第127話「斯くして走る方舟は会合する」


 ******

 

 明石海峡大橋の防衛圏は崩壊状態、依然として鳥の巨大霊体は沢山のドローンファントムを引き連れて這いずる様に移動を開始する。

 再び体内にドローンファントムを整備回収し、地上の鳥とは思えない様な移動力を見せた。

 

 「奴が移動を開始するぞ、各自次のジャンクションに後退、奴は高速から進行して都心部まで行くつもりだ! 迎撃の為に私もそちらに向かう! 」

 

 陰陽師安倍家、当主安倍みちかが再び無線連絡を行う。

 

 「グオオオオオン! 」

 

 鳥の巨大霊体は始祖鳥のような爪の生えた翼を前に下ろす、その姿は鳥が進化する前の爬虫類にも似ていて、蜥蜴の様な走行方法を始めた。

 

 「いかん! あやつはワシらを無視してここから突っ走るつもりじゃ!」

 

 安倍みちかの妹である芦屋家の頭目、芦屋みちよが叫ぶ。

 頭目の指摘の通りその鳥の巨大霊体は黒服達の車よりも先に行こうと猛スピードで走り始めた!

 

 「ヤバいぞ急げ! このままだとジャンクションに先回りされる! 」

 

 安倍みちかの指揮の元、頭目と黒服達が追跡を開始しようと車に乗り込んだ......その時!

 

 「 !! 」

 

 報告にあった「キャンピングカー」が目の前を通りすぎたのだ!

 

 「これは......」

 

 通りすぎたキャンピングカーに、目を丸くする安倍みちか。

 そして何かを確信したのか頭目に問いかける。

 

 「みちよちゃん......まさか、あれが......? 」

 

 「ああ! 間違いないのじゃ! アレはあの小僧共の根城の車! 」

 

 「「 亡霊達の方舟(キャンパー)じゃ!! 」」

 

 頭目が声を上げて言う。

 そこに現れたのは、ザジ達の母船(キャンパー)である"希望の方舟号"だ!

 

 

 

 キャンパー内部では、巡るましく物資の移動が活発になっていた。

 

 「こちらのドク、自動射撃砲塔の準備完了、霊糸回路を回してくれ! ......よし! 連動を確認! 」

 

 キャンパーの天井下で攻撃武器の最終チェックをする亡霊ドク。

 アメトイ変形ロボットボディの彼は、このキャンパーの工場長で物体担当のメカニックだ。

 

 「こちらラマー、霊糸回路と電子回路の連動をこちらでも確認、プログラムも正常だ」

 

 キャンパーの下部サーバールームで、乗り込み人形の付いた超合金合体ロボットのボディの亡霊が応答する、プログラム担当のラマーだ。

 

 「ワオオオン! (此方はよしこ)」

 「ワオオオンワン! (スナイプキャノンの固定出来ました)」

 

 キャンパー天井では犬霊よしこが、狼型ロボットプラモデルで装備したキャノン砲を足元に固定する。

 

 「こちらフォッカー、いつでも飛べるぜ! 」

 

 格納庫からフォッカーが、出撃を今か今かと攻撃ヘリの大型ラジコンで待っていた。

 

 「こちらは作戦室、オペレーターユナ、フォッカーさんの出撃はまだ先です! 」

 

 作戦室ではユナのクマのヌイグルミボディが、ヘッドフォンを付けてフォッカーのツッコミ対応に当たっていた。

 

 「亡霊扱い悪いわー、待遇改善して欲しいんやけど......ってウチの配置ドコなん? 」「......砲撃担当? マジで、鬱憤晴らしたるわ」

 

 ねぱたが回収して間もなく戦闘に参加する。

 新たな特撮フィギュアボディで、バイクコックピットの砲塔に跨がる。

 

 「こちらザジ、天井デッキでの配置に付いた......このボディで良いんだろうか? 」

 

 天井のデッキにはザジが配置される、主に強襲してくるだろうと思われる遊撃部隊を迎え撃つ為だ。

 だがいつもは騎士ロボット型のプラモデルなのだが......

 

 「二依子は何でこのボディに、過剰な技術力の粋を注いだんだ? ......」

 

 オリジナルボディは修繕中、レストルームコアに格納したままなので、二依子に新たに代用のプラモデルボディを発注した筈なのだが......

 何故か彼女は以前ザジが入っていたガールズプラモデルをしっかり戦闘用に強化改造し、かつ追加装備の武器を作成、フリフリのスカートアーマーで下半身をあしらい。

 ザジのオリジナルボディに似せたアーマーパーツでコーディネートされた......美少女メイド型プラモデル騎士に仕上げてきたのである。

 

 「どうしてこうなった! 」

 

 困った顔のザジにオペレーターのユナが、ニヤリ顔で言う。

 

 「二依子ちゃんにザジ君の活躍をオンエアー中! 二依子ちゃん! 感想をどうぞ! 」

 

 「ザジ君の困った表情がとてもけしからんです!! 」

 

 キャンパーからの中継は二依子の部屋に生中継されていた。


 キャンパーのメインコックピットには、霊糸回路の空間パネルが沢山光を放ち、キャンパーの戦闘モードが起動する。

 

 「こちら運転手のパルド、霊力運転支援を確認......いつでもバリアの準備が出来てるぜ! 」

 

 七体のクルー全員の準備が整ったのを確認される。

 そしてキャンパー中央、大型モニターに全ての情報が集まる作戦指令室に、小さなブロックトイの人形が座り。

 遂に宣言される!

 

 「こちらカンチョウ! これより本艦は前方鳥型巨大霊体の攻撃射程予測内に入る......全員"対方舟戦闘準備"! 」

 

 「「 イエッサー!! 」」

 

 キャンパーの亡霊達(一部生き霊あり)の掛け声が木霊する!

 遂に......

 

 元教団亡霊の"天国の方舟"の成れの果てと。

 

 ザジ達のキャンパー"希望の方舟"号との......対決の火蓋が切って落とされたのだ!

 

 

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