第166話「聖地にファッキュー」


 エピファネエースはそのアイドル(偶像)ゼウスの彫像の様なボディを最大限に生かした物理攻撃、つまりは重量感溢れる巨体を振り回した「叩きつけ」を行うと。

 ねぱたをボディごと粉砕しかねない重い一撃を見舞う。

 

 「 死ねええエイ!! 」

 

 廃墟を思わせるフィールドが砂塵に見舞われ、ビルの残骸の様なジオラマベースが激しく崩れ、真っ二つになった。

 しかしそこからねぱたの特撮フィギュアボディが飛び出すと、エピファネエースのゼウスボディの横っ腹に、剣による一撃を見舞う。

 

 「ファントムスマッシュや! 」

 

 ねぱたの新たに新調した特撮フィギュアはアーマー装備タイプで、ダイキャストで出来た装備が"ウリ"である、金属の重みを最大限に活かした霊力による衝撃増加攻撃を主軸とする。

 だがしかし……

 

 「厄介やな、カンチョウのスキルも持っとるんかいな」

 

 ねぱたのファントムスマッシュが、まるで中和されたかの如く威力を消される。

 カンチョウのスキル「ハイファントムフォートレス」による防御効果だ。

 

 「その通りだ、このスキルは先程の技との組み合わせてこのボディを形成するに必須な為に組み込んだのだ、お前に勝ち目は無いぞ」

 

 エピファネエースが語る通り、ねぱたの攻撃では簡単には抜けそうにない様子。

 

 「そのボディの防御スキルだけやないな……さっきのクハンダーってのが何処かしら霊力を送ってるやろ? リレー供給って奴やな、地下帝国のアチコチから汲み取ってアンタに流れる様に仕込んでるんやろ」

 

 「……! 」

 

 一瞬でからくりを見抜けられたのか、エピファネエースは動揺を表す。

 

 「貴女は歴戦の亡霊のようだ、素晴らしい! 生前に会いたかったよ……だがいずれにせよ、十倍はくだらない霊力格差は埋まらん! 」

 

 「せやな! せやかてウチもこのままみすみす負ける訳ないやろ! 十倍やったら十人連れてくるわ! 卑怯やとか言うなや! 」

 

 ねぱたはそう言うと剣のパーツを銃に変形させて構える!

 

 「ハイ・ファントム! G殺す! サイクロン! 」

 

 ここで解き放った技は以前にゴキブリを狩る為に使った技だ。

 だが相手はゴキブリではない。

 よって一時的に土埃を舞い上げて、周囲の視界を遮った!

 あくまで時間稼ぎとしての煙幕を焚いたのである。

 

 「それで隠れたつもりか? 霊力で位置がバレるぞ! 」

 

 エピファネエースは岩の様な拳を振り上げ、真っ直ぐねぱたの気配に向けて殴り込む!

 その先に衝突した手応えを感じ取り。

 ねぱたの撃破を確認しようとしたが、そこに居たのは……

 

 「ムッ! 」

 

 ねぱたの特撮ヒーローのフィギュアボディではなく、戦隊ヒーローの合体ロボットトイ!

 そしてその戦隊ロボットは拳をバリアで受け止めたのか無傷で立っていた。

 

 「これは……?」

 

 エピファネエースが驚く、バリアを貫通するはずのクハンダーの能力の影響を感じないのか、無傷の戦隊ロボットの背後から、ねぱたとは違う女性の亡霊が現れ挑発する!

 

 「ねぱたちゃんに指一本触れさせん

、この戦隊ロボット亡霊のユウコが来たからにはな! 特撮仲間舐めんな! 」

 

 エピファネエースはその出で立ちを見て関心する、そして再び拳を構えて言う。

 

 「一人増えた所で何も変わらん! 我々の邪魔をするなら共々消えるがいい! 」

 

 ねぱたはそこで問いかける。

 悪党に目的を聞くにはいいタイミングだ。

 

 「一つ聞くわ……そんなアンタ等の目的は何や! スキルを集めてどうするちゅうねん! 」

 

 「フム、どうするも何も……我々はこの時代での基盤を揃える為に行動しているに過ぎない!」

 

 挑発的な問いかけに乗ってきたのかクハンダーも饒舌である。

 

 「未来より来たりし我々がこの時代では活動するには、技術が追い付いていない時代での電子機器では事足りない」

 「よって霊糸回路での補完を求める為に、原初である亡霊のスキルを解析するのだ」

 「補完が完了次第我々は、人類に宣戦布告を行う、我々の戦争を起こすのだ」

 

 「そして遠きユダヤの地に知らしめよ……」

 「"エピファネス"は帰ってきたと……」

 

 それを聞いて、ねぱたは神妙な顔で言う。

 

 「何かアンタ、未来から来たっちゅう割にはエライ古い亡霊みたいやな……」

 

 ここで戦隊ロボット亡霊のユウコが、博識を披露して語る。

 

 「ねぱたちゃん、コイツはマイナーな古代シリアの王様の"アンティオコス四世エピマネス"なんじゃね? 」

 

 「誰やソレ!? 」

 

 ねぱたがボディの後ろで首を傾げて聞き返す。

 

 「ユダヤ教の聖地にゼウスの祭壇作った……超絶暴君」

 

 「うわ……そっち方面にメチャ喧嘩売ってるやん、なんで過去の暴君が未来からやってくんねん……」

 

 そのツッコミにエピファネエースは凄い正直な返答をし始める。

 

 「我は死後の世界、天国の魂を焚べる炉の底に残っていた灰……」

 「つまり、本来はずっと囲炉裏の底で眠って居るはずであったが、ある時に開放された」

 「開放されたからにはユダヤの地に舞い戻る、再びゼウスをエルサレムに立てて奴等に啖呵を切ってやるのだ」

 

 「やめろやめろ!! アカンアカン! メチャ宗教戦争しに行く気やんコイツ! 」

 

 ねぱたのツッコミが、演技の余裕のないガチなツッコミになっていた。

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