第13話「残念だがザジ君、そのボディは前からでも尻が見えるんだ」


 

 あれから一時間経った。

 

 レストルームの居間には全員が揃う形となった。

 

 それぞれがいつものボディを脱ぎ出してはっきりと生前の姿をした霊体で、しかもしっかり足で立っている姿をしている。

 

 「パルドとラマーだ、二人は今回別行動で監視任務をしてもらっていた」

 

 カンチョウはいかにも船長服で身を装い、新たに二人のメンバーをユナに紹介している。

 

 「よろしくなお嬢ちゃん。」

 

 「…よろしく」

 

 パルドは帽子を被っているアウトドアな印象の男性だ、サバイバルゲームでもしていそうな迷彩服とタンクトップで解りやすい趣味が滲み出している。

 

 ラマーは対称的にインドアな印象、ボサボサの髪型に無精髭。

 キャンパーの内部システムを担当していて、常に下層のCPUルームでプログラムを書いてるらしい。

 

 「二人の報告は後にして先にザジ君が遭遇した相手の映像データを見てもらおう」

 

 カンチョウはそう言うとmicroSDカードを出して居間の以下にも昭和なテレビジョンに刺す。

 

 しっかりモニターしているようで、取り付いている差し込み口がまるで昔のVHSビデオデッキみたいにmicroSDカードが差し込まれる。

 

 しばらくして映像が流れる、ザジが戦闘している部分がそのまま映し出されていた。

 

 「なんやこれ!火の鳥みたいなのが飛んできてるやん!」

 

 ねぱたは目を輝かせてマジマジと見ている、ユナはこの映像に驚き手で口を押さえている。

 

 「本物の式神だ…」

 

 やはり式神の存在は理解が有るようで、ユナは真剣な眼差しである。

 

 ユナは記憶が朧気だったが今は落ち着いている為、朧気でも何とか答えられる。

 

 「こんな式神が使える一族が今の時代に残っているなんてビックリです、陰陽師っておばあちゃんが言うに確か占い師モドキしか残ってないって」

 

 そのユナの返事にカンチョウが聞き返す。

 

 「ユナ君の家はもう陰陽師はやってないのかね?」

 

 その問いかけにユナは首を縦に振って返した。

 

 「うーん良く思い出せないけど、こんな感じで式神がホイホイが使えたら一族みんな陰陽師になってるって言うんです、つまり使えないから辞めたとか」

 

 ユナの話にザジが間に入って来た。

 

 「なんかさ、式神って俺達のボディみたいに霊力を押し込んで操ってるみたいな感じだったよ」

 

 ザジのその言葉を聞いて、思い出した様にねぱたがユナの霊体の腹部を指差して言った。

 

 「せや!一大事やで!ユナちゃんな!まだ生きとるんや!」

 

 そのねぱたの言動にその場にいる男全員が首を傾げた。

 

 「はあ?どう言うことだよ?コイツ生きてる?」

 

 ザジの言葉にユナはこれまでの経緯を語り始めた。

 

 「実は…」

 

 

 

 ユナはこれまで起こった事を語り切った、紙札の事、黒服達の事、朧気な記憶の事。

 

 みんなに助けて貰って感謝している事。

 一通り喋った彼女は涙を流していた。

 

 「よしよし、よう言うたなあ、偉いでユナちゃん」

 

 ねぱたは彼女の霊体を抱き絞める。

 

 「で、当然ウチは助けたいんやけどそこいらはどうなん?男共は?」

 

 その場にいるメンバーは少し考えている、しばらくしてドクが語り始めた。

 

 「まあその様子だと本体はきっとあの施設だろうな」

 

 ドクの発言にユナは反応する。

 

 「心当たり有るんですか?」

 

 「ああ…例の山間部からのガス発生事件で、多数の意識不明患者が一つの大きな病院に隔離されているそうだ」

 

 ユナははっと気が付く。

 

 「それですよ!同じ意識不明になった人が収容されてるから、一緒にしてしまうと全員同じに思える。」

 

 フォッカーが座布団に座ってユナに答える。

 

 「木を隠す為にはまず森からってのが気になるね、まあ俺はちゃんと助けたい方だから安心してユナちゃん」

 

 フォッカーに続きカンチョウが答える。

 

 「話に聞くに君の体になってる札が原因で、元に戻れない訳だね」

 

 「はい」

 

 「私は助けるのは良いとしても年長者二人に聞こう、ねぱた君、ザジ君、この状態どう解決するかね?」

 

 

 ザジはガールズプラモデルのボディを戸惑いながら眺めて答える。

 

 「体を取り返すとして容易に戻せるかなあ、あの鳥使いとまたやりあうだろうけどさ…(なんでこのプラモデルスカートの中身こんなに拘ってんの?!)」

 

 ねぱたはユナを見て考える。

 

 「まあウチらならそのボディを何とか出来るかもしれんしな、ぼちぼち試行錯誤してみるか」

 

 ユナはお辞儀をして感謝現す。

 

 「もう陰陽師の人達ではどうにもならないらしいんです(黒服の人曰く)、ここのメンバーにしか頼れないからお願いします」

 

 カンチョウは手を振って語る。

 

 「ラマーもパルドも特に反対する気もないと思うが、二人はどうかね?」

 

 ラマーは以外にもやる気のようで、ユナの霊体の肩を叩いて語る。

 

 「僕はこの姿になってデジタルにおける霊体の在り方を学んだ、君もその姿で助けを求める事で在り方を学んでいる、なら助けようじゃないか」

 

 パルドも同様に賛同してきた。

 

 「つーかさあ、俺も断る意味もねえよ、何せ俺らは結構暇してるんでな」

 

 カンチョウは全員の一致を確認する。

 

 「よし、では重要案件として今後の作戦活動の優先順位をトップに設定しよう」

 

 「ラジャー!」

 

 全員が一つになったのを確認すると、カンチョウは他の議題に移る。

 

 「ユナ君の事はここまでとして、他の任務の成果を聞こうかラマー君とパルド君」

 

 するとラマーはmicroSDカードを取り出して映像を移す為に別のSDカードを刺した。

 


  

 

 

 

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