第9話 双葉との日々
双葉さんから連絡が来るのは、そう遠くは無く、一週間もせずに、メッセージが届いた。
今日か明日、暇ならこの前のカフェに来てほしい…
(確か、明日なら…)
念のためスケジュールを確認し、明日行くと返信した。
――…そして、次の日。
「あ、紗弥ちゃん!こんにちは」
カフェに着くと、すぐに店員さんが前回と同じ席に案内してくれた。
苺のパフェを頬張っていた双葉さんに挨拶し、珈琲を頼んだ。
「紗弥ちゃんは、甘いもの全く食べないの?」
「うん、食べないよ」
「ふーん、そうなんだ。好きな食べ物は?」
好きな食べ物なんて考えた事もなかったし、あまり食に興味も無い。
少し悩んでから、とりあえずよく食べているものにした。
「うーん…パンかな」
「好物でパンって珍しいね。今度イートインがあるパン屋さん行く?」
「え?いや別に…」
「丁度良かったー!最近はパン屋さんでも、ケーキ出してたりするでしょ?気になってはいたんだよねー」
勝手に決められて、話がどんどん進む。けど、まあ双葉さん楽しそうだから、いいか。
まだ会って二回目だし、本当に不思議だけれど、笑顔にも慣れて来たし、何だか引き込まれる人だ。
そして、あれよあれよという間に話は進んでいき、次の予定も決まったところで、双葉さんと別れ、帰路についた。
「んーなかなかイケるなー」
向かいの席で、スイーツを頬張る双葉さんと、至って普通のソーセージパンを無言で頬張る私。
他のお客さんや店員さんの視線を集めるには十分過ぎる程…目立っていた。
「たまには、こういった場所で食べるのもいいねー」
「そうだね」
先日話していたイートインのあるパン屋さんは案外いつものカフェの近くにあった。
近所の人が多いのか、買って帰る人の方が多く、中で食べている人も少ない、比較的のんびりした静かな雰囲気だったのだが、双葉さんの食べっぷりに驚いて観察している人までいる。
「パン屋巡りも楽しいかもね。まあ種類に不満はあるけど」
「梯子すればいいんじゃないの」
「お、名案~」
そりゃカフェに比べれば、甘いものの種類は劣るだろう。
いや、それこそケーキ屋やスイーツ食べ放題に行けばいい話だとも思うが、そういった場所は好きではないらしい。
「紗弥ちゃんはさーずっとこの町に住んでんの?」
「うん」
「そっか。私は割りと最近なんだよね」
双葉さんはそう言うと、紙ナプキンで口周りを拭いてロイヤルミルクティーを喉に流し込んだ。
「この辺、案内してよ」
「いいよ」
あまり近所に案内する様な場所も無いけれど、その辺をフラフラ歩くだけでも良いだろう。
私達は適当にテーブルを片付け、店員さんだけでなく、お客さん達からも見送られる状態で店を後にした。
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