第128話「前哨戦! 」
キャンパー前方に影あり。
「 !! 」
ユナが前方にドローンファントムの斥候を確認する。
強襲と偵察を兼ねた攻撃型だ。
「先行してくる飛行亡霊を確認、相手は二体だけ、こちらの様子を確認する為でしょうか? 」
ユナの敵発見に、すかさずカンチョウが行動の指示を飛ばす。
「一体だけで良い、ザジ君......格闘戦で攻撃し無力化してボディを回収して欲しい」
「了解、ねぱた姉さんはもう片方の相手は頼んだよ......すぐに先行する! 」
ザジがねぱたに背中を預ける、斥候二体に強襲する為に飛行土台用ドローンの上に乗る。
霊力で電源操作し、迎撃するためにキャンパー前方に出撃する。
「敵亡霊を確認! 攻撃を開始! 」
ザジの空中戦が繰り広げられる、斥候のドローンファントムは先ほどに陰陽師達を襲った歪なドローン人形で。
ザジ同様にファントムニードルやファントムスラッシュで攻撃する強襲型の様だ。
「......」
相手は物言わぬ亡霊である様子、だがザジの姿に反応してニードルによる射撃攻撃を開始。
対するザジも躊躇なく攻撃を回避し、上空を陣取って土台ドローンから飛び、素早く一撃を見舞う。
「たあああ! 」
いつもの大剣ではガールプラモデルの手首に負担がかかる為、専用の片手剣を振りかぶるザジ。
呆気なく袈裟斬りのファントムスラッシュが相手のボディにヒットし、ファントムドローンの胴はズルリと分断される。
「今の格好はちょっと変だけど、この二依子の改良ボディ、動きやすくて使いやすいよ、ビックリだ」
ファントムブースターを吹かし再び土台ドローンに着地したザジは、切り裂いたファイルドローンのボディの一部を掴む。
「妙にあっさり倒せたな、本当に亡霊か? 」
そして腕を切り払って霊力を霧散、かつ無力化するとキャンパーに戻る様に反転する......が。
「 !! 」
道路周辺に陰陽師の負傷者が倒れ、医療関係者が治療に当たっている光景が見える。
「何で亡霊に攻撃されて大怪我してるんだ!? ......まさかコイツらって」
ザジの驚きの様子に続き、場面は変わる。
そう......一方キャンパーの方では、ねぱたが対空砲撃でドローンファントムの斥候と戦っていた。
「どりゃああ!! そりゃあああ!! でいやああああ!! 墜ちんかーい!! 」
鬱憤を晴らすかのようなメチャクチャな射撃で、ドローンファントムを迎撃するねぱた。
だが以外にも精度は良く、追い詰めて落とす射撃技術を披露。
ユナは過去のトリガーハッピーなねぱたを思い出して、ふと疑問に思う。
(何でコックピットをバイクにするだけで射撃精度が上がるのか、特撮脳だから? )
その考える通りにドローンファントムは絶対的な着弾の後、落下。
道路に落ち、完全に砕け散った。
「あっけなー! 何や弱いやん......風避けを拡大してニードル発射しなくても良かったんとちゃう? 」
前方に風避けのバリアを長距離で張り、射程を伸ばす射撃技。
ねぱたの様な熟練の亡霊ならではの技であり。
その気になれば弾丸がスポンジの弾でも、鉄板にめり込ませる強度無視の霊力が込められていた。
「ザジ君の帰還を待とう、もしかすると、奴らの正体が解るかもしれん」
カンチョウはドローンファントムに、何か心当たりがあるようだ。
......そしてザジが帰還する。
「みんな、もう少しでそばを通るから道端に注目して......」
ザジは帰還と共に神妙な顔つきを見せている......そして指摘通りキャンパー一同は、道端で沢山居る陰陽師達の負傷者を見ることとなった。
「酷い......」
モニターしているユナと二依子が、口を手で覆って絶句している。
「こんなに怪我人が出ているなんて......」
ユナの声の後......
鳥の巨大霊体を追いかけるキャンパーの亡霊一同が、真剣な表情を見せる。
カンチョウがザジに問いかける。
「ザジ君......奴らのボディは回収出来たかね? 」
「ああ、胴体を回収したよ、残念ながら動かしていた霊体は霧散している」
ザジが持ち寄ったドローンファントムの残骸、それに残る霊力を確認したカンチョウを始め、キャンパー古参亡霊一同が確信する。
「間違いない......"マンイーター"ボディだ!! 」
「......何です? それ? 」
カンチョウが放つ聞きなれない答えに、ユナが問いかける。
カンチョウは語る。
「亡霊がボディに入る時の、霊力の形状は解放型と分霊型に別れる」
「解放型がノーマルボディ、分霊型がマトリョーシカボディと名付けられた......名付け親は五月人形の老人亡霊だったが」
「それら以外の霊力の形状は正に悪霊を思わせるモノが多く、本来亡霊がほとんど出来ない対人霊力を形状とする全てのボディタイプが......」
「"マンイーター"だ......! 」
その説明には力が込められていた、ひっそりと余生を過ごす亡霊は人とは関わりの無いモノ達。
カンチョウはその意志を反転させた忌むべき存在に、打倒の意識を表した。
「霊力を変質させて人に危害を加える等と、亡霊の風上にも置けぬ"最低野郎"! 」
「陰陽師に打ち倒されるのを嫌い"魔性"に堕ちる等と、決して許されぬ行為だ! 」
その言葉を知ったか否か、前方に走っていた巨大霊体の様子に変化があった。
ユナの代わりにモニターを監視していた二依子が言う。
「......敵の鳥の巨大霊体、前方のトンネル内部にて停止、霊力を放出し......迎撃体制! 」
奇しくもザジ達を敵勢勢力と認識したのか、ドローンファントムを全機発信させてトンネルでの決戦を望む形である。
カンチョウはザジに聞く。
「ザジ君......そのドローンファントムのボディの残骸に、電子機器は付いてるかね? 」
「付いてるも何もこれは教団亡霊のボディの一部を使って造られてる、半端に電子機器で制御されてて、霊力で動くロボットみたいな奴じゃないか? 」
ザジの見解は亡霊にしては動きが機械的で気持ち悪いとのこと。
「やな奴だな、俺のなりそこないみたいで気持ち悪い」
同じく電子基盤がオリジナルボディのパルドが語る。
話を聞いていたドクやラマーも会話に参加してきた。
「マンイーターは亡霊間でも絶対駆逐対象として、ネットワーク上のコミュニティで指名手配されている、それに......」
ラマーの言葉に続く様にドクも語る。
「電子機器で制御されてるんなら、新型迎撃装備も御披露目出来るかもな」
アンテナの様な機器が砲塔に付けられ、甲板に競り上がってきた。
ドクが意気揚々に語る。
「霊力増幅型EMPの出番だぜ! 」
前方に見えるトンネルはドローンファントムが飛び交い、巨大霊体がザジ達を迎え撃つ準備の出来た......"魔境"となっていた。
「本艦はトンネル内部に突入する、総員迎撃準備! 」
敵勢霊力で充満するトンネルで、ザジ達の前に大量のドローンファントムの群れが襲い掛かる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます