第5話「現代陰陽師の追跡者」

「なんだよ、中に入れねえ…なんだこの紙?」

 

 ザジ達もこの紙は関係ない様で、入り口に引っ掛かってる紙屑に見える様だが。

 

 「剥がれねえ!なんだこの紙はどうなってるんだ?」

 

 小さな体も相まってコピー用紙も厚手のビニールの様に感じるのだろう、即座に剣を取り出すと刺して破る様に構える。

 

 しかしなかなか突き刺さらない。

 

 「あん?これは…微弱な霊力コートしてるじゃねえか?ちょっと固い紙位になってら、面倒臭えなあ」

 

 ザジが下がって剣を刺す構えに気合いを入れようかとしている時に、別の何かが降り注ぐように大量に落下してきたのだ!

 

 「ザジさん待って!車の上から何かいっぱい飛んできている!」

 

 飛んできた大量の飛来物、ソレは先程の入り口を塞いだコピー用紙である。

 大量のその謎の紙は、大きめの紙吹雪になって走行中のキャンパー前方に張り付いてフロントガラスを埋め尽くす程の紙が張り付いている!

 

 「ザジ!ちょっと聴いて!緊急事態やで!前が見えへん!」

 

 キャンパーの中から別の女性の声が聞こえた!

 

 「ねぱた姉さん、これ何?つくも神か何かかな?」

 

 ザジは以外に冷静沈着を保っていて以外と呑気していた。

 

 だがユナは飛び交う紙吹雪の様なコピー用紙に戦慄する。

 

 「まさかこれ、1枚1枚が式神の札なの!」

 

 紙吹雪の様な大量の式神の札は宙を舞うクラゲの如き形状になるまで集まる。

 

 そのあと速度を上げる為に鳥の様な形状に変わり、一気にキャンパーを追い越し前方に陣取る。

 

 そして旋回すると再び紙吹雪の如く紙札を飛ばして視界を遮ろうとしてくる。

 

 「ウチら亡霊やから別に視界遮っても運転出来るけど、これはメッチャウザい!」

 

 ねぱたの声からしてあまり効果的では無いようだ。

 

 どうやら式神を飛ばしている相手の思惑は運転手の運転妨害に特価している様で、視界を遮る手段を有りとあらゆる形で出来る式神の様だ。

 

 だが…よもや相手が亡者の類いだと、誰が想定してようか。

 

 「このまま運転して逃げ切れると思うんやけど、例の進入禁止区域に入ったら後ろで車走らせて着けてきても意味無いやん」

 

 そう、距離を離して遥か後方30メートル後に丁度黒服達の車が走っていたのだ、中には三名の黒服達と一人の術者と言える若い女の姿が有る。

 

 「奴らがこのまま進むと立入禁止区域に入ります、いかがなさいますか頭目!」

 

 頭目と呼ばれる女はまだ若く、二十歳位、キャリアウーマンの様なリクルートスーツの容姿をしていて長い髪を結っていた。

 

 「立入禁止と言ったな、ここの地理には詳しくはないがどういう場所だ?」

 

 頭目の女が黒服達に訪ねた。

 

 「はい去年からここいらでも危険なガスが山奥から放出されたかで廃村になった場所が近くにあるんです。」

 

 頭目ははっと何かに気が付く。

 

 「しもうたわ、わらわは相手が人だと思うておったがあの札を奪ったのはよもや魑魅魍魎の類いであったか…」

 

 女はグッと噛み締めて悔しがった。

 

 「出す札を間違うたわ、アレでは怨霊には効きにくいか、足掻くだけ足掻いてみるか…」

 

 そう言うと頭目と呼ばれた女は印を結び集中し始めた。

 

 そして視点は再びユナに向く。

 

 紙吹雪は突然ユナの方に飛び交い、矢のように真っ直ぐ飛んでくる。

 

 「きゃあ!」

 

 紙吹雪はユナのヌイグルミの腹を掠めた! 。

 

 気が抜けて乙女な声が出るヌイグルミの熊は、掠めた腹が裂けてるのを確認すると真っ青な顔であわてふためく。

 

 「ギエエエエ!裂けてる!ちょっと中身飛び出てる!なんじゃこりゃあああ!」

 

 再び乙女が吹き飛んだユナは塞がれた入り口にフラフラ歩きだした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る