第7話 卒業と始まり

卒業式を終え、私は写真を撮ったり談笑したりと賑わっているなか、ひとり校門へ向かっていた。

途中、体育館を出てすぐの場所にある桜の木が目に触れた。


今年も卒業式に桜の木は咲かなかったな。

まあ、入学式でもどっちでもいいけど。

咲いていたら、いま桜の木の下で抱き合って泣いている子達がもっと映えたんじゃないだろうか。



少し遠くに四谷先生も目に入る。

そういえば、処分も何も無かったみたいだし、一緒に歩いていた女子も口を閉ざしていた為、あの日の真相は分からないままだったが、徐々に生徒の信頼も回復していた。


それに、もう今後関わる事は無いだろう相手の身の潔白なんて、どうでもいい事だし、今の私にとって一番大事な事は、決まったバイト先の店長へ会いに行く事だった。


(制服、汚されなきゃいいけど…)



――…


シャワーを借りて、店長の家を出た時には、もう外は暗くなっていた。


制服は汚れる事も無く、無事だった。

もう着る事は無いけど…いや、また着せられるんだろうか。



少し憂鬱になりながら家へ帰ると、先程まで家に人がいた形跡があった。

テーブルを見ると、お金が置いてある。もう必要無いのに卒業祝いのつもりだろうか。


お金よりも、家に居てくれた方が良かったけれど、どうせお金を置いてすぐに出て行ったのだろう。



ひとり暮らしをする為、お金を貯めないといけない。

そして、それを継続する為にも、店長だけじゃなく使えそうな人は使うつもりだった。


いつか、ちゃんと仕事に就けたら母は仕送りを受け取ってくれるだろうか。



私は淡い期待を抱きながら、眠りについた。










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