第129話「対空電磁決戦! 」
「全砲塔稼働開始! 」
キャンパー迎撃システムの霊力を伴うニードルやプラスチック弾、ボウガン等の弾幕が周囲を彩る。
「対空砲撃は任しとき! ポンポン落としたるわ! 」
叫ぶ砲撃担当のねぱたをサポートする為、霊糸回路とAIが作動し。
キャンパーの屋根下の工廠では、キャンパーの溜め込んだ霊力で産み出された精霊である工廠霊(こうしょうれい)が、弾丸等の補給を行う。
「敵の数......多数! ちょっと多すぎいいいい!! 」
周囲を霊力探知レーダーで監視するユナが驚く、周囲に集まるドローンファントム群、その数三十体以上!
いずれも胴だけのチグハグの人体模型に、携帯等の電子機器やドローンのモーターを付けて飛ぶ、サイボーグ遊撃亡霊だ。
とてもすばしっこく、迎撃するねぱたも苦戦を強いられている。
弾幕も当たりが悪く、一体二体落とせてもキリがない。
「ちょっと......さっきからキャンパーの周囲に飛行型がずっと張り付いて離れてへんのやけど、キャンパーの速度出してる? 」
このねぱたの何気ない質問は、カンチョウに有ることを気付かせた。
「これはまたアレか......あの結界なのかね! 」
結界......以前に廃村の巨大霊体が見せた捕縛を目的とした能力、だが今回はそう呼ぶには禍々しい、オンボロトンネルの幻影が見えていた。
「ひいいい、周囲の景色がホラー映画みたいになってる! 」
ユナ言うの幻影の感想のそのまま......トンネル内部は正に異世界、鳥の巨大霊体が放出した霊力がトンネル内部を侵食。
ものの数分で抜けるトンネルは、出口の見えぬ果てしない長距離トンネルに代わっていた。
「うおお! 以前の廃村の巨大霊体は草原だったが......気味が悪い! 」
カンチョウがビビりながらも、対応策を講じる。
GPSを便りに敵との距離を模索する。
するとラマーが速度と距離感の違いに気付く。
「前回の草原と同じだよ、トンネルの幻覚と実際の走行距離が違う、僕達は霊力の風に押されて進んでいないだけだ」
「......ただ......」
ラマーの言葉に締めに、カンチョウが問いかける。
「ただ? 何かね、言ってみたまえ......」
ラマーの答えに急に注目が集まる。
上で砲撃しているねぱたや、補助に入っているザジも気になっていた。
ラマーが高らかに答えた!
「風に煽られてるだけだから...... バ ッ ク が 出 来 る !! 」
その言葉にポカーンとしていたカンチョウだが、ハッと気が付いて運転者のパルドに指示を出した!
「「 パルド君! バーック! 」」
「イエッサー! カンチョウ!! 」
キャンパーが急停止、そして急にバックで逆走する。
「おわああ! ちょっと急にバックとか何考えとんねん! 」
キャンパー屋根で迎撃中のねぱたのヤジを他所に、ザジとスナイプキャノンを控えていた犬霊よしこが前方に注目した。
「ワオオオオン!ワン! (前方敵飛行型、整列してます! )」
そう、さっきまでキャンパーの四方を囲んでいたドローンファントム達が、バックに引き寄せられ整列して追いかけてきたのである。
「うおおお! ここは俺の出番だ! 」
砲塔の一つをアンテナの様なパーツに換装し、ドクが変形ロボットアメトイのボディで、キャンパー天井に上がってきた。
「ギゴゴゴゴ(声で変形音)さあ食らえプラクズ共! 今すぐスクラップにしてやるぞ! 」
口の悪い司令官の様な台詞を吐きながら、砲塔の代わりに換装した新装備「霊力EMPスプラッシュキャノン」を展開する。
ガンマ線から発生した"小さい波"でしかない電磁波を霊力によって増幅、更に標的に確実に当てられる様に収束し、球状の霊糸雷球として射出。
着弾と同時にスプラッシュ、つまり拡散爆発するものだ。
この強い電磁波は携帯電話程度の電磁波防御も余裕で突破、サージ電流を発生させてショートさせる。
「キャンパー霊力フィールド拡大! 」
「EMPスプラッシュキャノン発射!! 」
球状に収束された電磁波は「見えない爆弾」となってドローンファントム群に襲い掛かる!
先頭の一体に着弾......大きく拡散した電磁波は、ドローンファントムの電子回路を完全に破壊した。
「前方飛行型、七体落下! 十体余りが飛行状態のまま行動停止、他十体余り機動力健在! 」
ユナの着弾報告、これに対しザジが動く。
おもむろにアンテナに剣を掲げる。
「剣に電磁波を収束させて......EMPスラッーシュ! 」
ザジはその言葉通り、霊力で剣に周り付かせた収束電磁波を斬撃の波動の如く発射!
オーヴァドエッジの様な霊力による、特殊な増幅技術が成せる技である。
「ちょっとザジ! 何て面白い事やってんの! ウチもやる! EMPスラッシュー!」
ねぱたも特撮フィギュアの剣に霊力で電磁波を周り付かせ、同じ様に斬撃を飛ばす!
この二人の霊力は十分に電磁波の収束を維持しつつ、斬撃の形状で遠方に飛ばす技として昇華していた。
「ぎゃああ! その技こっち向けんなよ! やられたら俺達泣くぞ! 」
フォッカーが叫ぶ、パルド同様に電子機器組の彼もまた。
......格納庫の隅っこでガタガタ震えていた。
「そんなおっかないモノを、水遊びみたいにポンポン飛ばすんじゃねえ! 」
飛び交う見えない電磁波は、正に回避しようもなく、機動力が健在だったファントムドローン達を行動不能にしていく。
「ワオオオン! (砲塔一斉攻撃! )」
よしこのスナイプキャノンと連動するAI砲塔が機能不全で動きの止まったドローンファントムを撃墜していく......
ユナの監視報告が通達。
「敵の飛行型亡霊、全機撃墜確認! やりました! 」
キャンパーから全員の勝利の喜びの声聞こえる。
パルドやフォッカーもホッとしたようだ。
その様子を見るカンチョウは一言こう言い放つ。
「小細工しようが"マンイーター"では人間を倒せても我々亡霊は倒せんよ......天敵だからね」
それを聞いたユナが、ふと相互関係を模索する、三竦みの様な単純な相性理論だ。
「亡霊が人に負けて、人がマンイーターに負けて、マンイーターは亡霊に負ける」
「相手が防御出来なかったのはそう言うことですかカンチョウ? 」
カンチョウはユナの疑問に答える。
「特攻は七割程だと言われている、彼らの霊力による防御バリアは我々にとって紙同然なのだよ」
そう呟いていたカンチョウ達に、鳥の巨大霊体の攻撃による衝撃が走り、キャンパーが大きく揺らいだ。
「 !! 」
「前方百メートル先に敵巨大霊体発見! 霊力による物理弾幕で牽制してきます! 」
ユナの補助を行っている二依子から、アナウンスが聞こえた。
鳥の巨大霊体の攻撃は単純で、砂利や硝子片を固めて飛ばしてきた様である。
そして本命であろう収束プラズマ攻撃を行おうと、大きな口の中が光輝いていた。
「キャンパー全霊力使用承認! 風避けを張りつつ......これより本艦は全力突撃を開始する、全員内部に入り持ち場に付け!! 」
「イエッサー!! 」
カンチョウの指示の元、遂にキャンパーと鳥の巨大霊体との距離が縮まる!
互いの攻撃の射程は、もう目の前まで来ていた!
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