第10話 再会
店を出てから、近所をブラブラしては、道沿いにあったクレーンゲームで後々いらないであろうマスコットを取ったり、双葉さんと出会った河川敷で芝生に座り飲み物を飲んだりと、学生の放課後の様な時間を過ごしていた。
「うーん、何かほのぼのするなー」
「そうだね」
「学校の帰り道ってこんなかな?」
「ん?」
「私、敷地内の寮にそのまま帰ってて、ほとんど外出なかったんだ」
「そっか」
「紗弥ちゃんに会えて良かったなー」
「…え」
「これからも仲良くしてね」
そんな事、言われたの初めてだった。
それに、双葉さんはいつもの貼り付けた笑顔では無かった。
此方を見る目に私が写る。
「…うん」
その後、少し他愛もない話をしていたら、双葉さんに着信があり、すぐ帰らないといけなくなったとの事だった。
左手の薬指の指輪が光る。
「旦那さん?」
「うん、早めに帰りついたから帰って来いってー」
「そっか。じゃあね」
「うん、またねー」
双葉さんは相変わらずの、ちぎれそうな程手を振りながら去っていった。
私は少し残っていた水を飲み干すと、芝生から立ち上がる。
「さ、私も帰ろう」
明日は出勤だ。お客さんから来たメッセージに返信をしつつ、信号待ちしていると、青に変わったので、スマホをしまい、横断歩道を渡る。
渡りきって、少しした所で後ろから控えめに肩を叩かれた。
「あの、落としまし…た、よ?ん?」
落とし物を拾ってくれた割には、様子がおかしい。
振り向くと、男性が私が落としたであろうものを見つめて、首を傾げていた。
「あ…」
「えっと…落とし物?かな…これ」
困った顔で此方を見た男性は、四谷先生だった――…
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