第104話「高度一万メートルの戦い」
上空に描かれるドッグファイトの軌跡、霊力で描かれる空の情景は飛行機雲の様でもある。
両者による制空権の奪い合い、暫く一進一退だったが戦況に急な変化があった。
本来飛ぶ様に設計されていない教団亡霊ポリマーのプラモデルのボディが仇となり始めたのだ。
人型ロボットの腰部や背部に航空機の羽を付けた航空型の形状をしており、格好だけなら戦えると思われるが......
「糞! また背後を取られた! 」
フォッカーのドローンの巧みなバックフリップに翻弄され、背後を取られ続けていた。
「ローターの一つでも落とせば、簡単なのに! 」
船の霊体から供給される霊力による「無限の翼」は、それこそ聞こえはいいが、あくまで飛べるだけであり性能面ではドローンにはかなわない。
フォッカーは背後に詰めよってドローンから射撃の体制を見せる......が。
「 ! 」
「食らえ、四連発! 」
ここでポリマーは直ぐ様グルッと縦に回転し背後に向けて銃弾で強襲を仕掛ける、プラモデルボディの翼に付けたミサイルの様な、発射機構からの並列四射線連続発射。
「ファントム・アフターバーナー! 」
これに対するフォッカーが前方に強烈な霊力の噴射を行い、弾丸を反らす。
「そんなのありかよ! ......糞! 」
「......取った! 」
フォッカーは直ぐ様ドローンの備え付けのライフルで狙いを付けて、二ミリの銃弾を発射。
狙うはポリマーのプラモデルの足。
これはポリマーが、地に足が付いた時に発揮する機動性を殺す為でもある。
「ぐあああ! 」
ポリマーのプラモデルボディの脚部分が砕け、悲鳴が聞こえる。
元々複雑な構造をしていない様で、脚部はもぎ取られる形になって、周囲に吹き飛んだパーツが散乱していた。
「バリアが疎かになってるぜ! だめ押しだ! 」
フォッカーが再度追撃、バランスを崩したポリマーのプラモデルボディの撃ち壊した左足に続いて左肩にも一発銃弾を撃ち込んだ。
「銃弾を正確に当てて来やがる! 何てこった! 」
着弾したボディを建て直そうと、ポリマーはキリモミ回転しながら霊力によるブースターを噴射するが......。
上手くバランスを建て直せない、そしてこれを狙ったフォッカーの狙撃精度に驚く。
銃弾を霊力で器用に誘導できる、亡霊フォッカーならではの狙撃テクニックである。
こうしてポリマーは木葉が舞う様にバランスを崩して落下していく、戦意は完全に喪失しているようだ。
「畜生! やられた! コイツに空中戦仕掛けるのは不味かった! すまねえ、助けてくれ......」
落下しながら逃げようとするポリマー、これ以上のボディのダメージは危険と判断したのか、シラの援護が届く範囲に向けて飛び込んだ。
「逃がすかって......うわっ! 」
トドメの追撃しようとするフォッカーに向けて、レーザーポインターの光が照射されるとプラズマレーザーの弾幕が襲いかかった!
「うわわわ! ヤベエエ! 」
バリアによる防御が無ければ、一発で墜落確定の攻撃がフォッカーに襲い掛かる。
「助かった! ......アドミニストレータじゃなくてシラ、今思ったけど......もうずっとシラでいいよね面倒臭いし......」
「ははは......もう雰囲気ぶち壊しだよポリマー君」
シラとポリマーの二人の馴れ合い、ザジ達に移る彼らの姿は正しく「友人」達の会話だ。
「でやああ!」
フォッカーに放たれた対空攻撃を止めようと、シラの会話の合間にザジがファントムスラッシュで、設置されたレーザーポインターを数基凪ぎ払う。
それだけシラの陣地を破壊していけば、いつかは戦えなくなると踏まえての事だろう。
「よしこ! ドッキングだ! 」
対空レーザーから逃れたフォッカーが再びよしこにドッキング。
「これであいつの横槍は来ねえ、一気に畳み掛けるぞ! よしこ! 」
「ワオン! 」
よしこが体制を建て直し、キョウシロウに強襲する。
近接特化のキョウシロウは、ポリマーのフォロー無くしては遠距離への対応が行えない。
「そんな簡単に間合いに入れさせるかよ! 」
ここで見かねたパープルによる援護射撃。
放たれた銃弾はよしこのプラモデルボディの左後ろ足に着弾、結果脚部分の先端が砕けた。
「ギャワン! 」
脚の被弾で走りが止まるよしこ、フォッカーがドローンの浮力でサポートする。
「止まるな! 走れよしこ! 」
だが立ち止まらず、キョウシロウに向けて、よしこが強襲しようと近接の間合いに飛び込む!
「俺の間合いに飛び込んで来るとはいい度胸だ! 」
キョウシロウは「突き」の構えを見せると、飛びかかって来るよしこのプラモデルボディの喉元を見据える!
「ワオオオン! 」
よしこの狼型プラモデルの顎が大きく開く、頸に食らい付く為に狙いを定める!
「取った! 俺の勝ちだ犬ッコロ! ......って、ぐえっ! 何だコレは! 」
突如キョウシロウの人体模型ボディの肩口に、大きな剣が突き刺さったのだ!
それは以前にねぱたに奪われた「無限の刃」であり、霊力の供給が成されていれば、本体から離れても切れ味が残るシロモノだ。
「こっちも援護するで! 借りてた剣返したるわ! 」
「クソオオオオ! 」
キョウシロウの突きのタイミングがずれる、肩口に刺さった剣が可動を阻害し、動きが鈍る。
「ハイ・ファントム・ヴァイトファング! 」
よしこの顎はキョウシロウの頸を捕らえる!
サイズの大きいよしこの狼プラモデルボディの顎は、キョウシロウ頭と頸を覆うように食らい付いた。
しかしキョウシロウの剣も止まってはおらず、よしこの肩口から深く突き刺さっている。
「......! 」
ザジ達がよしこのダメージを心配するが、フォッカーはここでよしこを後押しする。
「駄目だ! 霊力不足で噛み砕けねえ! よしこ! このまま押し出すぞ! 」
「ウオオオオオオン!」
これに対してキョウシロウが足掻く、突き立てた剣を掴んでダメージを拡大しようと押し込む!
「させるか! ぬおおお! 」
よしこの踏ん張りと、キョウシロウの足掻きがぶつかる!
援護しようとパープルが銃を構えてよしこを狙うが......
「 ! 」
「どっち見てんねん! 」
ねぱたの特撮フィギュアのハイキックがパープルにヒット。
撃たせる事なく吹き飛ばす。
「おおおおおお! これでどうだ! 」
「畜生おおおおお! 」
フォッカーの押しのだめ押しに対して、悔しさで叫ぶキョウシロウ。
こうして対にキョウシロウとよしこのボディが、船の霊体の甲板から弾け出されたのだ!
「よしこ! そのボディを捨てて俺のボディに取り憑け! ギリギリ入る! 」
ドローンのボディに、よしこの霊体が辛うじて入る。
「キュウウウン(死ぬかと思った......)」
ボディから移動したよしこの霊体はボロボロで、声もか細いが勝利を確信していた。
そう......
ドローンから切り離された狼型プラモデルは、キョウシロウのボディに噛みついたまま、船から落ちていったのだ。
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