第15話「訓練生ユナ、教官ねぱたより主にアレを殺す方法を伝授」

 早速訓練の議題が並べられる。

 

 「訓練する前に、どんな事が出来るかチェックや」

 

 ねぱたが針の先端を弾丸の様に整形したモノを手に取っていた。

 

 「吸着でつかんでみて?まあさっき無意識でやってたの見てるけど確認や」

 

 ユナの熊手に針が吸い付くようにくっついている。

 

 「掴むイメージだけですけど、本当にくっついているんですね」

 

 「せやで基本や、ちなみに吸着が強なったら吸着だけでドングリ潰れるで 」

 

 ねぱたは得意気にして言う。

 

 「マジですか」

 

 「上手く行けばこれでザジのプラモデル顔を掴んで吹き飛ばして!…

 

 (現在のザジを見て)

 

 …って!あんな綺麗な顔吹っ飛ばすなんて無理や!」

 

 (何でやねん)

 

 ザジはねぱたの様子にツッコミ困っている様子。

 

 「ああもう、俺が次のステップを説明するよ」

 

 ザジは先程の針をピストルの形をした、所謂ビームガン的な装備パーツと並べて説明を始める。

 

 「この武器パーツには銃身として真鍮パイプが入っている、この銃身にこうやって針弾を滑り込ませてくれ」

 

 「こう?以外と熊手でも霊体の手をイメージすれば簡単だね」

 

 ザジはそのまま段ボールの廃材の的に銃身を向けて構える。

 

 「へ?」

 

 ユナがその様子を見て真似て構えると、ザジが霊力を使って針弾を打ち出した!

 

 「おおおお!?」

 

 ユナが驚きの余り変なリアクションを見せると、何故かねぱたがポーズを決めて語り出す。

 

 「そうやで!これが必殺ファントムニードルや!」

 

 「いや…姉さん針飛ばしただけだから」

 

 ザジのツッコミの後に、ユナも同じように撃てるのか試してみようとする。

 

 「お前も射つのか?とにかく針を入れて構えてそこから発射のイメージだ、ポルターガイスト的に吹き矢っぽく発射すれば出来る」


 ザジの謎のフィーリングにあわせてユナは試し撃ちを試みる。

 

 プシュっと音が鳴って針が打ち出され、的に命中するが。

 

 「やっぱりザジ君みたいな威力は無理だ」

 

 破壊力は雲泥の差で、ザジの威力は廃材を貫通するほどに対して、ユナは廃材に刺さり中に埋まる程度だった。

 

 「いや十分やで、ザジが威力おかしいだけやから」

 

 「そうだな、初歩的な部分でも戦力になるし虫除け位には十分だろ?」

 

 ザジとねぱたの会話でユナは、ふと「虫除け」というキーワードが気になった。

 

 「まさか…まさかですよね、あれですよ、そう」

 

 「G」

 

 「当然出るんですよね」

 

 その問いかけは妥当な意見だ、そしてねぱたはキリッと目を光らせて答える。

 

 「とにかく人間と大型犬位の対比でな、そのままGがそういうサイズで歩いてるんや」

 

 「あああ…」

 

 「いいか見つけ次第心臓に一発、脳みそに1発…これ鉄則や」

 

 「サーチアンドデストロイ!(敬礼)」

 

 ユナの敬礼の後、ねぱたはお絵かきツールを操作して次のステップを説明する。

 

 「これ出来たら次のも楽やで、次はスクラップバレットや」

 

 「スクラップ?ゴミでも飛ばすって意味ですか?」

 

 ねぱたはビームガンを持つと地面の適当な砂利道を先端にくっ付けてから、構えて発射する。

 

 「所謂投石やな、針はいつでもストック切れるもんやから適当な砂利道を武器にするんや」

 

 「なるほど」

 

 ここでザジが注釈を付ける。

 

 「元々はみんなこうやって戦ってたんだ、今でこそドクの加工技術が光ってるけどな」

 

 「せやで、ストックしとけば連発出来る、前は1発ずつやったからな」

 

 ユナはみんな今にたどり着くまでどんな苦労してたのか、想像が出来ないが納得していた。

 

 感想は一言

 

 (何て逞しい亡霊達なんだろう)

 

 

 (ウチの家柄も結構ストロングだけど、このメンツは死んでこの体になってもそれを楽しんでる位はストロングだ)

 

 

 「さて、ここからが上級スキルやで!」

 

 ザジは剣のパーツを出してきた。

 

 目の前には人の胴体を模した廃材。

 

 剣を構えたザジは上段に構えると、一気に振り下ろす!。

 

 「せい!」

 

 ザジのかけ声の後、斬撃が廃材に向けて繰り出されると…

 

 そのまま

 

 バッサリ袈裟懸けに斬り落とされる!

 

 「え?えええ!」

 

 ユナはその様子に呆然としていた。

 

 「前にもやってたけど、それ玩具の剣ですよね!何故!?ホワイ!?」

 

 ねぱたが再びポーズを決める。

 

 「これが必殺のファントムスラッシャー!や」

 

 「スラッシュでは無いのか?」

 

 「もといファントムスラッシュや!」

 

 もはやネーミングセンスにツッコミはいるまいと思いたいザジだが、フィーリング的に譲れないようだ。

 

 「単純に振り下ろす時のインパクトで、接触する刀身の一部を半霊化させて物理の境界を曖昧にする奇跡みたいなもんや」

 

 「い、意味が解りませんよ?!」

 

 「要は物体を透過させる幽霊の上級スキルを再現せず、半端に使ったらどんな固いモノでも半端に透過して壊れたのが始まりや」

 

 ねぱたの説明でユナは何となく理解は出来ているものの、困惑している。

 

 「ザジは豆腐の様に鉄も切り裂くんやで、インパクトの一瞬だけやけどな」

 

 「本当に0,3秒もない一瞬だけど…」

 

 ザジも解説に乗ってきた。

 

 「なるほど理解した(解ってない)」

 

 ユナはもう諦めている、この亡霊達は何が出来ても過言じゃない。

 

 「ええか、まだあるで!」

 

 「とおおう!」

 

 するとねぱたが急にジャンプ!クルリと回ってキックをコンクリートの大きな破片に見舞う!

 

 「ヴェイ!(えい!)」

 

 当たった瞬間に小さく光るのが見えたかと思うと、コンクリートの破片に

 足部分の穴が穿たれ亀裂が入った。

 

 「こっちが必殺のファントムスマッシュや!(ドヤ顔光悦)」 

 

 「要は打撃が当たる直前で半霊化させて蹴り抜いたんだ、キック以外でも出来る」

 

 ザジの説明が入る、ユナは以前紙札を破る時に見たのを思い出す。

 

 「あ、それ一回みてるからいいです」

 

 その言葉にねぱたは絶望した。

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

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