな防御のバリア位張ってたはずなのだが......あれっ? (ボディが削られるドリル音) 」

 

 アンキャナーはやれやれジェスチャーのまま、防御も出来ずにねじ込まれるドリルに驚く。

 

 そして子供の様な怒りを見せるクハンダーは、アンキャナーを指し貫き!

 更に大きな剪定鋏(せんていばさみ)の様な腕を形取り、アンキャナーの胴を押さえ込む!

 

 「......これ駄目だ、防御バリアが無効化されてる、オモチャボディがこんなん防御出来ないわ......あっ」

 

 そうこうしている内にアンキャナーのボディは上半身と下半身が生き別れ、なす統べなく崩れ落ちた。

 

 「霊力漏れが激しいね、まあこんな拾ったボディじゃあ仕方ないか、大人しくサテライトに戻ろう......」

 

 アンキャナーの霊力反応がサテライトに戻ったのかその場から消える。

 やられても動じないアンキャナーを見たクハンダーは、残ったボディを踏みつけて叫んだ。

 

 「気が変わった......亡霊のスキルの解析が終わったら、こんな......ちっぽけな国......」

 

 「「 滅ぼしてやる!! 」」

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