第4話「亡霊達の方(匣)舟」

 一瞬の出来事にユナの頭が着いていっていない状態になっている。

 

 「これは一体何なのよ!」

 

 目の前に自分を抱えて飛び降りたロボットのプラモデルが写る、何処かしら騎士の様相をしているプラモデルで、腰に剣を挿していた。

 

 そして変なキャンピングカーの屋根上で二体のソレは出会った。

 

 「おい、ちゃんと声が聞こえるな、そこの熊!意識はあるんだろう?」

 

 プラモデルから声(霊声)が聞こえると、ゆっくりプラモデルの背中に浮かぶ霊体が見えてくる、若い少年だろうか?やや幼げな姿で学生服、ユナとそう換わりない年代の様だ。

 

 「まだ安心するなよ、俺達は体が軽いんだちゃんと捕まってないと振り落とされるぜ」

 

 キャンパーの車の屋根にしてはパーツやらがくっついていてゴツゴツしているのはこういう事態で滑らない様に引っ掛かる部分を考慮しているのだろう。

 溝の様な部分に体を滑り込ませると、安定して屋根に捕まる事が出来た。

 

 「歓迎するぜ!新しい俺達のメンバー、えっと名前はなにが良い?声からして女だから…熊子か?」

 

 この微妙なデリカシーの無さがまだ幼げな少年を垣間見る瞬間である。

 

 「ちょっとアタシはユナですう!名前はちゃんと覚えてますう!」

 

 勝手な名前つけに苛ついたのかユナが年相応な可愛らしい(?)反応を見せる、さっきまで殺れよ殺せよとヤケクソになっていた姿は無い。

 

 「じゃあ一足先に自己紹介するぜ、俺はザジ!俺は本名は覚えてないからな!適当なアダ名なんだがコードネームみたいだろ?」

 

 ザジを名乗ったプラモデルの少年、当然その名前は架空の何かからの引用だろう。

 

 「珍しいよな…死んでこの体になっても名前を引き摺れるなんてさ、ねぱた姉さんなんか覚えてても全然教えてもくれないんだぜ」

 

 死んでこの体になってと言う言葉にユナの目が点になった。

 

 「ザジさん…さっきの台詞の頭をもう一度リピートアフターミー?(急に流暢なアクセント)」

 

 「んだよ、珍しいよな死んでこの体にって言ったんだぞ?死んだこと覚えてないのかよ、名前引き摺れるのもそのせいか?」

 

 ユナは思考が固まった。

 

 (死んでる?この男の子?名前?引き摺れる?)

 

 そうこうしているうちに屋根の一部分が競り上がり、キャンパーの中に入れるように入り口が露出してきた。

 

 「方(匣)舟に入りな、別動隊と合流したら皆で歓迎会だぜ!」

 

 「…方(匣)舟?」

 

 ユナがその歪な単語に反応する。

 

 「ああそうだ!みんな同じ亡者で亡霊でチームだ!俺達はファントム団さ!」

 

 そう言うザジの無邪気な声は返ってユナを混乱させていた!

 

 (えええ?亡者!ここ死者の集まり!?)

 

 (あ…私の体、まだ健在じゃないか!ちょっとどげんしょ…バレたらヤベーやん)

 

 もはやユナは思考がぐちゃぐちゃで謎な方言と今風の喋りが混在している。

 

 競り出した入り口で立ち止まって居るユナ、しょうがなく中に入ろうと思った矢先に奇妙な出来事が起こる!

 

 「アレ?何か入り口に紙みたいなのが塞いでる、これじゃ入れないじゃん?」

 

 ザジとユナが入ろうとした入り口に紙が飛んできて塞いでるのである、そしてその紙にユナは見覚えがあった。

 

 (なにこれ?梵字?これ体になってるの式神の紙札に似ている?!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る