第111話「ファントム・ペイン」
「 !? 」
シラのボディに突き刺さるニードル、それは胴体の可動を著しく制限する。
(胴体が......動かない!? 回避力の低下が目的か! )
以前の攻撃で背中に撃ち込まれたニードルも、やや胴体の可動を阻害したが今回はそれを決定的にしたようで......
シラは胴体を曲げる回避が困難になったのである......だが。
「残念だったね! ザジ君! 反撃はそこまでだよ! 」
再度射撃を撃ち込もうとするザジに、シラは膝を屈めて言い放つ。
「間合いを離してしまえば十分に追撃は回避できる! 」
バックステップしながら距離を離すシラ!
(可動で回避出来ないなら、移動ですれば良い! )
だがザジはそれに反応し、肉薄するために間合いを詰めようと......前方に踏み込む!
「逃がすか!! 」
「フッ......」
だがシラは不敵に笑うと、右手の黄金の剣(テュルフィング)を払う様にして空を切る仕草をした。
「引っ掛かったね! ザジ君! 」
「 !? 」
ザジの踏み込み位置、それはシラのプラズマの射程の正面に位置していたのだ!
「「 プラズマ・スプレッドマイン! 」」
無数の光の粒が撒かれると、それはザジの行く手を阻む!
剣に纏うプラズマを、目の前のザジに向けて飛ばしたのだ!
本来ならすぐに霧散するプラズマも、前方の僅かな射程のみ霊力で"固めて飛ばす"という攻撃出来るのである。
風避けの範囲を伸ばしてまで効果の持続を調整しないといけない上に、剣のプラズマを使い切ってしまう欠点だらけのロマン技であるが。
「くっ! ......うっ! 」
そう、これは想定以上にザジにダメージになった!
プラモデルのボディと言うこともあって、熱の塊であるプラズマはダメージが大きい。
霊力が消耗している以上、防御バリアもロクに出来ず、生身(プラモデル)で受けるのと変わらないのだ。
結果的にプラモデルの装甲部分が月の表面の如く焼け凹む。
ダメージ各所のボコボコな表面が痛々しい。
「畜生......ボディのダメージが......くそ! 」
ザジは遂に、ダメージフィードバックで膝をついた......
「ダメ押しだ! 」
シラは間合いを再び詰めると、右手に再び霊力の過剰な刃を伸ばして一閃!
ザジのプラモデルボディの右側ミサイルポッドパーツを斬擊で縦に割ると、地面を滑る様に動いて反転。
続けて左のミサイルポッドに、突きを浴びせて破壊!
「反撃はさせない! 詰みだ! ザジ君! 」
ここでザジが動いた、シラの右腕は突きのモーションの隙を晒している!
ボディの武装は壊滅したが、自分には剣がまだ残っているのだ!
「「 オーヴァード・エッジ!! 」」
オーヴァードエッジを再展開して、右腕を振り上げた!
「でやあああ! 」
ザジの渾身の霊力が込められる!
「 甘い!! 」
......だがシラは"ソレ"を察知していたのである!
「......その反撃も想定内だ! 」
「 なっ!? 」
シラの反応の良さに、ザジが驚愕する!
そこからのシラの攻撃は、側面から突如駆け抜ける様に打ち込まれた!
綺麗な弧を描く一撃は、振り抜かれる刀のように鋭利で。
クルリと回る姿は優雅にも見える。
そして彼の眼前には......
......宙に舞うプラモデルの右腕......
攻撃の後、シラは右足をしならせて技名を語る。
「「 ......パラダイス・オブ・サイズ......!! 」」
無情にも吹き飛んだ右腕......
それはザジのプラモデルボディのパーツ、オーヴァード・エッジを振りかぶった......
ザジのプラモデルボディの右腕である!
「「 あああああ!!! 」」
ザジの叫びが聞こえる、霊体の右腕が赤黒く変色し、透明に近くなる。
シラはその一撃の感想を語る。
「切り札は最後の最後に! 使うモノだよ! 」
ザジのオーヴァードエッジの反撃に、超反応したシラの攻撃......
それは突きのモーションから飛び出した右ハイキック。
足先にアクリルで出来た刃のパーツが見えていて、それが霊力の鎌として展開され......
ザジの右腕を切り落としたのだ!
「さあ! ザジ君、打つ手無しだね......おっと? 」
ここでシラにも霊力の消費の反動が現れた。
舟の霊体のサポートにより、霊力の消費は気にしなくて良い筈だが......
「ニードルのダメージを抑えながら"切り札"を出したからかな、......霊力漏れが酷いや......ははは」
完全に武装を無くしたザジの前に、シラはややバランスを崩し膝をついた。
「けど、その首を落として......決着だ! 」
言葉そのままの行動の為、右手に霊力を込めて過剰な刃を形成しようと霊力を込めていた。
シラは今"止め"の準備をし始めている。
......
......だが。
シラはここでもうザジの"反撃"が無いと、確信していたのである。
その驕(おご)りが隙を作っていた事に気付いていなかった。
「......はっ」
そして眼前に見た光景に驚愕する。
(切り落とした"腕と剣"が......宙で止まった! ......)
そうオーヴァードエッジを展開していたザジのプラモデルの剣とその右腕は......
宙に浮いたまま構える様に、刃を傾けたのだ!
(まさか......)
浮いたままの右腕が何かに繋がっている!
そう繋がっているのは......
ザジの霊体だ!!
ボディから飛び出す様に本体の霊体が乗り出して、切られた右腕を繋ぐと......
自らの腕のように霊体に取り付け、剣を構えたのである!!
シラの眼前に現れた霊体のザジは......
右腕をプラモデルで補った様に見える姿のまま、正眼の構えで剣を向けている......
これから行う一撃は。
ボディを渡り続けた経験のある、ザジだからこそ出来る最後の切り札。
......ボディから離れ、内包した霊力を全て霧散し、失う代わりに出来る最終手段。
......亡霊の牙(ファントム・ペイン)である!!
「うおおおおおおおおおおおお!! 」
ザジの霊体が、ボディから離れるという、宇宙飛行士が宇宙服をその場で脱ぐ様な自殺行為。
そして解き放った霊力をかき集めて、オーヴァードエッジを安定させて攻撃するハイリスク。
全てが......ザジにのし掛かるという全力の"突き"の一撃が放たれる!!
「「 シラああああああああああああああ!! 」」
霊体のザジが叫ぶ!!。
......最期の一撃。
それは。
バランスを崩した上に、ニードルでの胴体部分の可動を阻害されたシラを、回避をさせることは無く......
「あ......ああ、そんな......」
何も出来ないシラが、まるで運命に吸い込まれる様に。
ザジの剣の切っ先は......今
シラの人体模型ボディの胸部に、突き立てられたのである!!
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