第133話「激突! 方舟VS方舟 後編② 」


 トンネル内部は蒼白い炎が、うねりながら広がっていた。

 しかしその炎を掻い潜り、やってくる大きな物体の影が鳥の巨大霊体に迫り来る!

 

 「突っ込めえええええええ!! 」

 

 遠隔操縦ルームで、ユナとよしこが疑似的に用意された、小さな操縦席のアクセルを踏み込む!

 鳥の巨大霊体に向けて、天井部分が崩壊し大きく裂けたキャンパーが、死力を尽くして特攻してきたのである!

 

 「「 ファイナルキャンパーアタック!  吶喊(とっかん)!! 」」

 

 ユナが霊糸回路のセットを行う!

 体当たりの為に再びバリアが前方に形成され、蒼白い炎を引き裂く!

 

 ......そして崩壊したキャンパーの天井に、鳥の巨大霊体の嘴(くちばし)が掠めると......

 

 その胴体にキャンパーが飛び込む様に突っ込んだのだ!

 そう......

 

 遂にキャンパーの突撃が、鳥の巨大霊体に突き刺さったのである!

 

 「ギエエエエエエエエエ!! 」

 

 鳥の巨大霊体の悲鳴が轟く!

 

 小さくなったとは言え、鳥の巨大霊体の巨体は健在で。

 懐でキャンパーを受け止める位の大きさがあるが、元々は飛行するために特化した霊体であり。

 体内に機械を取り込んでいる以上、骨格が軽量である事に変わり無く。

 大きな崩壊の音を立てながら、キャンパーの勢いに引き摺られ、押し出されて行く!

 

 「コイツ! 霊力の属性が"マンイーター"だぞ! 」

 

 相手の防御を突破する突撃の感触を察したのか、オリジナルボディからフォッカーが声を上げた!

 

 「マンイーターの属性のまま我々を先ほどのビームで倒して、その後に陰陽師達と戦う想定だと思われる! だが......」

 「残念だったな! 」

 

 カンチョウが煽り文句を決めると、ユナ達に指示を出す。

 

 「ユナ君! そのままフルアクセルだ! トンネル外まで押し出せ! 」

 

 「「 ラジャー!! 」」

 

 ユナ達がアクセルを踏み込む、キャンパーのタイヤが激しく回る!

 エンジンが激しく回転数を上げ、鳥の巨大霊体を押し出そうと路面に轍(わだち)を作り、摩擦で煙を上げて加速する。

 

 「どっせえええええ!! 」

 

 ユナの怒鳴り声。

 軋みを上げた二つの金属の塊は、悪夢を彩るトンネルの幻影を打ち破り、光の見える外へと飛び出した!

 

 ******

 

 「姉上! あれを!! 」

 

 トンネルの先、高速道路のジャンクションで迎撃を準備していた陰陽師の残党達が居る。

 双眼鏡でトンネルを見ていた頭目が、トンネルから押し出された鳥の巨大霊体を確認した。

 

 「奴の様子はどうだ? 放射線は出しているか? 」

 

 陰陽師の当主安倍みちかが、部下に問いかける。

 

 「限定的ではありますが、放射線が奴の周囲二十メートル前後まで確認されてます、いまだに式神以外では近寄れないかと......」

 

 部下の返答を聞くと頭目が「えっ? 」って驚いた顔で、安倍みちか(姉上)を見ていた。

 

 「それで姉上達みんな、式神だけで攻撃しておったのか......クワバラ......クワバラ」

 

 怯えている頭目を見て微笑む安倍みちか、再び双眼鏡でトンネルの出口付近を確認していた......

 

 ******

 

 トンネルの出口ではキャンパーに押し出された鳥の巨大霊体が、引き摺られながら悶える!

 バキバキと音を立てて、羽根が飛び散る様に取り込んだ機械のパーツが散乱する。

 

 「奴の霊体からデロデロと部品が出てるぞ! 相当効いてるな! 」

 

 オリジナルボディの中からドクが言うと、そのままカンチョウがユナに指示を出した。

 

 「ユナ君、奴を路肩に擦り付けるんだ! 我々はバリアで何とかなる! 」

 

 「はい! 行きます! 」

 

 ユナは指示を受けて、ハンドルを高速道路の路肩の壁に向けて切る。

 

 「ギイイ! ギイイイイイイ! 」

 

 単なる強い霊体なら「物体透過」で抜けられよう、だが相手は機械を含んだ鳥の巨大霊体。

 バキバキと音を立てて、崩壊が加速すると......

 

 シラたちの方舟だった部分や、プラズマの発射に使っていったパーツやらが散乱し......

 その姿もみるみる小さくなっていった......

 

 「砕けろおおお!! 」

 

 壁に押し付けるハンドルを切るユナ。

 

 「引き裂けえええ!! 」

 

 キャンパークルーも押し込むバリアに全力を込める!

 

 キャンパークルー全員の、激しい壁際の攻防が続く。

 

 ......そして。

 

 翼を広げれば十五メートルはあった鳥の巨大霊体は、引き摺られた崩壊の影響で半分以下まで縮んでしまい......

 

 舟の「竜骨」の様な部分が露出した、みすぼらしい姿に成り果てたのである!

 

 「ギギャアアア!! 」

 

 ここでキャンパーの捕縛から縮んで身軽になった、鳥の巨大霊体が放電を開始!

 

 「ブレーキだ! ユナ君! 」

 

 カンチョウが突如停止を指示!

 ブレーキで突き出された鳥の巨大霊体は、壁に叩きつけられ。

 ヨロヨロとボロボロの翼を立てて、アンバランスな頭を起こし、キャンパーを睨み付けた。

 

 「クアアアアア!! クアアアアアア!! 」

 

 けたたましく鳥の巨大霊体の威嚇の声が鳴り響く!

 

 威嚇された相手。

 つまりボロボロのキャンパーはその眼前に静止。

 中から六体の亡霊の姿が現れる。

 

 その姿はオリジナルボディのまま......

 

 各々、プラモデルや特撮トイ、ブロックトイ等といった......

 「夢の有るもの」に取り憑いた亡霊達が......

 

 今、鳥の巨大霊体の前に全員集合し......

 決着を付けようと現れたのである!!

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