第150話「そして確信へと繋がる」


 「母札は予言を与えて彼等を外に放つ様に言ったのですよ、本来なら 即! 物理的に成仏 させるべき相手なのに......(般若の顔)」

 

 「ヒェッ......」

 

 ユナが紀伊の怒りの顔にビビって声が漏れる。

 教団達は以前に地下帝国にスパイとして潜入していたのである。

 やはりソコは紀伊も解せない部分だろう。

 紀伊は語りを続ける。

 

 「結果的に教団も壊滅したと言う事で、ヨシとしましょうが......」

 「彼等の技術は若干行きすぎていて、技術提供を引き換えに解放したとは言え、良からぬ事が起きないか心配なのです」

 

 「あー、あの生前の姿を投影するボディとか色々有りそう......」

 

 紀伊の教団亡霊達の技術に警鐘を促す意見にユナも同感を示している、フォッカーの様な良からぬ輩(笑)を思い出した。

 

 「亡霊が生前の未練を果たすと言うのが結婚だったら、もしあのボディを手に入れ結婚等としてみなさい......」

 「残された者の未練が溜まるだけなのですよ、同時に成仏するならまだしも片割れのみとか迷惑千万なのです」

 

 「だから高級品に指定してるんだね、街で売ってる所を見かけたけど凄い値段だった」

 

 教団の技術に対し警戒を語る紀伊を、ユナは褒め称えたい気分であるが......

 

 「雑談はこれくらいにして、そろそろ仕事があるのです、ユナは今日は帰って良いのです」

 「また三日経って新月になったら、こちらから呼び出すのです」

 

 紀伊は帰宅を促してきた、今日はもう札の事を調べても何も出ないので、ユナは一時帰宅となったのである。

 

 「うん......ありがとう紀伊ちゃん、また三日後によろしく」

 

 「よろしくなのです」

 

 こうしてユナは宮殿を後にして、ディルムンの準備で忙しいキャンパーの面子の元へと去った。

 

 ******

 

 「三日か、亡霊は寝ないし自分もこの状態は眠くなったりしないんだけど、暇だなー」

 

 それはユナは宮殿からの帰り道。

 迎えに来てくれたよしこリムジンに乗り込んだユナは、内部で揺られると、ぐったり倒れ込んで困り果てていた。

 

 「困り事ですかワン? 」

 

 よしこがユナの退屈そうな姿を見て聞く。

 

 「困り事だよおお、札から抜け出せない以上、プレイヤーとしてのディルムン参加が出来ないんだもん、闘技場みたいな仮想ボディ同士ならともかく......」

 「実体ボディで戦うのは変だよね、闘技場システムなら私も参加出来るから、いっそ全部街ごと霊力で満たしてしまわないかなって......」

 

 ユナの言う事は理解出来る、そう言う顔で聞くよしこ。

 だが彼女(犬)は何か知っている様で、ユナにこう言い聞かせた。

 

 「霊力は資源です無駄に出来ません、ディルムンも人間が参加して霊力を使う、これが意味を持つんでしょう......ワン」

 

 「意味ですか? ただのばか騒ぎじゃなくて? 」

 

 ユナはその言葉を聞くと、意味について問う。

 よしこは語る。

 

 「人間が霊力を使ったら、純粋な霊力の"残り香"が残るのですから、このディルムンというサービスも鼻っからその残り香の霊力の回収が目的やもしれません......ワン」

 

 ユナはハッっと気が付く。

 

 「つまり......後百回位開催出来たら、オール霊化での開催も夢じゃないと......? 」

 

 「その通りだと思います、元々地下帝国は根っから霊力不足で悩まされる場所です、過去には暴動もあり」

 「他国の侵略もありと問題も多く、私もご主人もそれが嫌気が刺して出ていった訳ですワン」

 

 よしこの話では随分殺伐としていた情勢を過去に持つという、この地下帝国。

 だが今はそうでもないのか、よしこは以下にも「過去の事」と言うように語る。

 

 「奇(く)しくもディルムンのような奇祭が、人間を呼び込む事によりようやくこの地が安住の地に近づいたという訳ですワン」

 

 「安住の地......」

 

 そう言うと天国を想定する、教団達の天国を想定した技術が地下帝国で華開くとは、ユナ達にとって感慨深いものであった。

 ふとユナは未来の情景を思い出して語る。

 

 「未来の世界......人が住めなくなった地球で、人間が肉体を眠らせて、この地下帝国の様な小さな霊体だけのコロニーで過ごしていたあの記憶......」

 

 「ご主人が見たという、"ヤバい未来の光景"ですね、伺ってますワン」

 

 ユナの札が見せた未来の情景は、よしこもフォッカーから聞かされたらしく知っていた。

 

 「未来を見るというのは予言なんでしょうね、でもその札から予言が出てくるなんて、驚きですワン」

 「私達、動物同士の野生のカンみたいなモノなのでしょうかワン? 」

 

 「危機察知だったら直前までわからないよ、でも予言なんだもん、しかもだいぶ未来で四十年位は先の光景......」

 

 しかしユナに疑問が残る、先の光景にしては"行きすぎる"......

 つまり結果だけを見せられた事になるわけだ。

 よしこはユナに、あの戦いの彼等教団の目的地を思い出して語る。

 

 「やはりあの時に教団達が言っていた、なんとか言うサテライトがヤバいのでしょうか? 」

 

 「うーん、だとすれば何がどうヤバいんだろう、予言を授けた奴に聞かないとわからない......ってアレ? 」

 

 よしこと会話中に、急にユナが何か気が付いたかのように思い詰め始めた。

 

 「そうよ! 考えたら......そうじゃない? 」

 「四十年先、世界がああなってるとして、私......まだ生きているんじゃないかって思うんだけど! 」

 

 ユナは予言について、ある程度考えが纏まりつつあった。

 それは預言者、そして札。

 

 作ったのは誰か......

 

 本当は無かった札が、改変されたかのように別の札に擦り代わり。

 結果、札に吸い寄せられた形で「霊体の世界」を体験する。

 こんな事に関与出来る人間が居るとすればただ一人。

 

 ユナは急に、よしこがびっくりして、リムジンがギャワンと跳び跳ねる位叫んだ!

 

 「「 全 部 私 (未来)  の せ い だ !! 」」

 

 「あはははは!! ......って笑い事じゃなあああい!! これは三日後に紀伊ちゃんのママに聞き出そう! 可能性として十分だよ!! 」

 

 ユナが出した答え、これは後に確信へと変わる。

 だがそれはまだ、彼女が知る全ての一端でしかなかった。

 

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