第134話「点より面を」


 「皆良いか! こんな事を言って何だがね、正直もう策なんて物は立ててないんだよ! 」

 「各々方、好き勝手戦ってくれ! 何としても奴を倒すんだ! 」

 

 ブロックトイのロボットアーマーに、カンチョウのオリジナルボディであるブロックトイ人形が乗り込みながら言う。

 

 「大丈夫や、こんなこともあろうかとオリジナルボディの改修頼んどいて正解やった! 」

「任しとき! 」

 

 ねぱたが応答する。

 彼女の特撮フィギュアのオリジナルボディはドクの改修によって可動の制限解除や間接の強化も成されていた。

 

 「よしこ! 一時的に融合するぞ、俺のオリジナルボディはお前のサポート無しじゃ走れない! 」

 

 「ワオオン! (了解! )」

 

 フォッカーの憑依するオリジナルボディ、狼型ロボットトイによしこも入り込む。

 人間では獣の真似事は難しいのである、完全に融合し切るまでの時間がフォッカーのオリジナルボディの稼働時間である。

 

 「格納庫から何とか出れた......一回り大きいんだから出るの大変だぜ......でもこれでどうやって戦えと? 」

 

 パルドのオリジナルボディの調査ロボットが出てくる。

 全てのパーツを合わせると古いデスクトップPC位(モニター含む)大きいので、足となるキャタピラの走行パーツのみの出撃である。

 

 「大丈夫だ! 十分に僕の土台に最適だよパルド君」

 「僕のボディはあんまりいじってないから動きにくいんだ、取って付けた射撃武器だけが頼りでね」

 

 「ギゴゴゴ(変形)俺も頼む、足の裏がボコボコになるのは嫌なんだ......」

 

 パルドの上にラマーのオリジナルボディの超合金トイ(パイロット付き)と、ドクのオリジナルボディの変形ロボットアメトイが乗り込む。

 

 「お前ら引きこもり組はチャッカリしてるなあ......、スピード出ないし攻撃されても知らんぞ」

 

 パルドの愚痴がこぼれる、一方前方の鳥の巨大霊体は、ヒョロヒョロのまま攻撃をしようと放電を始めた。

 

 「まだ口のプラズマ発生機が壊れてないぞ! 例の発電機みたいなのはどれだ! 」

 

 キャンパーから現れるボロボロのロボットプラモデルのボディ。

 憑依しているザジは、鳥の巨大霊体の損壊状態に注目していた。

 

 「ザジ! あれだ! 胴体にある丸っこいのが発電機だ! 強いプラズマの放射線が出てる!」

 

 ガイガーカウンターの反応を見たパルドが指摘、クルーが注目する。

 鳥の巨大霊体は現在、小さな舟の竜骨の胴体が剥き出しになっているのだが、心臓部分に丸い球状のスチームパンクを思わせる機械パーツがあったのだ。

 

 「なんか丸い機械に太いコードが生えてるで、電柱に付いてる筒みたいな部品もあるな......」

 

 ねぱたが敵の詳細を言うと鳥の巨大霊体が反応し、嘴(くちばし)を開きプラズマを放射!

 

 「全員回避! 」

 

 轟くカンチョウの号令。

 プラズマ攻撃は勢いがかなり落ちたが収束させるために霊糸を放出し、プラズマを伝わらせて鞭の様に振り回している!

 

 「ユナ君! キャンパーを後退させろ、バリアがいつ破れてもおかしくない! 」

 

 「はい! 」

 

 ユナがキャンパーをバックさせて、鳥の巨大霊体から距離を取る。

 プラズマ鞭は、まるで水を流した暴れるホースの様に不規則に動き周り、キャンパークルーを恐怖させた。

 彼等は驚きながらも散り散りに動き周り、標的を拡散させ回避行動を行う。

 

 「だれでも良い! ねぱたの言う筒状の部品、電柱に付いてるアレ、それが変圧器だ! 」

 「伸びてるコードを切るか、機械そのものを破壊しろ! 」

 

 ここでラマーによる弱点の看破、急所を見破られた鳥の巨大霊体は以下にも、その通りなのか......声をあげて威嚇してくる。

 

 「クエエエエクエエエエエエ!! 」

 

 それはザジ達亡霊に「やってみろ! ガラクタの亡霊共! 」と言い放つ様にも感じ取れる......そう

 挑発である。

 

 それに対し亡霊達全員が吠える!

 

 「うおおおおおおおお! 」

 

 霊力を振り絞った全力攻撃を行おうと吠える! 

