第149話「箱の追憶」
「何?! 何がどうなってんの?! 」
ユナは紀伊の表情で困惑する。
しばらく後々、紀伊は急に術式を取り止める為に準備を始めた。
「いいのですか? ユナさん......よく聞くのです」
「はい......」
紀伊が改まって何かを伝えようと話しかけてきた。
ユナは神妙な面持ちで聞く。
「3日待つのです」
「はいいいいいいいい!? 」
「一体なんでなんですかああああ?! 」
紀伊の返答に真っ直ぐツッコミを入れるユナ、一体何を見たのか興味が湧いて仕方ない。
紀伊は語る。
「その札はある "箱" に入っていたと思うのです、今その箱を作った者の念の影が出てきて、詳細が語られたのです......」
「はい......古い箱に入ったと思います、記憶が曖昧であんまりパッとしないんですが......」
ユナも出来る限りの記憶を辿る、確かに箱に入っていてヌイグルミに詰め替える前に、黒服に追われて箱を開けて札を取り出したと言う記憶があった。
紀伊は箱の念の伝えた言葉について語る。
「 "箱" は貴方の一族が念を込めて作ったモノなのです......その念とは」
「札が未来に使われ役立つ様に、長期保存の霊力を込められているのですが......」
紀伊は心苦しい顔で言う。
「戦時中に中の札そのものが......貴方のひいおじいちゃんに "売られて無くなった" のです!! 」
「「 なんですってええええええええ!!! 」」
ワナワナと震えるユナ。
今まで一体、家族は何の為にこれを守って来たのか、と思う気持ちが沸き上がる。
だがやはり、それと同時に......
「え......」
「じゃあ、この札はなんなの!? 」
「知らない札が入れ替わって入っていたの?!」
ユナは困惑する。
紀伊は念から聞いた、中身の後の事を話始めた。
箱が語る詳細はこうだ......
******
時は十年位前に遡る。
幼女のユナがおじいちゃんの膝の上で神棚の箱を指差していた。
「おじいちゃん! この箱何ー? (幼い頃のユナの声)」
「ええかユナちゃん、この箱にはな......ご先祖様が大事に大事にしておった式神の御札が入っておるんじゃぞおお(ユナのおじいちゃんの声)」
箱の念はそのやり取りを見て思う。
(ああ! ついにこの時が来てしまったのですね、残念だけど中身はもう......)
一族の守って来たモノは、とっくに無くなっているという悲しい事実、きっとおじいちゃんは目玉と入れ歯を飛ばしてビックリするに違いない。
箱の念はそう思いながら、開けるおじいちゃんの様子を哀れんでいた。
「ほおれ! (箱を開けて)これが先祖代々伝わる御札じゃあああ!! 」
「すごーい! これホンモノー? (キャッキャと喜ぶ幼女ユナ)」
箱の念はその様子に固まって居る。
そして......
「「 嘘おおおおおおお!? なんで札があるのおおお!? 」」
箱の念は目玉を飛び出して、ぶったまげたのである。
*******
紀伊は改まって箱の念の声を代弁し、ユナに伝えた。
「箱の念の話では、おじいちゃんが手品でダミーを忍ばせたなら札から、霊力が出ているのはおかしいとの事なのです」
ユナは驚愕の事実で口があんぐりとして固まっているが、なんとか釈明するかのように、疑問を投げ掛ける。
「おじいちゃんが買い戻して忍ばせたのでは? 」
「お気の毒かもしれないのですが、買い戻しが行われたとすると同じ札が入っているはずなのです......つまり......」
紀伊が箱の念を代弁して解答する、それ即(すなわ)ち。
「全く......別の札......」
ユナは真っ青になって愕然とした。
「なんでそんな謎の札が私をヌイグルミに憑依させたり、未来の情景を見せたりするの! 」
混乱するユナに紀伊は一つの提案をする。
「これは本当に母札(ははふだ)案件なのです、この紀伊の母体である母札には予言や予知などが占える占星術を行えるのです」
「マジですか! 今すぐこのモヤモヤした気分をはっきりさせて欲しいよ! 」
ユナは激しく懇願する、母札であろうがママ札であろうが、ユナの札に払拭した異様な気分が嬉しくない。
得体の知れなさがユナを不安にさせる。
紀伊は母札について語る。
「母札は定期的に眠っていて、目を覚ますのは新月までかかるのです、だから"3日"なのです」
「はいいいいい! また遠退いた、札の正体はよ! このままだと私は起きたら腹筋がシックスパックになるんです! 」
本体の状態の関係で嘆き喚くのユナは、紀伊の語る最後の希望"母札"に全ての可能性を賭ける事が必然となった。
「母札の占星術なら、その謎の札の正体がはっきりするはずなのですよ、以前に侵入した変な教団の亡霊に母札が語る予言をくれてやった様に貴女の事も、きっと何か伝えてくれるはずなのです」
「教団......? 」
ユナはその言葉に引っ掛かるモノを感じると、紀伊に詳細を聞く。
「教団......って天国教団って名前でしょうかね? 」
「知り合いなのですか? 母札が突然予言を与えて欲しいとか言い出したので、苦労して捕まえてまでして予言を与えてやったのですよ、伝えた私には内容が"ちんぷんかんぷん"なのですが......」
紀伊は天国教団、つまり久遠坂シラ達に予言を与えた張本人である、母札の言葉を代弁して伝えただけでどんな意味を持っているのかは知らない様子。
ユナは教団が起こした事件を知っている限りで、紀伊に語り始めた。
「ええと......彼らは......」
ユナは語る、ポゼッションバトルの大会中に起こった舟(鳥)の巨大霊体の乱入事件。
そして天国を目指す教団達。
そして彼等の顛末。
天国の扉と言われた場所での戦い。
紀伊はその話を聞き漏らさずに聞き、虚偽の疑いもなく理解する。
「まさかそんな事が......母札の言っていた霊力世界の扉、彼等は本当にたどり着いたのですね」
紀伊は考え込んだ表情で、シラ達の事を思い出していた。
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