第14話「侵入マシーンと強化型FAクマ」

「例の監視の報告をします」

 

 ラマーが操作するとモニターから映像が流れる、この周辺の映像のようだ。

 

 何台かの監視カメラの映像で、映っているのは何かの作業用のロボットである。

 

 「昨日にこの区に侵入してきたロボットだね、中々頑丈そうな作業用マシンだ」

 

 カンチョウの言葉にパルドが答える。

 「上空から空輸パラシュート投下されて来たんだ、人間じゃないから脅かす訳にもいかねえ、ここに近付く前に何とかしたいな」

 

 パルドの意見にラマーも加わる。

 

 「ここの情報がある程度漏れるのは良くないしね、ネットでも危険地帯で名が知れてきたのに、無害なのがバレて浮浪者でも住み着かれたら大変だ」

 

 カンチョウはモニターをじっと見つめている。

 

 「パルド君、このロボットなんか変わってないか?」

 

 「ですよね、俺もなんか妙に大きいと思うんですがね」

 

 カンチョウは何やらロボットの形状が気になるようだ、見かけはキャタピラの付いた大型のロボットタンクで、アームやドローンなんかを備えた探査用に思える、だがアーム以外にもパーツが多く不格好だ。

 

 「キャンパーを隠しているこの施設に来たら不味いな」

 

 「煙でも焚いとく?」

 

 「視覚外から強襲しようぜ!」

 

 フォッカー、ねぱた、ザジと意見が積み上がる、プランが積み上がっていく。

 

 「いずれにせよ、昼に遠隔操作の盲点を突くのは辞めた方がいい、フォッカー君のドローンもカメラの視界に入りやすいから待機だ」

 

 「うす」

 

 フォッカーの返事の後、ザジとねぱたが使命される。

 

 「赤外線カメラに切り替わった直後に行動開始するよ、それまで二人はユナ君に訓練させておいて欲しい」

 

 「訓練ですか?私戦えるのかなあ?」

 

 ユナの返答にザジが返す。

 

 「気にすんな、紙も破れねえままじゃあどうしようもないからな」

 

 工作室を指差してドクが言う。

 

 「ユナちゃんのヌイグルミはボロボロだったから、適当に戦えるように改造しておいたよ」

 

 (戦える?あのヌイグルミで?)

 

 ユナは工作室から運ばれてきた自分のヌイグルミボディを確認する。

 

 「なんじゃこりゃああ!」

 

 運ばれてきたユナの熊のヌイグルミは、間接部分の強化とダメージ部分の改修、それに加えて頭や腹、腕等にアーマーパーツが張り付いており、いわゆる一つのフルアーマー状態になっていた。

 

 「あはは!なんやこの魔改造!見た目が一気に極悪になってるやん!」

 

 ねぱたが笑う通り、もはやファンシーな熊のイメージからかけ離れた別物である。

 

 ドクがボディを紹介する。

 

 「フルアーマー熊子(仮)だ、3ミリジョイントの埋め込みから行い互換性を追及した、よって装甲パーツもマルチに対応出来る」

 

 よく見るとボタンのように器用にジョイントが縫い込まれている、その上にここの工作室のパーツから装甲を割り当てたのだろう。

 

 「何て事しとんじゃああ、可愛さのコンセプトぶっ飛んでるよ!」

 

 チャックを開けると札がダメージを受けないよう収納性のある固いパーツが入っていて守られている。

 

 「ごっつい器用にしとる、凄いやんドク!」

 

 ねぱたが笑いながらドクの仕事ぶりを絶賛する

 

 「あのー、入ってみたんですけど…ちょっと重いです」

 

 ボディに入ってみたユナがドクに訴えかけてると、ザジが割って入って言う。

 

 「しょうがねえだろ、訓練するんだから、戦えるようにしとこうぜって二人で相談してたんだ。」

 

 ドクへザジがグッジョブとサムズアップする。

 

 

 

 訓練前にパルドとラマーがボディに憑いて挨拶に来ていた。

 

 パルドは戦車ラジコンの乗務員人形に、ラマーは小さいパイロット人形が入った超合金ロボットで表れた。

 

 「訓練頑張れよお嬢ちゃん」

 

 パルドはやや子供扱いな所が有るようだ。

 

 「ザジ?そのボディはなんだい?最高か?」

 

 ラマーはちょっと嬉しそう、そしてドクにサムズアップしていた。

 

 ザジは例のガールズプラモデルで訓練に付き合うようだ。

 

 「なんか股下の造形だけで凄い歩きにくいんだが…」

 

 「気にしたらあかん、禁断の大一歩はここからや!」

 

 ねぱたの返答にザジは不安で仕方なくなった。

 

 

 

 訓練のため外に出る、訓練用の的や試し切り用の廃材が立ててある。

 

 「どんな訓練なんですか?」

 

 「せやな、まず霊力の総量的なものを図るべきやな」

 

 ねぱたはスマホを持ち込みのお絵かきツールを起動させて手書きで説明し始めた。

 

 「ユナちゃんはまずボディがマトリョーシカみたいに別れとる」

 

 「はい」

 

 「これはな、霊力の総量がちょっと少ないんや」

 

 ユナはそのねぱたの言葉にはっと気が付いた。

 自身が信号の陸橋で動けなくなった事を。

 

 「長時間戦えないって事ですか?!」

 

 「まあその分利点はあるで、ボディが壊れても札が無事なら消えること無いんや」

 

 以外な事実にユナは困惑する


 「しぶとさだけじゃないですか!」

  

 「せやな、メインにしてるボディに霊力があまり溜められへんねん、実はウチらでもパルドやラマー君、カンチョウも同じなんや」

 

 「ええー!」

 

 その事はユナも意外だったらしい。

 

 「じゃあザジ君やねぱたさん、フォッカーさんはどういう?」

 

 ねぱたが笑いながら答える。

 

 「ウチらはこのボディが徹底的に壊れたら即効で霊体のままレストルームまで飛んで帰らんと消えてしまうんやな。」

 

 その話はユナが聞きたかった答えである。

 

 「ザジ君がどう無茶しても帰って来れるわけですね」

 

 「おうよ、このメンツ最大の霊力総量は伊達じゃないんだぜ!」

 

 ザジはガールズプラモデルでドヤ顔で返答する。

 

 「この事をみんなでリスポン言ってるんや、リスポンは成功率低いからボディは絶対壊したらあかん」

 

 「やっぱり消える時は消えるんですね」

 

 ユナは自分よりねぱた達の方が不安である。

 

 「まあその分ウチらはイッパイ秘技が使えるんや、今回はユナちゃんもある程度習得してもらうからな」

 

 「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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