 カンチョウやラマー達が射撃武器でニードルを飛ばす、霊力の物理透過により変圧器の外観に穴が開き、ダメージを確認出来る。

 ......だが効果は薄い。

 

 「駄目だ! インパクト不足だ、ダメージが通っても点でしかない! 面でのダメージが必要だ! 」

 「懐に入って全力攻撃だ、ねぱた君かザジ君! 頼めるか?! 」

 

 カンチョウが指示を飛ばす。

 だが鳥の巨大霊体の抵抗も、一段と激しさを増す。

 

 「往生際悪いで! 」

 

 ねぱたの特撮フィギュアから繰り出されるパンチ技、強烈(ファントム)な一撃(スマッシュ)

 威力により、鳥の巨大霊体の左足が崩れる。

 

 「オラァ! こっちの足もだ! 」

 

 続いてフォッカーの狼型ロボットが右足に食らいつき、噛み千切る(ファントム)様な(バイト)斬撃(ファング)。

 

 「ギフィギギギギ!! 」

 

 膝まづく様に崩れる鳥の巨大霊体、嘴(くちばし)を下げてプラズマの鞭をしならせようと首を振るう......が。

 

 「させないよ......! 」

 

 喉元に、ザジの過剰(オーヴァード)な刃(エッジ)が突き刺さる!

 プラズマの鞭は首を押さえ付けられた事が原因で、振り切れずにのたうち回る。

 

 「「今だ !! 懐に飛び込め! 」」

 

 ザジ、ねぱた、フォッカーが鳥の巨大霊体の懐への、活路を見出だす。

 その視線の先に居た者に、飛び込む様に促したのだ!

 

 ......そう。

 視線の先に居たのは。

 

 

 ......カンチョウである。

 

 「って......ちょっと! 待ちたまえ! 指揮官が突撃するとか本末転倒なんだが!! 」

 

 困惑するカンチョウ、だがその一瞬の隙が決着への近道であると確信せざる終えない。

 今のこの隙に突けなければ、次には有り得ない、相手は逃げる選択もあり、こちらも消耗を考えるなら今しかない状況なのだ。

 

 「「 行けええええええ!! 」」

 

 カンチョウの背後から向かってくるキャタピラ音......

 パルドのオリジナルボディのキャタピラパーツである。

 そしてそのままカンチョウのブロックトイのバトルメックスーツを押し込み、鳥の巨大霊体の懐に突っ込み運び込む。

 

 「俺達の攻撃力は正直、点でしかないが......」

 「数揃えば、点もまた面になる! 」

 

 懐に押し込むパルドのキャタピラパーツの上で、ラマーが語る。

 そしてオリジナルボディの変型を終えたドクも、ファントムネイルガンを構えて吠える。

 

 「カンチョウ! 全力攻撃だ! 行くぞ! 」

 

 パルドのキャタピラは鳥の巨大霊体の顎をくぐり抜け、変圧器の真ん前にカンチョウ達を送り届ける。

 

 「やっちめえ! 俺は何にも出来ないがやっちめえ! 」

 

 パルドの掛け声と共に、キャタピラの上からカンチョウとラマー、ドクが攻撃を仕掛ける。

 

 「fire! fire! 」

 

 ラマーの超合金トイの砲台が、霊力で物理透過ニードル弾を発射! 

 カンチョウドクもそれぞれがニードルや釘を放ち、変圧器の表面を霊力で強度を無視して蜂の巣の様に穴だらけにしていく!

 

 カンチョウはブロックトイのメックスーツの腕に、二本のブレードを展開させて霊力を収束。

 「ファントム式霊断ブレード! 」

 

 アーク溶断のようなパーツが、変圧器の表面を大きく切り裂くと......

 内部の鉄心が見える!

 

 「これは古い電柱か何かの変圧器と見た! 食らえ! 」

 

 内部を見たドクがネイルガンを撃ち込むと......

 すると放電現象が発生する!

 

 「鉄心に亀裂が入った! 絶縁油も漏れだしてる! 」

 

 「「 任務完了だ!! 総員撤退!! 」」

 

 カンチョウが撤退命令、一目散にクルー全員が散る!

 カンチョウもパルドのキャタピラーに捕まり、ドクやラマーと同様に全力で逃走する。

 

 すると......

 

 バチバチと音が鳴る!

 

 「「「 グルギャアアアアアアア!! 」」」

 

 変圧器が火を吹き出す!

 

 球状の電源からの電力は、機能しなくなった変圧器を破壊し。

 そのまま爆発四散すると、周囲に熱波が飛び散る。

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